098 領主編10 領地経営5 星系探査3
カプリース星系の13光年隣、未知の星系に僕達は次元跳躍アウトした。
出現位置は惑星の公転面から垂直に少し離れた位置だ。
これは障害物が少ないという点と惑星を探しやすいという点で選んだ地点だ。
僕の専用艦がざっと星系内を各種センサーで調査する。
恒星は太陽の2倍ほど、惑星は岩石惑星が2、ガス惑星が2の普通の星系だ。
テラフォーミング出来そうな丁度良い衛星も無い。
岩石惑星がハビタブルゾーンに無いため、ガス惑星からの資源調達を産業に出来たとしても、居住可能惑星が無いという使い勝手が悪い星系だ。
コロニーか居住宇宙基地を設置する必要があるため予算的にスルーせざるを得ない。
「一応星系を命名するけど、どうしようか?」
「お兄ちゃん初の探査星系だからAKR01でどう?」
「それ46番目とか48番目が問題になる気がするけど……」
「その番号は飛ばせばいいじゃん」
「おまえ神か!」
「えへへ」
いや、褒めてません。
「まあ今のところはAKR01(仮)でいいか」
「その(仮)も……なんでもない」
「じゃあ、次行くぞ次」
「ほーい」
楓の返事が雑になって来た。
僕達の星系探査もAKR13(仮)まで調査が進んだ。
その間、太陽が巨大で太陽風が強すぎて使い物にならない星系や、原始的な生命が発生していた星系、そもそも惑星がゼロの星系があって無駄足が多かった。
まだAKR01(仮)を開発した方が楽だと思える結果ばかり。
僕達のモチベーションが下がり捲っていたところで、このAKR13(仮)にやって来たのだ。
AKR13(仮)の恒星は太陽型、岩石惑星5、ガス惑星が4の惑星の充実した星系だった。
しかもハビタブルゾーンに岩石惑星が3つもあった。
そういやハビタブルゾーンを、ずっと当たり前のように使っていたけど、これは”生命が誕生するのに適した環境”つまり人類にとって居心地の良いゾーンということだ。
ハビタブルゾーンには知的生命体の発生が期待されているのだが、そうそう知的生命体などいるわけもなく、せいぜいがバクテリア等の有機生命の発生が観測される程度だ。
先にも上げた”原始的な生命が発生していた星系”というのがレア中での極々一般的な生命体の例だ。
僕はその原始的な生命であっても侵略にあたると思っているので星系に手をつけないつもりでいる。
でもアノイ2のような帝国が既に手を入れてしまった惑星は別だと思う。
あれはもう戻しようがないから有効活用するべきだ。
話を戻す。AKR13は鉱物資源、重水素資源、さらに居住可能な地球型惑星3つが見込まれる有力な星系だ。
地球型惑星のAKR13ー2からAKR13-4は無改造で使える水も酸素もある惑星だった。
それら全てに生命が発生していた。しかし人が居ない不自然なほどに。
僕達は詳しく調査するためにAKR13-3に接近していた。
そこで見つけてしまった。
「次元跳躍門! しかも古い」
「!」
そうか、僕達は見つけてしまったんだ。捨てられた旧帝國領を。
それで合点がいく。居住可能な地球型惑星が3つもあるなんて普通じゃない。
これは既にテラフォーミング済みだったんだ。
なのに人が住んでいない人の手の入った惑星とはどういったからくりなんだ?
「ここは真・帝国が過去に打ち捨てた星系みたいだ。楓の所には記録が残っていないか?」
「ボクは聞いたことがないよ。爺やにでも聞けばあるいは……」
「そうだね。帰ったら聞いてみよう」
「「!」」
僕達は緊急回避でレールガンの弾体を避けた。
その時、AKR13-3の影から敵艦隊が現れた。
識別信号は赤、敵だ。
「AKR13-3の重力で曲げて撃って来たのか!」
「どうするのお兄ちゃん!」
僕は思案する。撤退が妥当だが、圧倒的な艦数で包囲されつつある。
ここは自重している場合じゃない。
「片っ端から侵食弾で動きを止める。もし旧帝国の残党なら真・帝国の親戚かもしれない。殺すわけにはいかない」
「そうだね。ボクは通信を送り続けてみるよ」
「頼む、侵食弾の残弾は1345発。敵は500艦程度。増援が無ければ全艦支配下に置ける」
僕は長砲身5cmレールガン3門の照準を敵艦に向け片っ端から侵食弾を撃ち込んでいった。
『こちら真・帝国の者です。現帝国に簒奪された旧帝国の末裔です。返事を下さい。戦いを停止してください』
楓の呼びかけに応答はない。
もしかするとただの野良宇宙艦なのか?
それとも逆に現帝国の艦?
いや、艦の意匠が古臭い。どう見ても旧帝国の遺産をそのまま使っている感じだ。
「お兄ちゃん、ダメみたい」
「諦めるな続けろ。あれはどう見ても旧帝国の艦だ」
「うん。わかった」
「そうだ、楓姫モードで行け!」
僕は敵艦に侵食弾を撃ち込んで無力化しつつ楓に指示を出した。
『旧帝國の者ならば聞け! 我は現帝国に簒奪されし亡き皇帝陛下の末裔ぞ! 止めぬか!』
敵艦体に動揺が走る。
だが証拠が無いことには向こうも信じられないのだろう。
僕は敵旗艦と思われる艦に侵食弾を撃ち込む。
目の前の仮想スクリーンにメッセージが出る。
『侵食完了。データリンク開始。乗っ取りますか?』
僕はYESアイコンを掴んだ。
『ナーブクラック開始。5・4・3・2・1終了しました。敵艦を拿捕しました』
「戦術兵器統合制御システム起動! 敵旗艦の指揮下の艦も掌握する!」
僕は敵を艦隊ごと強制支配した。
敵旗艦の戦術兵器統合制御システムを乗っ取り敵艦隊全艦を掌握、武装をロックした。
僕は敵旗艦のデータを手に入れる。
「無人艦隊? まさかずっと星系を守っていたのか!」
僕は支配下に置いた敵旗艦の電脳に事情聴取を行う。
指揮専用の高度な電脳だったからだ。
『おまえは何者だ?』
『我は*?+**ー?防衛艦隊旗艦である。我の任務は*?+**ー?星系の防衛である』
やはり遥か昔の命令を守り続けていたのか。
『惑星に人類はいないようだが?』
『反乱軍にジェネシス・システムを撃ち込まれたのだ。全ての都市と人が消滅した』
『それなら何故星を守る』
『主が帰るのを待つためだ。未だに反乱軍に星を奪われていない。作戦は継続中である』
守るのはいいけど、僕や臣下は味方認定してもらわないと。
『ならば主である僕は帰って来た。おまえはどうする』
『主?……確かにこの力、主の血筋……わかった。主の命令に従おう』
『ならば命ずる。僕に星系を明け渡せ。僕の臣下の星系侵入を認め任務を継続するように』
『御意』
よし星系は掌握した。
『次元跳躍門は使えるのか?』
『防衛のため閉じていたが、いつでも稼働できる』
『ならば次元跳躍門を開け。この星系を人で満たす』
『おおっ! 直ぐに手配しよう』
『惑星にも移民を入れる。いいな?』
『ご随意に』
うん。終わりよければ過程は気にしない。それが僕のモットーだ。
AKR13-2を農業惑星、AKR13-3を海洋惑星、AKR13-4を牧畜惑星に、AKR13-5は鉱山惑星、AKR13-6は重水素プラント惑星に整備しよう。
こんな恵まれた星系は無い。ここを僕の本拠地にしたい。
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