096 領主編8 領地経営3 星系探査1
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新たな領地を開発するため早急な近隣星系の探査を指示したわけだが、愛さんの指摘によりここに思いもよらなかった問題が発生した。
「え? 隣の星系でも惑星の有無を観測するのに年単位の時間がいるの?」
「はい。隣の星系でも最低10光年離れています。光速を出せる無人探査艦を送ったとしても到着まで10年です。
しかし獣人族には光速を出せる艦はありません。亜光速を出しても100年の仕事になります」
「いや、出向かずにこの場からの観測では無理なの?」
「光学観測では惑星の有無程度の直接観測しか出来ません。それも長期観測で恒星の前を横切ったと認識出来る程度です」
「つまり?」
「公転周期の短い内惑星が観測出来ても、恒星の裏に回った公転周期の長い外惑星は100年経っても観測出来ないということです」
「うん。わかってきたよ。近隣星系の惑星の有無や種類を調べろってのは無謀な命令だってことね」
「はい。」
「次元跳躍出来る工場母艦もアノイ星系開発で動けないな……」
僕は愛さんの指摘に頭を抱えた。
みんな僕の命令には「はい」しか言えないのか……。
確かに出来ないことは「出来ない」と言うだろうけど、出来るなら100年かけても命令を実行しようとするわけね。
「となると、僕が星系探査を急がせたら……」
「工場母艦に次元跳躍機関引き渡しの申請が来ます」
「それって既に?」
「はい。来ています」
「それより工場母艦は次元跳躍機関を作れるのか?」
「作れます。現に工場母艦はあの巨体で次元跳躍することが出来ます」
「ああ、次元跳躍機関を複数持ってるか。それを修理維持しているなら当然予備もあるよね」
「はい」
「問題は次元跳躍機関を獣人族に渡して良いのかと、次元跳躍機関を搭載運用できる艦があるのかってことか」
「次元跳躍機関を搭載出来るのは対消滅反応炉を搭載しかつ1km以上の全長を持つことが最低条件です」
「獣人達にその条件を満たす艦はあるのか?」
「ありません。彼らのDNAは身体強化を目的に弄られているため、艦の強化に関するDNAが揃っていないのです」
「DNAが艦を育てるというあれか……。地球人には戦艦持ちが多いけど、地球人は特別なのか?」
「はい。異常ともいえるほどレアなDNAを所持しています」
その回答に僕の脳裏に嫌な予感が浮かんだ。
まさかと思うが地球人のDNAが欲しくなったら帝国はどうするだろう?
獣人たちのようにDNAだけ盗んで行くか、それとも……ここにパズルのピースが嵌まった。
「それでプリンスが地球人を誘拐したわけだ」
「それは禁則事項になっており、お答え出来ません」
「おお、久しぶりのその台詞。プリンス制限は解けたんだから、それはもっと上位の皇帝制限かな?」
「それは禁則事項になっており、お答え出来ません」
この時、僕はその可能性に気付いてしまった。
神隠し的に行方不明になった人々。未解決失踪事件。
200年の歳月、誘拐された地球人。
宇宙船の中で妊娠させられ子供を取り出されたと主張する女性。
「遺伝子工学による強化よりも新たな血を導入することでDNA強化をしようとしても不思議じゃない。
たしか帝国が地球にやって来てから200年。地球人の血が入った帝国貴族なんてのが既にいるんだろうな……」
「それは禁則事項になっており、お答え出来ません」
「いや、皇子に地球人とのハーフがいても不思議じゃないな」
「帝室機密に関わる内容のため、お答え出来ません」
それ言っちゃうと「YES」と同じなんだよな……。
まあそこはいいや。
「話が逸れたね。現在次元跳躍機関を搭載出来る艦は何艦ある?」
「元ギルバート伯爵艦、アノイ要塞防衛艦隊の4艦、ステーション防衛艦隊の5艦、SFO所属の専用艦が20艦の合計30艦です」
「そのうち次元跳躍機関搭載済みの艦はあるのか?」
「ありません」
防衛艦隊は帝国からの出向みたいなものだから、使えるのは元ギルバート伯爵艦とSFO所属の専用艦だけか。
「傭兵さんで戦艦を持ってる人はいる?」
「アノイ要塞組にはいませんが、地球から参戦希望で移動中の方の中にはいます」
アノイ要塞組の傭兵さんは気心が知れているけど、新規参入の傭兵さんはどうかわからないな。
戦艦持ちでも佐藤みたいな奴はいたし、そんな奴に次元跳躍機関を持たすのは危なすぎる。
テロリストに大量破壊兵器を渡すようなものだ。
「そうなると元ギルバート伯爵艦に次元跳躍機関を搭載して探査艦に改造することになるかな。
戦術兵器統合制御システムと次元通信で遠隔操作出来るよね?」
「はい。可能ですが次元跳躍中は制御出来ません。その間になんらかの事故があった場合対処不能です」
「やはり有人の方がいいのか。誰か適任者を乗せてとなると、またその人の敵性問題が出て来るのか……」
「はい。強い力が人を狂わせるというのは世の常です」
「うーん。僕の専用艦に次元跳躍機関を搭載出来ればいいのに……」
「載ってますよ?」
「はいぃ?」
「載ってますよ、次元跳躍機関」
「い、いつの間に?」
「この前晶羅様の専用艦がレベルアップした時です。元々次元格納庫を装備していたでしょう?
そこから次元跳躍機関に発展するなんて直ぐです」
「ちょっと待って、確か搭載制限に全長1kmってあったよね?」
「晶羅様の専用艦は次元空間内に1km以上の艦体をお持ちです」
「ええっ! もしかして次元格納庫に艦隊入れても次元跳躍可能?」
「当然です」
その瞬間一気に問題が解決した。
「つまり僕が星系探査に向かえばいいんだね?」
「そうなります」
「どうしてこうなった!」
「……」
「いや、待て。楓が戦艦持ちだ。あいつに手伝わせよう」
僕は早速次元通信を送る。
『楓か? お兄ちゃんだけど、ちょっと遊びに来ないか? お兄ちゃん海洋リゾート惑星を手に入れたんだ』
『直ぐ行く!』
これで探査任務を分散出来る。