094 領主編6 戦略会議と運営会議
いつの間にか第100部分を更新していました。
話数の連番に「.5」などと着けていたため、まだ094なのですが、気付いたら投稿ページが2ページ目に。
個々の中身が短いので全文字数は少ないですが、ほぼ毎日更新でここまでやって来れました。
これも皆様のご支援の賜物です。ありがとうございます。
「野郎ども、稼ぐぞ!」
「「「「うおーーーーーー!!!」」」
地球軍主力、プロ戦闘ゲーマー所謂傭兵の皆さんが宇宙を駆け巡る。
彼らは気付いたのだ。SFOゲーマーだけがデブリを回収していることに。
破壊された艦や鹵獲された艦は回収済み。
だが細々としたデブリは捨て置かれている。そして撃墜権が設定されていない。
丸儲けである。
ダグラス伯爵艦隊4000中1000は降伏鹵獲された。
鹵獲艦1000は専用艦を除き、艦を徴用されていた工場衛星へ返還となった。
残り3000は、晶羅軍42000の艦隊に蹂躙され、誰が撃墜したのかもわからず権利関係は特定出来なかった。
そのため大きな残骸は有人艦の乗員約1000名に分配されることになった。
そこには大量に放出されたデブリは含まれていなかった。
傭兵の皆さんはそれに注目し回収を始めたということだ。
領軍の皆さんにも残骸を分配したのには訳がある。
領軍の方の中には戦いで損傷し修理が必要な艦を抱えている方もいるかもしれない。
それを直すには部品やお金が必要になる。
元々そういった部品取引は活発であり、一つのマーケットを形成していた。
つまり残骸配布は戦争に参加した個人に対する恩賞になるのだ。
SFOだけじゃなく、戦場では部品取引という経済が回っているのだ。
古来戦場では討たれた武将の鎧や武器を回収していたという。
それと同じことが宇宙でも行われているのだ。
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「第6皇子領の防衛をどうやっていくのか皆さんのご意見を伺いたいと思います」
僕らはアノイ要塞に帰還していた。
その極秘会議室(盗聴防止室)で、僕、アノイ要塞司令コマンダー・サンダース、カプリース領軍司令ノア、グラウル領軍司令ハンター、小領地混成軍司令ジョン、地球軍司令神澤、サポートAI愛さんで防衛戦略会議を開いていた。
「まず、一番攻撃を受けやすい場所はどこなんでしょう?」
僕の質問にコマンダー・サンダースが説明してくれる。
「やはり次元跳躍門の能力的にハブと呼ばれているアノイ星系と太陽系が危ないでしょう」
「ハブ?」
僕は「蛇の?」というボケを飲み込んだ。
こういったダジャレは帝国語に翻訳されると全く意味をなさないのだ。
そして僕の質問には愛さんが答えてくれる。そのために連れてきたんだ。
「次元跳躍門には、小グループ内の個々の間を繋ぐものと、それらのグループの間を繋げるものが存在します。
小グループ内は簡単に行き来出来ますが、グループの間を繋げる次元跳躍門は数が少なくハブ次元跳躍門、略してハブと呼ばれているのです」
「以前、真・帝国の艦隊がグラウル星系に直接襲来した時はどうなっていたんだ?」
「それはアノイ星系のハブ次元跳躍門まで次元跳躍門を繋げてアノイ星系直前の亜空間に到着。
その後ハブ次元跳躍門に繋がるグラウル星系の次元跳躍門に向かったということです。
ここで重要なのはアノイ門まで来なければグラウル門へは行けないということです。
直接グラウル門へは来れないのです」
「わかった。つまりアノイ門が閉じていれば、そのハブに繋がるグループの星系には行けないんだね」
「はい。亜空間の連続体が途切れることになります」
となるとアノイ星系を守ることが他の星系を守ることになるんだな。
「アノイ門に繋がる小グループはどのようなグループ分けになっているんだ?」
「はい。グラウル星系、カプリース星系、ラーテルのレリック星系が同一グループです。
アクア星系、タタラ星系、ファム星系、ウェイゼン星系、デンス星系、ペタル星系、クラム星系が同一グループです」
「辺境グループと旧プリンス領グループという感じか。辺境グループには産業が少ないね」
「若、よろしいですか?」
僕のために愛さんの解説を黙って聞いていたジョンが発言を求めてきた。
僕は快く許可する。
「聞こう」
「只今ご説明があった通り、我らの星系とウェイゼン星系はグループが違います。
つまり輸送に時間がかかるということです。
せっかくいただいた領地なのですが、我ら小領地の集まり故、扱いに窮しております」
「大型輸送艦を建造して渡すのでは難しいのか?」
「はい。小領地ばかりなので、何処の領地が運用するかで負担が偏ります」
「なら、ラーテルで小領地を統一するか?」
「ご命令とあらば」
「(ごめん、冗談なの。本気にしないで)冗談だ。辺境を開発して領地を分散させる方向で検討しよう。
とりあえずテラフォーミング可能な惑星をリストアップだ。随時ジェネシス・システムで惑星改造を行う。
ちなみに小領地はどのぐらいに分割されているんだ?」
「我らラーテル族、熊族、獅子族、虎族、牛族、馬族、兎族の7領地です」
前半4部族は戦闘部族だね。後半3部族は農業向き?
「辺境で自活出来るようにしたいな。辺境の近隣星系の探査も追加ね。
畜産2農業2鉱業1水産1ぐらいは確保したい。それで7領地に分散できるな?」
「わ、我らが惑星領主ですか?」
「そうなるな。ただし、その時はウェイゼン4は手放してもらう。カプリースにも何か産業を起こす必要があるな。
そして資源は都合しあってもらうからな」
「「「ははっ」」」
「まあ、新しい星系開発も含むから、時間はかかると思うけどね」
話が脱線してしまった。
これじゃ防衛戦略会議じゃなくて領地開発会議だ。
「話を戻して、防衛強化するのはアノイ星系と太陽系ってことだね」
「太陽系のハブ次元跳躍門は最果てですが特別です。おそらく時間さえかければ何処のハブ次元跳躍門とも繋がります」
「そういや物理距離がとんでもなく遠いと聞いたことがある」
「はい。そのため帝国ではあまり利用価値が無いと思われていましたが、ハブからハブへと2点間を繋げるという意味では時間短縮になる例もあると思われます。
例えばハブAからハブEまで行くのに通常ハブA-ハブB-ハブC-ハブD-ハブEと繋げなければならない所を、太陽系ハブを使うとハブA-太陽系ハブ-ハブEと繋げられるのです」
「それは戦略的に重要だな。逆に言うと太陽系ハブを自由に使えれば何処のハブへも直接攻められるという意味だし」
「それに気付いたのがプリンス(廃嫡から敬称つかなくなってます)なのです」
何その便利ハブ。弱点が時間しかないじゃないか。
次元跳躍門を閉めるとその先への亜空間連続体も途切れるという話だから、最終手段は次元跳躍門の閉鎖だけど、地球に干渉しなければフリーで通過していただくという手もあるかもしれない。
「アノイ要塞なら今の倍も戦力があれば防衛任務はこなせるだろう。
となると地球に工場母艦を持っていくべきか」
「工場母艦は次元跳躍門を通過できません。
物理距離の遠い地球へは次元跳躍でも何年かかるかわかりません。
そもそも帝国からは地球の座標が判っていませんので次元跳躍不能です」
「そういや地球がどの銀河にあるのかも判ってないって言ってたな」
となるとステーションに戦力を集めておく必要があるのか。
「うーん、地球には要塞砲の配備でも検討するか」
「そうなると晶羅はアノイ要塞常駐か?」
神澤社長いや神澤准男爵の言葉に僕に迷いが生じた。
メンバーのみんなを安全な場所=地球に帰してあげたかった。
だが地球は安全な場所なのだろうか?
元々芸能活動再開のために地球に帰ろうという話になっていた。
だが地球とアノイ要塞、どっちが危ないというのだろう?
ネックとなっていたのは芸能活動再開。
つまりアノイ要塞で芸能活動すればいい?
僕は閃いた。
「社長、僕はアノイ要塞から領地経営のために各星系を周る。
社長やメンバーにもアノイ要塞にいてもらう。
メンバーにはアノイ要塞で芸能活動をしてもらって、その映像を地球に配信する」
「アノイ要塞も地球も危険性が変わらないことは良くわかった。
だが、晶羅、お前がいない間晶羅はどうする?」
「そこで楓を招集する。あいつと僕は三つ子で見た目の年齢も同じ、つまりきららにそっくりだ!」
「その手があったか!! だがメンバーの意見も聞かないとな」
「社長もまだ准男爵のお仕事があるんだからね?」
「よしそれで行こう!」
本人達の居ない所で大事なことが決定していく。
評価をいただいたおかげで、ジャンル別宇宙〔SF〕の日間1位週間1位月間2位四半期2位年間5位になりました。
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