009 修行編9 拿捕
10話投稿ラストです。
座右の銘、「一発逆転」「一攫千金」「終わり良ければ全て良し」な僕。
明確な敵対行動であるプローブの切断捕獲を行うことに決めた。
レーダーON。右腕で掴んでいる岩塊を、そっと敵の岩塊の方へ押しやって、レンタル艦10番の艦体を全て隠す。
これで敵の光学兵器や粒子加速兵器、実体弾投射機からの直接攻撃を防げるはずだ。
ミサイルなら誘導可能だろうけど、この距離なら敵自身も被害が大きいはず。
それにミサイルなら岩塊に穴がないと撃てないので、どこかに兆候が現れるはず。
その余裕があれば、こちらもミサイルをデブリ掃除用のレーザーで撃ち落とせる。
「よし、いける」
僕はプローブ捕獲ミッションを開始する。
レンタル艦10番のエネルーギー炉を臨界状態にして急発進に備える。敵が動いたらとっとと逃げるつもりだ。
敵プローブの有線ケーブルを慎重に掴むとレーザーで焼き切る。
敵の反応なし。プローブを船倉に回収する。
「良かった。ミサイル攻撃は無かった」
これで敵艦は外の情報を得られなくなったはずだ。
僕はレンタル艦10番を岩塊の影から出すと敵岩塊に向けて急発進させた。
敵が動けばそのまま離脱、動かなければ急接近してドリルで岩塊を削る。
様子見の一手だ。
「やった! 敵はやっぱり動けないんだ!」
僕は賭けに勝ったようだ。
敵からの攻撃は皆無のままレンタル艦10番は敵の潜む岩塊に取り付いた。
ケーブルの付け根部分に取り付くと、右腕でケーブルの根本を掴み、周辺を左腕のドリルで削っていく。
割れた岩が飛び散るが、レンタル艦10番の周囲に張られた停滞フィールドに捕まるので飛散デブリにはならない。
レンタル艦10番の電脳によると、この停滞フィールドは実体弾の防御機構いわゆるバリヤーの一種らしい。
小型艦では出力の問題で紙装甲らしいんだけど、採掘艦として低速デブリ相手ならば充分な威力になっている。
これは艦と対象物の相対速度が上がるに連れて「捕まえる」「弾く」「貫通する」と作用が変わる。
貫通してしまってはお終いだ。
しばらく作業をすると敵艦の装甲板とプローブを射出した船倉のハッチが見えてきた。
ハッチからは有線ケーブルの端が出ている。
この時の僕は敵艦からの抵抗がないのをいいことに、調子に乗って警戒心が薄れていた。
敵艦の捕獲条件はエネルギー炉の停止及び電脳の破壊或は停止服従だ。
撃墜権を指定したゲーマーは、そこの確認が甘く電脳が再起動して隠れられてしまったんだろう。
おそらく予備電脳が主電脳破壊で起動したということだな。
船倉のハッチをこじ開けると艦内ネットワークのコネクタを見つけた。
「このネットから敵の情報を知る手立てはないものかな?」
僕が独り言ちるとレンタル艦10番の電脳が必要な情報を教えてくれる。
僕はレンタル艦10番の電脳の勧めに従って右腕の手首からネットワークケーブルを出して敵艦のコネクタに接続した。
この時は何の疑いもしなかったんだが、レンタル艦10番には敵のコネクタに接続できるケーブルが標準装備されていた。
接続するとレンタル艦10番の電脳が敵艦からデータを引っこ抜いてくる。
主機関損傷、エネルギー炉停止、現在予備バッテリーで稼働中につき航行不能。
主電脳損傷、武器管制制御不能、武器使用不可。
現在下位電脳が敵艦を掌握中であることがわかった。
「つまり、この下位電脳を破壊もしくは停止服従させれば、敵艦は僕のものってことだな」
僕は有頂天になって敵電脳にハッキングをかけてしまった。
そう、かけてしまったのだ!
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