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プロローグ

ある辺境の村に一人の少年がいた。


少年の名はレクトといい、彼いつも村の近くにある森の中に入っては剣の修行に明け暮れていた。


何故、レクトはそんなことをしているのか? それは彼の父の影響が強かった。


レクトの父、ダリルは数々の魔物を討伐しその名を知らぬ者は居ないというほどの大英雄であった。


レクトはそんな父に憧れ、自分もいつかは父のようになりたいと思うようになりそれ以降、レクトは剣の修行をするようになっていた。


そして、ある日いつものように早朝に森の中に剣の修行の為に来ていたレクトは自分のいつもの素振り地点に何者かが立っているのが見えた。


レクトは自分のお気に入りの修行場所を取られたように感じ、一言文句を言ってやろうとその人物に近づいていった。


遠目から見るとよくは分からなかったがレクトはその人物が少女であることがわかった。


そして、次の瞬間、レクトは言葉を失った。何故なら、その人物があまりにも美しく()()だったからだ。


一目惚れだった。


レクトは森の茂みの中に隠れその少女を観察した。


年齢は自分と同じくらいだろうか? 少女の持つ漆黒の長髪が森の木々から漏れでた朝日の光に照らされ宝石のように輝いている。雪のように白い肌、真紅の瞳が何かを見つめるように見開かれていた。


だが、その少女にはその端正な顔立ちには不釣り合いの禍々(まがまが)しい角が頭部に生えていた。


レクトはその少女が一目で魔物の類の者であるということがわかった。


魔物と人間は相容れない存在、ただ殺しあうだけの関係に過ぎないのだ。そんなことを村の村長が言っていたのを思い出した。


レクトはそれでも尚、彼女と話してみたいという欲求にかられレクトは思い切って茂みの中から出、少女に声をかけた。


炎魔法を放たれた。


間一髪でその魔法を避けたレクト、少女は突然現れた人間レクトに対して驚いてしまい咄嗟とっさに魔法を使ってしまったようだった。


レクトは自分の名を少女に語ると、その少女も自分の名を口にした。


少女の名はアイネス


アイネスは最初こそは自分とは種族が違う人間であるレクトに対して警戒心を持っていたが、徐々に日々を重ねるうちに打ち解けあっていき、二人で修行をしたり、遊びあったりしあうほどの仲になっていた。


そして、二人はお互いに惹かれあっていった。


しかし、二人の楽しい時間はある日終わりを迎えた。


人間と魔物との戦乱が巻き起こったのだ。戦乱の影響はレクトの村にまでも出ていた。


いつものようにアイネスとの時間を過ごすべく森の中で修行場所に向かっていたレクトはアイネスが村の兵士達に襲われているのを目にした。


多くの兵士に取り囲まれ取り押さえられるアイネス、だが、彼女は抵抗する素振りもみせていなかった。


レクトは分かっていた、彼女は自分との約束を守っているのだ。

ーーーー

ーーー

ーー


アイネスはレクトとの話の中で彼に一つの悩みを伝えていた。


彼女は人間と魔物が争いあうのが嫌であること、そしていつか人間と魔物が自分達レクトとアイネスのように仲良くなれないだろうか? というものだった。


その悩みをレクトに打ち明けたアイネスの瞳は寂しげであり、レクトはそんなアイネスを見ていられずある約束を交わした。


それは、レクトはこれから魔物とも仲良くなろうと努力し、いつかは全ての魔物と友達になるというものだった。


突拍子もない約束だった。子供が考えそうな無謀な夢であった。しかし、アイネスはその言葉に瞳を輝かせならば自分も人間を襲う事は絶対にしないと誓ったのであった。

ーーーー

ーーー

ーー


レクトはアイネスを取り囲む兵士達の中心に割り込むと、アイネスを取り押さえている一人の兵士を突き飛ばし、アイネスを抱え上げると逃走をはかった。


だが、それは叶わなかった。二人の兵士が自分達の持つボウガンをレクトに向かって放ったのだ。


ボウガンから放たれた二つの矢がレクトの脇腹と足に深々と突き刺さった。


レクトは走ることが出来なくなり、その場に倒れ伏した。


意識が朦朧もうろうとするレクト、兵士が放った矢には毒が塗られていたのだ。


鋭い痛みと朦朧もうろうとする意識の中でも尚、レクトはアイネスを逃がそうとした。


レクトの目の前ではアイネスが泣きじゃくりながらレクトの安否を問うている、しかし、兵士達はそんなことはお構いなしにと瀕死ひんしのレクトに対して剣を突き立てようとした。


レクト心臓を目がけて振り下ろされた剣、だが、次の瞬間には兵士は全員が無残に内部破裂をして崩れ落ちるように死んでいった。


アイネスがレクトを守るために魔法を使ったのだ。

ーーーー

ーーー

ーー


兵士達が全員死ぬと、森の中には静寂が訪れていた。その静寂の中でレクトを助けようと考えを巡らせるアイネスの姿があった。


一瞬、アイネスは自信の魔法で治癒することは出来ないかと考えたが彼女は攻撃魔法以外のものを習得していなかった。


刻一刻と近づいてくるレクトの死を感じ、アイネスは焦りと悲しみ、そして、自分を助けようとしてくれた人の命さへ救えない己の不甲斐なさに、また自然と涙を流していた。


アイネスの泣き声だけが響く森の中に不意にアイネス達とは別の人影が唐突にもう一つ増えた。アイネスはその人物の顔を見て驚いていた。


そこには、アイネスの父であり全ての魔物の頂点である()()の姿があったからだ。


魔王はレクトに向かって魔法を詠唱すると、レクトの傷は塞がり先ほどまでの苦しんだ表情も安らかなものになっていた。


レクトの治癒を終えると魔王は次にアイネスに睡眠魔法をかけて眠らせ、アイネスを肩に抱き上げた。


魔王はその場を去る前にレクトの傍に何かのペンダントのようなものを置き、レクトに向かって語りかけた。


「娘と仲良くしてもらって礼を言う。だが申し訳ないな……お前の父は()()()()()()()()()()()()。恐らくお前はその事実を知れば壊れてしまうだろう……よって貴様の記憶も自分の名前以外は消させてもらった。そのペンダントは娘が大事にしていたものだ。受け取っておいてくれ」


そして、魔王は暗闇の中に消えていった。森の中にまた静寂が訪れる、次にレクトが目覚めた時には彼は自分の名前以外の全ての記憶を失っていた。

魔物を殺さない落ちこぼれ勇者の幼馴染は魔王でした。プロローグをご覧くださった読者の皆様ありがとうございます。

ふと、思いついた設定を書いてみようと思ったこのお話、不定期で連載をしていくつもりです。

皆さんが面白いと思う小説を書いていくつもりなので、今後ともよろしくお願いします!

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