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ヒーローライクヒール  作者: 手頃羊
1話:異世界とはこういう世界
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その2・見知らぬ森で、見知らぬ誰か

玄野「ああああああああああ‼︎」

闇の中を落ちること数秒、やっと景色が明るくなった。


玄野「ああああああああああ‼︎」

だがそれもつかの間。

そのすぐ下に湖があった。


バッシャアーーーーン。


運良く、腹から落ちるのは免れた。

が、唐突に落ちたので息を吸えていない。


(溺れ死ぬ‼︎溺れる‼︎)

必死で水面と思われる方向に泳ぐ。


玄野「ぶはぁっ‼︎」

なんとか窒息する前に顔を出せた。


玄野「はぁっ…‼︎はぁっ…‼︎死ぬっての…‼︎こちとら病人だぞ…‼︎」

周りを見て、1番近い岸まで泳ぐ。



玄野「あぁっ…はぁっ…生きてる…」

体を水面から持ち上げ、地面にグッタリ倒れる。


(少し飲んじまった…気持ちわりぃ…)

湖の水は微妙にヌルヌルしている。


(ローションの湖とかってか?そうでなくとも、ヌルヌルしてる水とか普通に気持ちわりい…ってか…)

顔に付いた水を拭おうと腕を動かそうとするが、腕がうまく動かない。


(なんだよ…まさか動かせないほど疲れてるってか?そんな感じはしないんだがなぁ…)

疲れているという実感はないが、動かせない以上そういうものなのだろうと諦める。


(どうしよう…ってかどこだここ。)

さっきまで街の中にいた。

だが今、玄野は森の中にいる。

草が生い茂る地面に寝転がっている。


(ありえねぇ…もう何もかもありえねぇ…)

立ち上がろうとするが、うまく立てない。

すると、遠くから足音が聞こえてくる。


(ここ変な動物とか来ねえよな…?熊とかやめてよ?)

もし肉食動物だったりしたら絶体絶命である。

しかも湖だから、喉が渇いた動物が来ることだろう。


玄野「立たなきゃ…」

再び立ち上がろうとする。

が、できない。

足音が近づいてくる。


(なんか動物っぽい感じはしねぇな…普通に人か?)

なんとなく重量を感じないような音に感じる。

少なくとも熊のようなゴツい動物ではないように感じる。


声「イルジクトストルルァスト?」


玄野「はい?」

人の声に聞こえた。

が、確実に日本語ではなかった。

ついでに言うと英語という感じでもなかった。


(なんかすげぇ巻き舌…ロシア語?)

頑張れば起き上がれるくらいには体が動くようになってきた。

体を無理やり起こして声が聞こえた方を見ようとする。

30代手前くらいの若い男が自分の方に歩いてきているのが見えた。


男「クルルァシクトルロ-シャ?」


玄野「クルルァ…なんて?」


男「ニァ?クルルァシクトルロ-シャ?」

男が近づいてくる。


玄野「ごめん、全然聞こえない。ロシア語か何か?」

首をかしげて話しかけるが、向こうも首をかしげる。

しつこい巻き舌のような発音からロシア語かと推測するが、違うようである。


(お互い分かってないのか…世界の公用語で話せば通用するか?)


玄野「アイ、キャンノット、スピーク、イングリッシュ!」

ハァ?という顔をされる。


(うっそぉ…いくら英語苦手でもこれくらいは分かるだろぉ…)

謎の男は顎に手を当て、何かを考える素振りを見せる。

ただでさえ鋭い目つきが、さらに鋭くなっているように見える。


(どうしよう…この状況…)

立てるくらいには回復してきた。

立ち上がり、男と同じ目線に立つ。

男が閃いたように手を顎から離す。


玄野「どした?」

すると男が手を伸ばして首に触れようとしてくる。


玄野「ぬわっちょ!」

慌てて男の手を弾く。


玄野「なに⁉︎いきなりなに⁉︎そういう趣味の方⁉︎」

いきなり襲われるのかと勘違いしたが、謎の男は落ち着けとでも言うように手を下に向ける。

そして、自らの胸に手を当て頷く。


玄野「信用しろってこと…?」

初対面の人間を信用しろというのはなかなか難しいが、


(でもこの人俺を助けてくれようとしてたわけだよな…)

信用してみようかと思った。


玄野「はいはい、お好きにどうぞ。」

手を広げて、お任せのポーズを取る。

意図が伝わったのか、再び喉と耳に手を伸ばしてくる。

触れるか触れないかの瞬間、


バチッ!


玄野「痛って‼︎」

電気のような痛みが走る。


玄野「なに⁉︎」


男「すまない。こうでもしないと話ができないと思ってな。大丈夫か?」


(あれ、日本語?)

先ほどまでどこの国の言語か分からなかったが、いきなり日本語で話しかけてくる。


(話せたのか…?)


玄野「ありがとうございます…」


男「俺はハゼット・ローウェル。あんたは?」

感情が有るのか無いのか、どうにもやる気がないようなトーンの男。

鋭い目つきと合わさると、やる気がないというよりは、あらゆる無駄を省く殺し屋か何かのような雰囲気を感じる。


(外国人か?)


玄野「上月玄野です。」

ハゼットと名乗った男は名前を聞いて何度か頷く。


(なんだ?)


ハゼット「カミヅキ・クロノ、か。分かった。」


玄野「こうでもしないとって…どういう意味?」

先ほどのセリフで気になったことを聞いてみる。


男「後で話すさ。まずはそうだな…一旦うちに来い。濡れた服も乾かさないといけないだろう?話も聞きたいしな。」


玄野「うちって…この辺にあるんスか?」


男「さすがに森の外さ。少し歩いた所に街がある。この森の中は危険だが、街まで着けば安心できるさ。」


玄野「危険って…熊とか?」

見たところはとても自然豊かな森。

日本の、例えば白神山地とか屋久島の森のような、自然遺産とかに登録されてるような場所とはレベルが違うようなほど、いかにも森というような場所だ。


(行ったことはないけどさ…)


男「熊ではない。もっとヤバイのがいる。」


玄野「もっとヤバイのって…」


男「そうだな…おっと、早速遭ってしまった。」

男が指を指す方を見る。


玄野「え…まじ?」

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