表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローライクヒール  作者: 手頃羊
3話:スタート
14/33

その2・真面目な騎士の可愛い妹

クロノ「自分に素直になるって…それは良いことでは?」

『闇』に飲み込まれてしまった人間は自分の感情に素直になるという。

『自分の感情に素直になる』というフレーズは、よくプラスのイメージで使われるはずだ。


ガイア「そうだな。じゃあ例えば、その恋する乙女は、想いを寄せる人のことが好きすぎて、その人に近づく女性は全員許せないというような奴だったら?」


クロノ「え?…あっ」

嫌な予感がしてくる。


ガイア「あの人に近づいていいのは私だけ、ならそいつら全員殺してしまおう。」


クロノ「あー…あー…」

全くプラスではなかった。


ガイア「別に必ずこうなるというわけではない。人の想いによるんだ。例えば、今まで人の為になる何かをしたいと思っていた青年が、しかしいつも勇気が出なくて行動できないというような時、そこを『闇』に取り込まれると、いつでも人のことを思い、世界の英雄へとなることもあり得る。」

プラスとなることもあるにはあるということだ。


ガイア「だが、さっきも言ったように、危険な思いが『闇』に飲み込まれてしまうと、周囲が危険にさらされる。周囲どころか、世界が危険という可能性もある。」


クロノ「や、『闇』ってそんなに危険なんですか⁉︎」


ガイア「『闇』というのは、人間の心の奥、最も深いところに関わる。そこで解放されてしまったその者の潜在能力は、人によっては世界を滅ぼしかねないものとなる。このことはハゼットの方が詳しいが、あいつでもそんな奴に会ったという話は聞いたことはないな。」


クロノ「世界を滅ぼす…」


ガイア「『闇』というのは、大体特別な人間関係だとか、特殊な事情だったりとか、そういうのを抱えてる奴らに多い。異世界から来たというお前も、十分に可能性はあるさ。」


クロノ「いやいやいや…自分で言うのもなんですけど、俺そんな闇抱えるような性格じゃないですよ?」


ガイア「そういう奴ほどだ。いつ、どんな事件が自分の身に降りかかるか分からない。俺だって自分が闇を抱えるようなことは無いと思っているが、もし妹の身に何かあったら、どうなるか分からない。」


クロノ「妹さんがいらっしゃるんですか?」


ガイア「あぁ。唯一の家族だ。今日こっちに来るんだよ。だからわざわざ休みを取って、ハゼットに依頼を告げるついでにここに来たんだ。」

唯一の家族で、妹。


(そんなもん、そりゃ何かあったら病むよなぁ…)


ガイア「そろそろ来るんじゃないかとは思うんだが、来ないな。」


エリー「いつ出発されたんです?」

エリーがお茶を持ってきた。


クロノ「あ、ありがとうございます。」


ガイア「ありがとう。日が出る前には出るらしい。手紙にはそう書いてあった。」


エリー「なら確かにそろそろですね。今日は街の外の魔獣も大人しいそうですし。」


クロノ「街の外で暮らしてるってことですか?」


ガイア「このアリアンテから少し東南に行って数時間のところに、マストという村がある。そこに住んでいる。」


エリー「ガイアさんと妹さんは、そこの出身なんです。」


クロノ「へぇ〜。どんな人なんですか?」

その時、入り口の扉が開く音がした。


女の子「こんにちは〜。」

少し肌が焼けた10代前半くらいの女の子がギルドに入ってきた。


クロノ「あら?」

客かと思ったが、


ガイア「アリシア、こっちだ。」


アリシア「お兄ちゃあああん‼︎」

この反応で客ではなく、この子がガイアの妹だと分かった。


(ブラコンか。)

ガイアに飛びつき、胸に顔を押し付けている。


ガイア「少し遅かったな。」

頭をポンと叩いて無理やり顔を剥がす。


アリシア「荷造りにちょっと時間かかっちゃったの。」


ガイア「そうだったか。」


エリー「アリシアちゃんの分のお茶も出してきますね。」

再び、エリーがカウンターの奥へと消える。


レオ「アリシア‼︎」


アリシア「レオ‼︎」

カウンターでゴロゴロしていたレオがアリシアに抱きつく。

先ほどまで『闇』の話をしていた時、つまらなくてカウンターで頭を机に押し付けながら暇を弄んでいたらしい。


レオ「久しぶり!」


アリシア「うん!一ヶ月ぶりかな?」

キャッキャと眩しい笑顔に包まれる。


クロノ「仲良いですね。」


ガイア「まぁ、年は近いしな。」


クロノ「年『は』?」


アリシア「えーと…あなたは…」

アリシアがクロノの顔を覗く。


アリシア「初めまして?」


クロノ「え?あぁ、うん。2,3日前くらいからここで働くことになったんだ。」


アリシア「そうなんだ!私、アリシア・フォレスト!よろしくね!」


クロノ「僕はカミヅキ・クロノ。よろしく。」

両手で握手をする。


(元気な子だなぁ…)

ガイアが「妹に何かあったらどうなるか分からない」と言っていた。


(こんだけお兄ちゃんに対して明るく接するような妹に何かあったら、『闇』のひとつやふたつ、簡単に飲み込まれるだろうなぁ…)


アリシア「見慣れない服だね。どこかの村の人?」


クロノ「うっ。」

クロノの服装は、この世界に来た時と同じ。

つまり、元の世界で病院に行こうと思って着ていた向こうの世界の服だ。

黒地のシャツの上からタオル地の紺色の上着。

ベージュのズボン。

この世界では、そういった現代的な服装は見られない。


ガイアは異世界のことを話してもいいほど信頼できる人物だが、その妹はどうか。


(異世界だなんて面倒事に巻き込むのはさすがに可哀想だよな…確かに良い子だけど、こういうことで信頼できるかどうかとは別の話だし…)


クロノ「服は、東の方に遊びに行った友達がお土産でくれたのさ。」


アリシア「そうなんだ。珍しい服だね。名前もマキノさんみたいな東の方の人みたいだし。」


(どう返す?普通に東の出身だって言うか?でも「東の国ってどんな感じ?」って質問されても答えられんぞ?)


クロノ「えーと…」


ガイア「こいつは、両親が東の方の出身でな。この近くに引っ越して来た後でこいつを産んだんだ。」

迷っていると、ガイアからフォローが入る。


(ナイスフォロー‼︎それに合わせればいいんだな!)


クロノ「そう。だから血的には東の国の人間なんだけど、故郷はここってことになるね。」


アリシア「そうなんだ。東国ってどんな所なんだろうなー。」


(あっぶねぇ…ガイアさんからのフォローで助かった…)

おそらく、アリシアが東に興味があることは知っていたのだろう。



特に何でもない世間話をある程度した所で、ガイアが立ち上がる。


ガイア「そろそろ、お暇させてもらうよ。」


エリー「あら、もうそんな時間かしら。」


ガイア「この後色々と行かなくてはならんからな。ありがとう。」

ガイアとアリシアの2人が入り口の扉から出て行こうとすると、その扉が突然バン‼︎と大きく開く。


ガイア「ん?」

アクアが息を切らしながら入ってきた。


ガイア「アクア?どうした?」

ただならぬ雰囲気に、全員が駆け寄る。


アクア「外の…森の方で……デカイ魔獣が現れて……今、フレアが1人で…‼︎」


(デカイ魔獣って、こないだのスライムのような感じのか?)


ガイア「アリシア、ここで待ってろ。様子を見に行ってくる。」


エリー「アクアさんもここで待っててください。アリシアちゃん、お願いね。」


アリシア「うん、分かった。」

ドアを開けて出て行く。


クロノ「えーと…」


レオ「クロノさん…」


(俺も加勢した方がいいかな…)


クロノ「ねぇレオ。」


レオ「なに?」


クロノ「レオって、戦ったら強い?」


レオ「うん!」

元気に頷く。

どうやら加勢したかったようだ。


アクア「おい…まさかあんたら行く気かい?」


クロノ「ヤバい敵なら、人数多いに越したことはないでしょ?」


アクア「だけどあんたが行くのは…」


クロノ「すみません!行ってきます!」

アクアの言葉を無視してレオとラフを出て行く。


(今から走っても多分追いつく‼︎)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ