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ヒーローライクヒール  作者: 手頃羊
2話:微笑みは手に入れるもの
11/33

その5・デビュー戦

そろそろ森を抜ける。


(初めはどうなることかと思ったけど、意外となんとかなりそうだ。)


ハゼット「そのうち、色んなタイプの魔獣とも出会うだろう。依頼が無い時でも、ちょくちょく街の外に出て戦ってくるといい。」


クロノ「はい。」


ハゼット「あぁ、そういう時は絶対に誰かと一緒に行くんだ。アクアやフレアあたりだったら良いんだが、なんだったらレオとでもいい。あいつはまだ子どもだが、実力はしっかりある。」


(あの子強いんだ…)


クロノ「さすがに1人では行きませんよ。」


ハゼット「これはお前に限らず、ギルドや傭兵の間では決まりなんだ。基本的に単独行動は良しとしない。たまに単独で行動する傭兵もいるが、余程自信があるか、自分を過大評価しているか、事情で仲間がいないかだ。本当は良くない。もし、何か異常事態が発生した時に助けを求められるよう…」

話の途中で急に立ち止まり、森の方を見る。


クロノ「どうしたんですか?」

ハゼットが見ている方向を見る。

が、特に異変は無いように見える。


ハゼット「この気配…」


クロノ「気配?」

何かいるらしい。


ハゼット「かなり大型な…」

すると、森の中から巨大な塊が文字通り飛び出してきた。

ハゼットとクロノの立っている所めがけて落下してくる。


クロノ「‼︎」

咄嗟に横に跳んで回避し、巨体に押しつぶされずに済んだ。


(QTE並の回避‼︎なんなんだ今の⁉︎)

体勢を立て直して降ってきた巨体を見る。


クロノ「は?え?何このサイズ…」


ハゼット「無事か、クロノ‼︎」

巨体の向こうにハゼットがいる。


クロノ「ハゼットさん‼︎これって‼︎」


ハゼット「デカいスライムだ‼︎」

高さだけでも軽く4mは超えてそうなサイズ。


クロノ「ですよね‼︎」

先ほど戦った青色のスライムと違って緑色のスライム。

色が違うだけで形状は同じだか、とてつもない威圧が伝わってくる。


ハゼット「食事のし過ぎか何かだろう‼︎」


クロノ「これ倒せるんですか⁉︎」


ハゼット「俺なら倒せる‼︎」

スライムから腕が伸び、クロノに迫る。


クロノ「うおわ‼︎」

咄嗟に転がるように避け、腕から離れる。


クロノ「体に触れたらダメなんですよね‼︎」


ハゼット「あぁ‼︎ちょっとでも触れたら即終わりだ‼︎クロノ、お前は先に帰還してろ‼︎」

背後の方からガサガサと音が聞こえた。

振り返ると、森からゴブリンが3体出てきた。

先ほど戦ったミニゴブリンよりも少し大人な体格になっている。


クロノ「こいつらミニゴブリンの上位互換か!」


ハゼット「何してるクロノ‼︎早く行け‼︎」


(どうする?いくらハゼットさんがあのデカいスライム倒せるって言っても、このゴブリン共が邪魔するんじゃ戦いづらいんじゃ…)


ハゼット「クロノ‼︎」

ハゼットに帰るように促されるが、このまま残して戻るのも心配だと判断。


クロノ「ハゼットさん‼︎このゴブリンは俺が倒します‼︎」


ハゼット「何だと⁉︎」

剣を2本抜き、ゴブリンに相対する。


ハゼット「何をバカな真似を…‼︎」

スライムがハゼットに対して体当たりをする。


ハゼット「ちぃっ‼︎」

何とか避け、体勢を整える。


ハゼット「あぁクソ‼︎無茶はするな‼︎無理だと思ったら速攻逃げろ‼︎」


クロノ「はい‼︎」


(さぁて、チュートリアルボス戦かな?)

剣を何度も握り直し、最適なポジションを探す。


ゴブリン「グギャアアアア‼︎」

ゴブリンの一体がこちらに棍棒を向け威嚇する。


クロノ「やってみるか!」

剣を強く握ってゴブリンに向かって走る。


ゴブリンが棍棒を振り下ろす。

右手の剣で受け止め、左手で斬りつける。

当たりはしたものの、傷をつけることはできなかった。

が、打撃としてのダメージは通っているようで、腹を抑えながら後ずさりする。


クロノ「せぇい‼︎」

追い打ちをかけようと、右手の剣で刺そうとするが、別のゴブリンに横から攻撃される。

右手の剣で受け止めると、今度は左側からもゴブリンが襲ってくる。

左手の剣で受け止め、両手がふさがったところに、さっき殴ったゴブリンが棍棒を構えて走ってきている。


(これはマズいぞ‼︎)

このままでは頭をカチ割られる。

魔力強化で身体を強化しているため、カチ割られないこともあるかもしれないが、体勢を崩すと隙だらけになってしまい、そこをリンチされてしまう可能性がある。


クロノ「ちくしょう‼︎」

剣から手を離しつつ棍棒を避けて高く跳ぶ。

棍棒を抑えていた力が急に無くなってバランスを崩した両脇のゴブリンが前のめりに倒れ、そこに正面から来ていたゴブリンの棍棒が振り下ろされる。

そのゴブリンも、本来カチ割るはずの頭があった場所が虚空になり、タイミングがずれたことでバランスを崩し、3体まとめて重なって倒れる形になった。


(チャンス‼︎)

空中で体勢を変え、右手に氷の属性の魔力を込める。

ゴブリンがクロノの方を見上げ、口を開けている。


(このまま…‼︎)

ゴブリンの顔面を殴り、氷の魔力をゴブリンに叩きつける。

氷の塊がゴブリン達を包み込み、大きなオブジェとなった。


クロノ「上手くいったか…」

転がっていた剣を拾い片方の剣をしまう。

もう一方をバッターのように構える。


クロノ「そんじゃ、最後に…ホームラン‼︎」

スラッガー並の力強いスイングでオブジェを叩き割る。

綺麗に粉々になった破片が散らばる。


(ふぅ…案外何とかなるもんだな。)



ハゼットの方を見に行く。


巨大スライムの足元に大きな魔法陣がある。


クロノ「ハゼットさんが設置したのか?」

魔法陣のすぐ目の前でハゼットが棒立ちになっている。

スライムはそのハゼットに向かって体当たりしているが、見えない壁に阻まれて攻撃できない。


ハゼットが手をグーにして前に出す。


(何かするのか?)

中指と人差し指を伸ばし、手の平を上に向ける。


ハゼット「フレイムストーム。」

2本の指をクン‼︎と立てる。

魔法陣が炎の渦に飲み込まれる。

かなり距離があるのに、熱気と衝撃を感じる。


(カッケェェェェェ‼︎)


ハゼットが手をまた握りしめると、炎の渦が消え、そこには何も残っていなかった。


ハゼット「ハァ…ハァ…」


クロノ「ハゼットさん‼︎」

息切れをしているハゼットの元に駆け寄る。


ハゼット「クロノ…」


クロノ「そんなにヤバい相手だったんですか?」


ハゼット「まぁな。魔法陣の中に追い込むのに手間取った。お前は…倒したのか。」


クロノ「はい。何とか。」


ハゼット「そうか…その様子だと、余裕で倒せたようだな。」


クロノ「えぇ、まぁそんな感…」


ハゼット「なぜ帰らなかった。」

明らかに怒っているトーン。


クロノ「いや、その…あの量を1人でやるのはキツいんじゃないかなーって…」


ハゼット「まぁ確かに、勝てないことはないが、面倒な戦いにはなっただろうな。なにせスライム1体相手でも苦労したんだ。」


クロノ「だから…楽になるかなって…」


ハゼット「俺を助けようとしてくれたのは分かる。だが、何度も言ったがお前が死んでしまっては…」


クロノ「…………」

周りが暗くなってきたような感覚になる。


ハゼット「おい、聞いてるか?」

ハゼットの言葉も、耳には入ってきているが、全く理解できない。


ハゼット「顔色が悪いぞ。おい!」

急に体に力が入らなくなる。


クロノ「…あ……?」

意識が途絶え、倒れる。


ハゼット「クロノ?クロノ‼︎」

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