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''君''紡グ物語  作者: 伊佐伊波
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序章 1

朝日が瞼越しに瞳孔を刺激し、眠りが阻害される。

「フッ……、ん~~~」

目が覚めて大きな欠伸が出る。陽の光の方向、すなわち太陽に目を向ける。咄嗟に瞳孔は収縮し、強制的に目を逸らしてしまう。

それからやっと意識が明瞭としてくる。視界が半ばぼやけている、というよりか緑がかっている。その為、中々自分が今いる状況を掴めなかった。

やっと視界が綺麗になると、正面、まず目に入ってきたのは濃い灰色の薄汚い壁であった。続いて左側も同じように壁、後方も壁。右側は道が開けていて、太陽の光が眩しかった。今自分がいるこの場所は三方を壁が囲んでいるため、真っ暗とまではいかないが、かなり暗く少し気味が悪かった。

自分の今の状況をやっと掴むことができると、今度は不安が心を取り巻き始める。何故自分はこんな場所にいるのか、ここはどこなのか、と。ただその不安もすぐに取り除かれる。

「そうか…、思い出した。俺昨日からこの意味わかんない場所に来たんだった。」

昨日の記憶が蘇るのと同時に、期待や希望、それにすがることで得られた安心が一気に霧散した。

結局戻ってないか……、まぁそんなに期待はしてなかったけど。

しかし、多少の期待だとしてもその期待が外れたときは、裏切られたと言うと行き過ぎだが、絶望のような気分はやはり感じた。ただ、ならばこそこんな場所に留まってなどいられないという気持ちにも多少なりともなった。というよりか、ポジティブやお気楽などのプラスの気持ちにならなければ、不安に押し潰されてしまいそうだった。

「さぁーて、どうするか?」

自分がこれから何をすればいいのか、考える。考えたが、結局何も案は浮かばなかった。だが、回りの人々が'俺'のことを人間と呼び、マイナスの感情を持った視線を向けてきた事を思い出した。そして一緒にその時味わった不快感を思い出した。

「なんだったんだ……、あれ」

昨日の子供のような人の助言、回りの人々の態度から、自分が嫌われている―――"人間"が嫌われているという――― ことは理解できた。その理由は解らないのだが…。取り敢えずここにいても仕方がないので、道に出ることにした。

フード被って顔隠した方がいいかな?

服装がフード付きのジャージだった為、顔を少しくらいは隠すことができた。


道に出ると、明るく開けた場所に出た分気持ちも幾分か楽になった。

何の目的も無く道を歩いていたが、フードを被ることで回りの人々が'俺'に視線を向けないことがわかった。実際、人間の特徴に似たり寄ったりの人々しかいないので、きっとその為だろう。ただ、その1つの問題に対する解決法を自分の行動を元に発見できたという事実が、何も分からなかった'俺'に初めての安堵を与えた。まぁ、とはいっても気休め程度にしか感じられなかったのだが。


路地裏から出てから約1時間、少しずつこの場所の町並みにも慣れて、大分気が楽になっていた時。

「おい!大通りの方に逃げたぞ!!」

男の大きな声が聞こえる。と同時にフードを被った人影が前方約50メートル程度の角から飛び出し、こちらへと向かってくる。大通りにいる人の数は見た感じまばらだ。その為フードを被った人影の体格を確認することが出来た。身長は俺と同じくらいだろうか?フードのせいではっきりとはわからないが体付きは細身であるようだ。全体的に頑強というよりは華奢である。

見ている内に彼は俺の横を走り去って行った。その後に遅れて大柄な男が2人、彼を追いかける様にこちらへ向かって来た。そして俺の横を走り去って行った。いや、行かなかった。というか俺が大柄な男2人に取り押さえられている。

「やっと捕まえたぞ!……、手こずらせやがって!」

「え!?ちょっ、違いますって!あんた達が追いかけてた奴ならあっち行きましたって!」

「そんな戯れ言に騙されるかっ!!大人しくついて来い!」

どうやら完璧に勘違いをされている。何言っても駄目そうだ。だからといって力尽くで逃げるのなんて絶対無理だ。

結果……諦めるしかないか。アァーくそっ!!フードを被ってたせいか!さっきのも被ってたしな、最悪だ、これならフードなんか被らなければよかった……


男達に拘束されながら連れて来られたのは、巨大な石造りの建物だった。








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