1話
どうも猫だるまです。
この度、投稿させて貰いました(`・ω・´)
エロい要素とかは………多分ない?と思います。
未熟ですので、あまり読んで面白くないと思うかも知れませんが、1度読んで貰えたら、作者は画面の前で涙を流します(T ^ T)
では、始まりです。
「しっかし、ココは天国か地獄かどっちなのかな?」
木製のイスに腰かけて眼前で繰り広げられている光景を見物しながら、黒髪黒目の誰が見ても〝カッコイイ〟と称する整った顔立ちをしている上下スーツ姿の青年は言った。
名は、秋庭秀真。
現状の中心にいる人物で、その表情は微笑んでおり楽しさを表現している。
「天国じゃないかな? アタシはそう思うよ、秀真」
そう答えた女性は『舞花』といい、容姿はかなり整っている。
肌は白く金髪セミロングで少しカールがかかっており、耳にはピアスがつけられている。また、左脇腹の部分にはスズメバチの、右腕には模様とともに『rain hornet』と刻まれたタトゥーが入っている。
彼女の身体は鍛え抜かれており、色気こそあるものの腕や足の筋肉は相当なものである。母性を感じさせる巨乳をもってはいるが、その姿はどちらかと言えば狼などの肉食獣をイメージさせる。
そんな彼女は、赤のパーカーにデニムのショートパンツを履いている。
「ご主人様が選んだ方が正解です。そして、例えどちらだろうと『涼花』はご主人様のお側におります」
可愛らしく微笑みながら言うのは、涼花という少女である。
藍色の髪を後ろで結んでおり、綺麗な碧眼をもっている。右足の太ももに『rain hornet』のタトゥーが刻まれている。首には、青いチョーカーが付けられていて、太もものタトゥーと同様に『rain hornet』という文字が白で描かれている。
スレンダーな体つきで、形のいい美乳が服の上からでも分かる。
服装は、メイド服である。
「じゃあ、ココは天国だな。まぁ、家具とか食べ物とかはアッチの方がいいけど、こうして二人と仕事ができるのは、最高だからな」
秀真は、返り血を多少浴びている二人の私兵に向けて言った。
彼のいる広いスペースのある部屋の中には、八人ほどの男が頭部などを何発か弾丸で射たれて倒れている。部屋の壁や床には血痕が多数あるものの、秀真はむしろ歓喜しているような表情でイスに座って眺めている。
生きているのは、口と手足を拘束された中年の男のみで他は全て始末された。
舞花の手には突撃銃である『FN SCAR』が握られており、太ももに付けられたホルスターには『コルト・ガバメント』が収められている。また、腰の後ろにはボウイナイフが二本鞘に収められた状態でつけられている。
涼花の場合は、銃剣付きの『ジグアームズGSR』二丁が握られている。他には装備していないが、その剣には血が付着している。
「それでぇ、コイツはバラしていいの?」
嬉々とした表情で飼い主である秀真に判断を求める舞花は、拘束されている全身を震わせて涙目になっている男を見ながら言った。
そんな舞花とは対照的に、涼花は秀真の後方で周囲に気を配りながら男のことなど微塵も興味のない顔をしている。ただ、彼女は主人の姿を見て時節表情を和らげる。彼と舞花以外の人物が相手ならば、完全な鉄仮面である涼花は秀真しか見えていない。
「どうやら、知らないみたいだからね。無知っていうのは………それだけで、罪だな」
「殺しちゃうけど、涼花もいい?」
「構いません。私はそのような者に興味などないので」
「じゃあ、バラそっと♪」
『FN SCAR』を捨てて、舞花は鞘から二本のボウイナイフを抜き取って器用に回し始める。と同時に、拘束されている男との距離を詰めていく。
迫り来るのは美女だが、男は一切興奮などせずただ絶望し恐怖で身体を震わせる。
外見こそ美しいが、その漂う殺気と死神のような表情は相手に死を連想させる。
舞花は男の前で腰を落とすと、ボウイナイフで捕らえた獲物の頬を撫でる。
「んんッ!!!! ん、んんんッ!!!!!」
「なに言ってんのか分からないよ?」
楽しそうに告げると、両足の太ももに二本のボウイナイフを突き刺した。
男の身体が跳ね上がるも、拘束されているため抜け出せない。
血が流れ出す中、舞花は太ももを側面から殴る。
「ひゃっはははははははははッ!!!」
そして、二本のボウイナイフを持って肉を掻き回していく。
鍋の中のスープでもかき混ぜるかのようにゆっくりと確実に回していき、男の悲鳴にもならない声を堪能しながら続ける。しばらくして、意識を失った男だがすぐに起きることになる。
「寝ないでよ。全身に刺激がいくように、神経をちょっとイジるからさ」
ワイヤーを取り出して舞花は拷問を再開する。
神経を的確に刺激することで、男は嫌がおうにも目が覚めて現実へ引き戻されて、最後には彼女の拳で原形も残らないほど殴られて命を落とした。
全てが終わった部屋には、異臭と臓物などがばら撒かれた死体が多数転がっている。
そんな中、三人は嫌悪することもなく平然としている。
彼らは人を殺そうが拷問しようが、罪悪感や生理的悪寒も覚えない。
異常な世界に慣れすぎた彼らにとって、殺人など楽しむ趣味の一つでしかない。
「楽しめたか、舞花?」
拳を血で汚したブロンドの美しい私兵へ問う秀真は、返り血一つ浴びておらず書物を読んでいる。
「そこそこかな。すぐ死んじゃったから」
「舞花さんと遊べる相手なんてほとんどいないですよ。それより、帰りませんか? 秀真様に早くご奉仕をしてさしあげたいのですが」
涼花がつまらなそうに言うと、秀真が彼女の腰に手を回す。
すると、先程までの冷たい目と無表情が打って変わって恋する乙女のような可愛らしい表情へと変貌した。
秀真は涼花を引き寄せると、その小さいピンク色の唇へと自分のものを合せる。
「んぁ❤」
完全にメスの声が出た彼女は主人の口へと自分の舌を入れて、秀真の舌を絡める。
互いの唾液が混ざり合い、涼花は貪るようにキスを堪能する。
やがて、静かに秀真が離して言う。
「機嫌を直せよ、涼花。舞花もそんな羨ましそうな表情するなら、もっと早く片付けろ」
「えぇ、アタシの楽しみの一つなのにぃ。ま、まぁ………秀真の方がいいけど」
「じゃあ、ここを出るぞ。金を入れたバッグ回収して燃やせ」
「「了解」」
秀真の命令に従って即座に動き出す二人の私兵を見ながら、彼は書物を読み始める。
その言語は日本語でも英語でもなく、異界の言語である。
また、死んだ者たちの服装も現代とはかけ離れており中世を思わせるものである。
秋庭秀真とその私兵である舞花と涼花の三人は、現代から異界へときてしまった。
その理由も原因も分かっていない中、三人はこの世界を堪能している。
*****
秋庭秀真と舞花と涼花の三人が異界にくる前の最後の記憶は、大型のフェリーに乗って大海原を渡っていた、ということである。
秋庭家が経営する『レインハニー』という大規模企業は、石油貿易からレストランにまで渡る多種多様な事業を展開する会社で、莫大な金を動かしている。当然その経営者である秀真の父、正確には秋庭家には莫大な金が存在する。世界中の大富豪の中でもトップクラスの金を有している秋庭の者には、裏の顔がある。
先祖代々というよりかは、秋庭家はその昔武器を売る武器商人という職を一族で行なっていた。戦乱の時代には刀や鉄砲を製造して多くの国に売りさばく、時代が変わるにつれて様々な事業を展開していき、平和な世となった現代では表向きには真っ当な商売だけをしているように見せざる負えなくなった。
しかし、秋庭家の武器つまりは争い関連の事業が終わることはなかった。
裏で大量の武器を製造して取引をし、独自の軍隊とも呼べる私兵集団を組織することで、強力な権力を表でも裏でも持つ。そのパイプは各国の要人にしっかりと繋がっており、優秀な軍人をスカウトすることなど容易である。
そんな秋庭家の長男として生まれた秀真には、弟がいた。
会社は当然のこと秀真が長男であるから継ぐはずだったのだが、彼は十歳の頃にその権利を放棄した。すなわち、弟に全て譲ったのである。それは兄としての優しさなどではなく、幼い頃から叔父に引っ付いたせいで裏稼業へ完全にはまってしまったことが原因である。
子供の頃から異常なほど頭がよく、物心つく頃にはその才能は開花していた。
同時に、彼は秋庭家本来の姿である武器商人という仕事への渇望が異常だった。呪い、とでもかかっているかのように、秀真は裏の世界へと自らの意思で進んでいった。
そして、母親はひどく反対したものの父親は大賛成であった。
父親もまた秀真ほどではないが、裏の世界で生きることを強く望んでいたからである。しかし、会社を継いだ事によりその夢はほとんど散ってしまった。
親として好きなように生きさせてあげたい、という愛が秀真を完全に裏の存在にした。
ただ、彼の父は秀真の命のかなり心配していたため優秀な人材(兵士)を彼の身辺警護につけた。元ベルタフォースやドイツの特殊部隊など様々な者を送ったものの、そのほとんどは残っていない。
理由は、秀真が自らスカウトした者を引き入れて元々父から送られた者を返していったからである。
こうして、秋庭秀真は自分の兵団を組織したのであった。
そんな彼がいつも通り大量の武器を取引先へもっていくために大型フェリーに乗っていたところ、突然大津波が船を襲って一瞬で海の藻屑となった。
だが、気づけば彼ら三人だけが異界へと飛ばされてしまったのだった。
これが、彼らが異界にいる理由である。
三人も全く原因が分かっていないが、気にしていないのである。
なぜなら、秀真は武器を売って誰かを殺せればそれで良い。舞花と涼花は、秀真という飼い主とともに生きていければそれで良い。
完全に条件を満たしてしまっているのである。
「いやぁ、相変わらずこの世界って文明レベル低いよな」
「だね」
山奥の木造建築の家の中で、ベッドに入ったまま秀真と舞花は話す。
ココは、彼らのこちらの世界での拠点である。
二階建てでそれほど大きくもないが、巨大な地下室が存在する。
その地下室にあるのは、巨大なコンテナ五つである。
なぜ、コンテナが五つあるのかというと三人と一緒に飛ばされてきたからである。
そして、その中身は当然あちらの世界の武器であり、秀真の商品だ。腐るほどある5.56mmや.45ACPなど多種多様な銃弾が入った箱が大量にある。銃も『FN SCAR』や『FN ミニミ(M249)』といった多様な品がコンテナの中にある。
つまり、この家の下は武器庫となっているのだ。また、秀真は異界に〝銃〟という概念が存在しないことを確認している。飛び道具としてあるのは、昔日本人も使用した弓や槍を発射する固定砲台(弓と同じ原理で、引っ張って飛ばす)くらいである。あとは、剣や槍などの秀真たちでも馴染みのある武器が使用されている。
この世界では、銃という武器はないのだ。
これが、秀真をより一層喜ばせた。
だが、彼は自分たちの世界にはない武器を異界で発見した。
〝魔法〟。
秀真たちのいた世界では御伽話、つまり空想上のものとして処理されていたものが異界には存在した。それも、秀真たちのいた日本のオタク文化で出てくる魔法とほとんど変わらない効力を有している。
例えるのなら、手から火の玉を放つ、などが可能なのである。
〝銃〟と〝魔法〟互いの世界にしかなかったものが、秀真たちが異界に飛ばされたことで揃ってしまった。
武器は銃だが、この異界の文化レベルは低い。
エアコンなどの機械製品はなければ、当然映像という概念もない。魔法による通信は可能だが、カメラなどは無論ない。
そいう点で、秀真たちは苦労している。
「洗濯機がないからね」
「これじゃあ、着衣でヤるのは避けた方がいいよな。あぁ、メイド服の涼花がッ!!」
一糸まとわぬ姿の二人は、朝から盛んに男女の交わりを行なっていた。
というのも、舞花と涼花の二人が秀真とともにいるのは私兵だからというよりは、惚れた男の側にいたいからという面が大きい。涼花の場合には、更に忠実な隸という部分も加わってくるが、一緒にいる理由としては愛という点が大きい。
「もうッ!! 今はアタシでしょ?」
舞花はそう言うと、秀真を豊かな弾力のある双丘で包み込む。
それを行なっている彼女は赤面しており、息もやや荒い。
秀真は舞花の胸に顔を埋めながら、心を落ち着かせていく。
「あぁ………舞花ぁ~」
子犬のように甘える彼を舞花は心底嬉しそうな表情で、頭を撫でる。
普段の秀真ならば決して甘えるということはしないのだが、こうして舞花と一緒にいるときには、たまにこうした一面を見せる。
十八歳の秀真に対して舞花は二十三歳で、私兵ではあるが姉のような存在でもあるのだ。
そして、母親のようでもある。
「秀真、そう言えば今日はなにするの?」
「ん? ネリーのいう魔法使いを相手にドンパチだよ」
「マジで!!」
満開の花が咲くように笑顔になった舞花に対して、秀真の方は真剣そのものである。
ネリーというのは、秀真たちが飛ばされた際に最初に遭遇した異界人である。当初は尋問するまずだったのだが、彼女が天啓を受けて自分たちの元へきたという発言に彼は興味をもったのである。
天啓つまり神様の言葉を聞いたというネリーの言葉をどうして信じたかと言えば、秀真たちがネリーの言語を理解できたことが最大の要因である。それが異なる言語だと頭では分かっているにも関わらず、自然と会話が成立する。それを秀真は、彼女のいう神様とやらの仕業ではないかと推測した。
無論、すぐにそんな結論に至ったのではない。
ネリーとの会話をしていく中で、その可能性が一番高いと判断したのである。
それに、秀真は現地人の協力を得ることが今後の運命を左右するとも考えていた。
一瞬で状況に対応できるのも、秀真が他とは少し異なることを意味しているのであろう。
「さて、そろそろ起きるか」
秀真は舞花から離れると、身体を起こしてベッドから降りた。
そして、すでに用意されていた異界では一般的な服を着て、洗面所へと歩き出す。
洗面所と言っても外に排水できるようしてあるだけの簡易的な造りで、異界では一般的である。あくまでも家がある者も場合は、だが。
身支度を整えていると、後ろから舞花が抱きついてくる。
「朝風呂行こう」
「それ、昨日も入っただろ。今日は、早く仕事をしたいから舞花も顔洗ったりしてくれ」
「ぶぅ」
頬を膨らませて〝怒ってます〟アピールをしながらも舞花は折れた。
秀真は先に部屋を出てリビングへ向かうと、すでに涼花が食事を用意していた。
こと戦闘に関しては、舞花は彼の私兵の中ではダントツである。狙撃が得意ではないが、野外戦や奇襲作戦など彼女の兵士としての能力は非常に高い。それは、同じ私兵である涼花を凌駕しているだが、舞花は他のことがめっぽうダメである。
例えば、家事や戦闘以外の知識だ。
その点、涼花は大抵のことは人並み以上にこなせる。また、狙撃を得意としており、近接戦なども問題なくこなす。
この二人の私兵は、互いの欠点と言える部分を補っているとも言える。
つまり、バランスがいい。
「しゅ、秀真様ッ!! 着替えなどは私を呼んでくださればお手伝いしましたのに」
「一人でもできてしまうからね。それに、涼花の料理している姿を見たくてね」
慰めなどではなく、秀真は本当に涼花の料理をしている姿を見るのが好きなのである。
正しくは、彼女が家事をしているところ、なのだが。
「………ぅ、嬉しいです」
顔を真っ赤に染めて俯きながらも礼を言う当たり、涼花はメイドらしいと言えよう。
彼女の作った料理をイスに座ってテーブルで食していると、秀真は客室から出てきた女性と目が合った。
ネリー。
彼が初めて遭遇した異界人である。
「お、おはようございます」
「あぁ、ネリーはよく眠れたかい?」
「ベッドで寝られたので」
異界の者であると判断できたのは、その外見であろう。
彼女は猫族…ようするに獣と人が混じっている獣人と呼ばれる種なのだ。人の耳とは別に頭部に猫耳が二つあり、尻尾まで生えている。ネリーのような獣人は、異界では待遇のいい国もあるが悪い国もあるらしく、特に人が統治している国は大体奴隷などにされているらしい。
愛嬌がある、という理由で獣人は奴隷としての需要が高い。
また、獣人のメスはオスを魅了するというのが遺伝子的にインプットされているせいか、美しく育つ割合が高い。
これらが理由で、ネリーのような獣人は人に狙われることが多々ある。
そして、ネリーたち猫族の住んでいた村が人間に襲われて彼女は一人運よく逃げられた。そこで、神様からの天啓を受けて飛ばされたばかりの秀真たちと遭遇したのである。
彼女は相当な距離を移動して逃げたため村からはかなり離れることになったが、秀真たちの協力を得られたので、ひとまず目的は達成できたと言える。
「獣人という種はベッドで寝ないのですか?」
涼花の素朴な疑問に、ネリーは少し視線を落として答える。
「いえ、そういう習慣があるのではなくて………私の村が貧しかったので」
「そうでしたか」
地雷を踏んだというのに、涼花は全くに動じていない。
彼女にとって秀真以外の者の心情などどうでもいいのだが、その気にされている彼としては配慮して欲しいと思っている。
「ネリーも食べなよ。涼花の料理の腕は、かなりのものだ」
「は、はい」
ネリーと出会ったのは三日前である。
初日はネリーから異界の情報を聞き出した。また、飛ばされた際に周辺に使われていない山小屋を勝手に奪って改良した。
二日目は、彼女とは別行動で近くの街で金を奪い続けて散々銃で殺し回った。
そして、今日に至る。
ネリーと秀真たちはまともに会話したのは初日だけで、さすがにまだ会話などに遠慮が見られる。それもネリーだけなのだが。
「あれぇ、皆もう食べてるの?」
舞花が着替えを終えてリビングへくると、すぐに食事へありつく。
食事中は特に会話もなく、全員食べ終えて涼花が後片付けを済ませた後で本題の話へ移った。
本題というのは、ネリーが受けた神様の天啓の件である。
彼女が神様から受けた天啓は〝山奥で見慣れない四角い大きな箱のようなものの近くにいる男に協力しなさい。そうすれば、キミは村の皆の亡き思いを晴らすことができる〟というものである。この内容そのものが偽りという線は十分に有り得るのだが、ネリーがそれを言うメリットがない。
仮に、神様がそう言ったから手伝ってくれる、などというのなら相手に言った瞬間にそれは意味をなさない。神様が自分はネリーを助ける、と天啓を残したということを知ってから助けないと判断するかもしれないからだ。
事実だと判断した秀真は、この天啓は神様が残したのではなく何者かによる差し金なのではないと疑ってもいる。
秀真たちの力を借りたい何者かが呼び出した際に、秀真が現地民の協力が欲しいだろうと気を着させてネリーを寄こした。だとすれば、その何者かが自ら現れればいい、となるが事情で姿を現せなかったとすれば話としては繋がり、現実味がある。
ともあれ、ネリーの願いである村の皆の亡き思いを晴らす、というのを叶えようという話をしようとしているのである。
要するに、復讐の手伝いなのだが。
「ネリーの襲われた村に行って復讐すればいいだよな?」
「わ、私はそうして欲しいです。あの盗賊団はお父さんやお母さんを殺したから」
憎しみを人が感じると大抵の者は、目にそれが表れる。
憎悪のこもった瞳は、秀真たちのような裏の者にはすぐに分かってしまう。
「ふぅん。で、その盗賊団ってネリーちゃんみたいに魔法使うんだよね。ワクワクする」
「彼らは攻撃特化なので、私の魔法なんかより遥かに強いです。だから、断ってもらっても結構です。そこまでして、協力して欲しい訳でもないので」
魔法というものを秀真と舞花と涼花は、異界に飛ばされた初日に目撃している。
何を隠そう、この家の地下にコンテナを移動したのはネリーなのだ。彼女は、地形を変化させる魔法を使うことができる。ただし、何度も繰り返し使用して十時間ほどかかり作業を全て終えたのでかなり使い勝手は悪い。
魔法は母親に習っており、母親は人間種である。
「秀真様、未知の攻撃を仕掛けてくる相手との戦闘………もう少し魔法というのもを調べてから考えた方がよいのではないでしょうか?」
「涼花ってば、相変わらず慎重だねぇ」
「当然です。私たちが死んでしまったら、秀真様の警護する者がいなくなります。私はこの先も秀真様の命を守っていかなければならないのです。まして、秋庭家の庇護下ではない異界などでは早々に命を落とす訳にもいきません」
「そりゃそうだけど」
涼花の説教っぽい言い方にも舞花は腹を立てることもなく、冷静に受け流す。
この二人は意見があまり合わないが、別段仲が悪い訳でもない。互いの意見を言い合っても争いが起こるわけでもない。
長年共に死線をくぐり抜けてきた仲間だからこその関係と言えよう。
「涼花には悪いが、今日中に行動を開始する。まぁ、俺としては賭けてみたいのさ。俺の商品と、なにより俺が最も信頼する舞花と涼花に」
「………秀真ぁ」「………しゅ、秀真様ぁ」
二人とも彼の顔を見ながらうっとりとして表情をしており、先程の空気が一変する。
完全に蚊帳の外となっているネリーだが、彼が今見ているのは他ならぬ彼女である。
「ネリー、仕事としてキミの敵討ちを引き受けるけどいくつか確認したいことがある。キミの村までどのくらい時間がかかる?」
「休まなくて最短距離なら、一日かかるかかからないかくらい」
「なら、今すぐ行こうか。じっとしていても仕方ない。舞花、涼花、仕事の準備をしろ」
「作戦はどうするの?」
「オマエたちに任せる。涼花は、狙撃の用意だけは絶対にしておいてくれ。試してみたい」
そう告げると、秀真は自室へと戻っていった。
残された三人は出発の準備をすることになったが、ネリーは身を震わせていた。
舞花と涼花の雰囲気が一気に冷たくなったような気がして、不安と恐怖を覚えたからである。ネリーも秀真たちが別の世界からきたという話を薄々疑ってはいるものの、表向きは信じている。
だが、彼女は一度だけ目にした〝銃〟という武器の存在を目の当たりにして、その兵器がどれほどのものなのか興味をもっていた。
決して、良い方とは言えないのだが。
ど、どうでしたか?
ちょっと脱字とか心配です。
この作品は、早いペースで連載していけるか分かりませんが、完結はさせる予定です。
もしよければ、『ケージ:エスケープ』という完結している短めの作品(結構昔に書いたので、レベル低いかも)も読んでもらえたら幸いです。
それでは、次話も頑張りますねヽ(*´∀`)ノ