9 テクヨの街にて その3
後半に女性の月のものについての記述があります。苦手な方は回避してください。
9 テクヨの街にて その3
「・・・普通に美味いな。」
シチューを口にしてディーはつぶやいた。そんな眉間にシワを寄せなくともいいんじゃないかな
(# ̄З ̄)
「何でそんなに不本意そうなの?」
「いや、料理が出来ると思わなかった。」
そう言いながらかなり早いペースでシチューを口に運ぶ。眉間のシワは解除したようだ。
「・・・ 出来るわよ料理ぐらい、そりゃすごく凝ったものなんかは無理だけど。」
「あぁ、技能的な意味ではなく。チカの手は全然荒れてないだろだからそういう事をしなくてもいい生活をしていたんだろうと思ってたからな。」
そう言われてマジマジと自分の手を見る。
「まぁ、確かに。手荒れには気を付けてたかな。でもこっちは洗浄の魔法があるからそれこそ手荒れなんてしないんじゃないの?」
《洗浄》の魔法は便利で気持ちがいい。本当に洗われたかの様にサッパリする。
「生活魔法をギリギリまで使うやつはあまりいないな。突発的な事があっても大丈夫なように多少余裕を持たせるものだ。」
「えー、便利なのにもったいない。」
「普通は魔法を使わなくても出来ることに魔力を使う方がもったいないと思うんだ。」
「でもさ、一日に10回程度しか使えない魔力量って微妙だよね。」
「それでも火種を付けたり洗濯をしたりするには十分だ。」
「もっと魔力量が増えるといいのにねぇ。」
「種族によって大きく差があるからな。あとは個人の資質だな。」
「へぇ、どんな種族が魔力高いの?」
「天羽人、竜人、鬼人、エルフ、妖精、小人、ドワーフ、人族の順だな。」
「ディーって竜人と鬼人のハーフでしょ? 何でそんなに魔力量少ないの?」
「チカ、奴隷商のところでの話し聞いてなかったな?」
ジト目で見ないで欲しい。
「き、聞いてはいたわよ? ただあの時はいっぱいいっぱいだったんだもん、しょうがないじゃない。」
ディーはため息を吐く。
「確かにあの時は驚いたな。宿に着くなり『自分はこっちの事が何も解らないからあなたが良いようにして』って言ってさっさと寝ちまうし、床に寝ようとしたら『そんな所で寝ないで!』って怒るし。『同じベッドで狭くて申し訳ないけどその端っこで寝てちょうだい。』って言われて俺は正直どうしようかと思った。」
う、こいつ何時からこんな嫌味っぽいこと言うようになったのかしら・・・
「悪かったわよ。で、何で魔力量が少ないの?」
「奴隷だから、主人の脅威にならないように扱える魔力量は微々たるもので、攻撃魔法は封印。」
面白くもない噺だろう? と嗤う。
「えー、そんなもったいない。わたしが良いって言うんだからもっとたくさん使えるようにしてくれればよかったのに。」
「いや、だから聞かれていただろう? って聞いてなかったんじゃないか・・・」
「え? 何が?」
「魔道具で奴隷紋を入れるときに能力はどの位使えるようにするか聞かれたかと思うが?」
「そうだったかな?」
わたしはその時の記憶を思い出そうとするがテンパってたせいか何やらごちゃごちゃと説明されてやたらとサインをさせられた気がする。
もしわたし自身のの奴隷契約書が其処に挟み込まれていても気が付かなかったかも
(;゜∀゜)
その事に思い到って若干顔色が悪くなったわたしに気がついたのかディーは
「奴が悪徳奴隷商でなくてよかったな?」
そう言ってワルイ笑みを浮かべた。
ちぇ、ごもっとも何だけどね。ちょっと拗ねたくなる。
「反省しました。じゃあ1回奴隷紋刻んじゃったら書き換えとか出来ないの?」
「出来るぞ。但し金が掛かるが。」
「うぇ、ここでもお金か。でもしょうがない自分がボケボケしてたのが悪いんだから授業料だと思って払うしかないよね。」
「わざわざ書き換えるのか?」
「だってディーの魔法が無いと不便なんだもん。」
わたしは魔法なんて使えないしね。
「買った奴隷商の所なら1度だけ無料で書き換えてくれる。」
「ホントに!? ラッキー!じゃあ次はドランだね。」
そんでもって書き換えてもらうのだ!
「で、ディーは制限掛けられ無ければどこまで出来るの?」
「鬼人の種族特性に 《身体強化》 《剛力》 《雷属性魔法》。竜人の種族特性は《外殻強化》 《咆哮》《風属性魔法》。後は生活魔法の《洗浄》《灯》《着火》。技能は剣術、体術、歩法、魔力錬成。 」
・・・聞くだけでも35万ペレで買える奴隷のレベルじゃないのが解るよ(落涙)
「へー、凄いじゃん。じゃあドランに行ったらそれ全部解放してもらおう。」
わたしはなるべくおバカなふりして色々な事実に気が付かないふりをしなくちゃいけない。
「チカ、奴隷の能力を抑える意味は言っただろう、それは危険だ。」
「主人の脅威にならないように? 今更何を言ってるんだか。」
「チカ。」
咎める様にディーはわたしの名を呼ぶ。
「ディー、わたしは弱くて脆くて非力だよ。能力を抑えられている今のディーでも簡単に殺せるんじゃない? だからディーの能力を解放しようがしまいがわたしにとって大した違いなんてないの。それよりディーの能力が増せば守られるわたしの安全性も上がるのよ。ディー、あなた能力解放したらこの前のフォレストウルフの群なんか脅威でもなんでもないんでしょう?」
「・・・」
渋々無言でディーは首を縦に振った。
「じゃあこの話は決定。いいわね?」
「わかった。」
このあとはとりとめのない事を二人して話題にしながら食事を取り、食べ終わるとディーは騎獣の世話をしに行った。(料理で出た野菜くずや魚のアラを渡しておいた。)
わたしはディーがいない間に着替えなど男性の目に触れたら恥ずかしい諸々を済ましておく。乙女には色々あるのよ!
何となく月よりの使者が来そうなので下着をそれようにしておいた。
実はこっちに来てから着替えと共に真っ先に買ったものだ。こっちでは普段の下着はズロース(提灯ブルマー)何だけど、こういうときは下帯(紐パン?)みたいなものに不思議素材のあて材を使うのだ。
不思議素材のあて材は薄いシート状で蒸れも臭いも殆ど無いとの事だ。使い終わったらトイレにそのままドボンしていいんだそうだ。で、この不思議素材の原材料はスライムを天日干しにしたものだそうでぎょっとしました(汗)
一応パジャマ代わりにしている男物の貫胴衣に着替え着ていた物を畳んでまとめておく。さっき食事に使った食器も重ねて置く。
こうしておけばディーの洗浄魔法は範囲内にあるものは全部まとめて1回で綺麗になるのだ。
なんか節約主婦にでもなった感じ(笑)
で、戻って来たディーに洗浄をかけてもらっておやすみなさい~
「・・・カ、チカ?」
何時頃なのだろうかディーに揺り起こされる。
「何? なんかあった?」
「チカ具合悪いんじゃないか?」
「? 何ともないけど?」
「待て、灯り入れる。」
部屋に備え付けのランプを付けたようでぼんやりと明るくなった。
「で、どこか怪我してるんじゃないか? 血の臭いがするぞ。」
え、えっと、それって・・・
思い当たる節はなくもない(汗)
どうしようかと取りあえず起き直ってと体勢を変えたら血が降りた。
「チカ! 大丈夫か!」
焦った様子で近寄られて
「だ、大丈夫‼ 何でもないから!」
「何でもないわけあるか! 内臓か? 何処だ? 何処から出血してる!? 痛くないのか!?」
お腹あたりに顔を近づけられてスンと臭いを嗅がれた瞬間に
「どこ嗅いでんのよ‼」
と思わず蹴り飛ばしてしまった。
「♂※*☆☆≧≦※☆★★!?」
中々イイ所にヒットしたらしくディーは下半身を庇って踞った。
「どこも何ともないわよ‼ ただの生理よ‼ 月経‼ 経血よッ‼ 」
肩で息してベッドの上に仁王立ちで叫ぶ!
「もう! ホントに! なに言わせんのよ‼ この夜中に!」
ディーは青くなったり赤くなったり顔色を変えて最終的に赤くなり項垂れた。
「ディー、そこに正座。」
ビシッと床を指差して正座させる。(正座が通じたのには驚いたけど)
「いい? 女性にはね、色々とあるの。それを一々口に出さないの。察しなさい。まったく小学生の男子かってのッ。もっとデリカシーってのを覚えなさい!」
「すまない・・・」
「・・・以後気を付けるように・・・」
ハァとため息をついて気まずい雰囲気で寝直した。
ディーのデリカシーの無いのも何だけど、チカも大概だよね。
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