8 テクヨの街にて その2
8 テクヨの街にて その2
宿屋は一泊一部屋2千ペレ。6畳一間ベッド1つが置いてあるだけ。トイレは男女別で共同。炊事場は外で屋根付きだけど壁がない。キャンプ場の炊事場みたい。薪は一束100ペレ。
今回は10泊程する予定なので 、一旦部屋に入ってストレージの中のものを整理する。
1 自転車 は出すスペースが無いのでこのまま。
2 スーパーの袋 4つ
3 リュックサック 1つ
4 木箱〈魚〉〈キッチン用品〉〈食材〉
5 水樽 1つ
6 フォレストウルフの牙 27個
スーパーの袋の中身は日本からの持ち込み品で売れそうになかったものが入っている。
米酢、オリーブオイル、赤味噌、みりん、めんつゆ、三温糖、あら塩、胡椒、醤油、そして米5kg。
それとこっちに来てから買った着替え。わたしとディーで1袋づつ。
今使う分だけを出してディーに持ってもらう。
ジャガイモ4つ。タマネギ2つ。ニンジン1つ。とりむね肉みたいのを2つ。牛乳を瓶ごと、バターをピンポン玉半分くらい。小麦粉をコップ1/4。両手鍋、片手鍋、ナイフ、木杓子、レードル、まな板、カフェオレボール2つ。
塩と胡椒は売らないで少し残しておいた日本からの持ち込み品。
あら、以外に大荷物? まぁ持つのはディーだから大丈夫か。
「ディー片手鍋にお水汲んできて、そのあと竈に火を入れてちょうだい。」
わたしはジャガイモの皮を手早く剥き4つ割りにする。ニンジン、タマネギは火が通りやすいように粗めのみじん切り。
鳥むね肉みたいのは 《ドード》と言う生き物の肉だ。煮込んでも肉が固くならないので煮込み料理にはコレが定番らしい。
なぜかディーはどんな動物なのかハッキリ教えてくれなかったけど。
一口サイズに切ったら竈に鍋をかける。
「まだ火は強くないぞ?」
「いいのよ。最初は弱火で。」
鍋にバターを入れて木杓子でのばし肉を投入。全体に焼き目がついたらタマネギとニンジンを入れてよく炒める。タマネギが透明になってきたら小麦粉を振り入れてよく馴染ませる。
ディーが汲んでおいてきてくれた片手鍋の水を野菜にかぶるぐらいまで入れジャイガを投入。
本当だったらここでコンソメ入れるんだけど無いので素材の旨味が出るように水は少なめ。
鍋にこびりついた小麦粉をこそげ落とすように木杓子で混ぜたら蓋をして沸騰するまで放置。鍋をまぜるのと火の番をディーに任せてもう1品。
辺りを見回して誰もいないのを確認したら鯵を2匹取り出す。体長約30cm弱中々立派な鯵です。
平皿を2つ出し1つに小麦粉を出す。塩と胡椒も出したいのだが入れ物がない。しょうがない平皿に塩と胡椒を少しずつ出しておく。
まずは、鱗をこそげ落としてぜいごをとる。頭を落として内臓を潰さないようにナイフで腹を割いて内臓を取る。2匹をそこまで処理したら
「ディー、これに洗浄かけて。」
とキレイにしてもらい背中側から中骨にあたるまでグッとナイフを入れたら骨に沿って切っていく。切れたら今度は腹側から、最後に尾っぽの方から中骨の上を切ると半身がはがれた。
裏返してして同じように捌いて鯵の三枚下ろしが出来上がる。
でたアラは後で騎獣くんにお裾分け。カレは雑食で大抵のものは食べられるそうだ。お世話はディーに任せっきりだけど。
2匹を三枚下ろしにして塩胡椒して小麦粉をはたく。
片手鍋にオリーブオイルを引いて4枚並べると竈にかける。
焼き色をつける間に両手鍋の方の様子をみ、ジャガイモが煮えてたら、牛乳を多めに入れる。ミルク煮みたいな感じかな。塩を少々味をととのえてよくかき混ぜてとろみがでたら出来上がり。
両手鍋を収納して場所を空けると片手鍋の様子を見る。
いい感じに焼けてきたので木杓子でひっくり返してもう少々。
お茶が飲みたいなと思ってもヤカンもないしお茶の葉もない。
明日にでも買い足そう。え~、小皿、ヤカン。
とりあえず今日の飲み物は、そういえばクワエでワイン2本買ったな、あれでいいか。西瓜も少し切ろうか。
移動中の野営の時やすぐに出発するような泊りの時にはゆっくり飲んでる時間なんてなかったからな~。
そうこうしている間に鯵が焼ける。平皿に移して、使ったものをディーに洗浄してもらって収納して片付ける。
ついでだから水樽の水も交換して満杯にしておこう。もちろん汲み上げるのはディーだけど。ほらわたしって非力だし(笑)
部屋に戻って料理を出そうとするがテーブルもないよ。ま、いっか。床で。
「ディーこの辺に洗浄かけて。」
「かけるのはいいが後1回位しか魔力持たないぞ。」
「え? え~っ。じゃあ寝る前にかけてほしいからいいや。」
ベッドを壁のギリギリまで移動してもらって直接床に鍋ごと出す。まな板出して固い黒パンザクザク切ってもらって、鯵のムニエルとワインを出す。
「ディーも飲むでしょ?」
「・・・子供に酒はまずいだろ。」
「ディーってまだお酒飲んじゃいけない年なの!?」
そんな大きななりしてて!?
「いや、俺じゃなくてチカがだよ!」
そう言ってわたしの手からワインの瓶を取り上げた。
「・・・ディー、あんたわたしの事いくつだと思ってんの?」
「商業ギルドに仮でも登録出来るんだから少なくとも13はいってるだろう?」
はい、中坊認定受けました(笑)
日本でも散々言われてたし今更怒ったり不愉快になんかなら無いけどね~。
「アイテム収納ワインのコルク栓。」
そう言うとワインのコルク栓だけが消えた。これで飲める。
「チカ。」
ディーが咎める様にわたしの名を呼ぶ。
さてどうしたものか。きっとわたしがいくら説明しても信じないし納得しないんだろうな。日本だったら運転免許証提示で一発納得だったんだけど。
あ、あったよ。
わたしはリュックサックを出すと商業ギルドでつくったギルド会員証を出してディーに渡してその手からワインの瓶をもぎ取った。
「え、え?えぇーーーッ!?」
ディーはカードとわたしを何度も見直して驚愕の声を上げた。
「嘘だろ!?」
「ギルド会員証に虚偽の記載は出来ないは知ってるでしょ? はい、返して返して。」
わたしはディーの手からギルド会員証を引ったくるとリュックサックにしまって収納した。
これ無くすと再発行に10万ペレかかるのよ。無くさないようにしまっておかねば。
「24って俺より年上・・・ いや、エルフ族やリリパット族なら、いやでも人族だったし・・・」
なんか頭抱えてブツブツ言ってるし。そんなに気になるかな?
日本では夜11時以降にファミレス行くと必ず身分証明書見せてくださいとか、居酒屋で入店拒否とか、夜一緒にごはん食べに行ったら男友達が職質にあったりとか、お前といると女子にロリ男キショイと蔑まれたとか、会社の上司が援交を疑われたとか、女友達が娘さんですか?と聞かれてあんたとは二度と一緒に買い物行かないとキレられたりとかあったな~。
本人より周りの方がダメージなぜか負うのよね~。
地味に嫌だったのが居酒屋でお酒頼む度に他のお客さんに注意されたり、怒られたりがキツかったな。
そういう人たちってお節介だけど見ず知らずのわたしをわざわざ心配して言ってきてる訳だから根がいい人なのでホント申し訳なかった。
のでいつの間にか家飲み派になったんだよね。だってお酒好きなんだもーん。
ビールはキリンのラガー。バーボンはイエローストーン、ウイスキーならジャックダニエルかジョニ黒。日本酒なら高清水。焼酎なら黒霧島。
ってな位お気に入りがあったほどには酒好き。バーのカウンターで飲むのが夢だったんだけどいかんせスツール高くて座れない。さすがに子供みたいに抱っこされて座らせてもらうのは日本では嫌だって。
こっちでは日常的にディーに抱えられての移動だけど不思議と嫌悪感ないのよね。
何故に?
あ、あれか。合法ロリ萠~とか下心が透けてないからか。
コップにワインを注いで口をつける。酒に桃?みたいな香りが微かに漂う。味はワインにしては若いな、炭酸の抜けたシードルみたい。度数もそんなに無いかな。フルーティーで飲みやすい。
「はい、ディーも飲むでしょ?」
コップを持たせて注いであげるとしばらくコップを見つめたままなんか考えているようだったがひとつため息を付くとディーも口をつけた。
「飲みやすくて中々美味しいね。」
久しぶりのアルコールに機嫌が良くなってへらりと笑うと
「そうだな。」
とディーも口角を上げた。
笑った? うわぁ~ 初めて見た。
なんとなく嬉しくなって
「ほらほら、ご飯も食べて。」
とこっちに来てから初めて作った料理をすすめた。
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