7 テクヨの街にて その1
7 テクヨの街にて その1
皮剥ぎを終えてその日の昼過ぎウキナに到着しウキナギルドに依頼品を納品し毛皮を取り扱う店を紹介してもらい買い取り査定をしてもらったらもう夕方で夕食食べたら二人して爆睡してしまい気が付いたら翌日のお昼近くでした。
毛皮の査定は枚数があったので翌日に精算との事だったので元々ウキナに連泊の予定だったせいか安心して寝過ごしたようだ。
ディーは前の日からあんまり寝てないから、少し休んだ方がよかったしね。
テクヨに向かうのは翌日の早朝と相成りました。
そして今はウキナを出て次の目的地テクヨに向かう途中です。
ウキナについて依頼の荷物を渡して、フォレストウルフの毛皮を売って締めて61万5千ペレ。
内訳としては依頼達成金7万5千ペレ、フォレストウルフの毛皮が1枚2万ペレ×27枚で54万ペレ。
はー、これでちょっと息がつける。
フォレストウルフに襲われたときには死にそうに怖かったけどね。
ハンターはハイリスクハイリターンなんだね。こりゃ1回でかい仕事で成功したら止めらんないだろうな。
わたしはちらりとディーを伺った。
わたしはこの所ある疑問を持っている。
『ディーはなぜ奴隷落ちをしたのか。』
ドランでディーを買った時の値段はなんと35万ペレ。
騎獣の買い取り価格よりも安かったのだ。
わたしはその時まだこちらに来たばかりで貨幣の価値がよく解ってなかった。
だってさ、198円の1kgの砂糖が5万ペレだよ?
砂糖3つで15万、塩1つで5万、残り香辛料で25万で45万ペレ。
だから人間一人が35万ペレが安いのか高いのか判らず、買えるから買ったのだ。
だから今になってよく考えてみるとディーの値段はおかしいと思うのだ。
ディーはたとえ右目を失っていてもそれをカバー出来る身体能力がある。
借金奴隷だから犯罪者ではない。
ハンターの仕事をしくじったと言ってもハイリターンの仕事だ少し位貯蓄があった筈だ。
借金奴隷は借金額+奴隷商の利益+諸経費が販売価格だそうだ。
となると借金の額自体はさほど多くないはず。
きっと払えない額じゃない。
なのに何で奴隷になんてなっているかな?
あぁダメだ。考えていると頭痛くなりそう。
それにもしディーがわたしの奴隷で無くなったら今後わたしの生活は成り立たない。故にディーには悪いけどわたしの奴隷のままでいてもらわないと困る。
だけど現代日本に育ったわたしとしては自分の都合だけで人ひとりの人生を奴隷と言う立場に置いて利用している罪悪感とかで
『あぁーッ! もうッ! 』
とかなるのだ。
「どうした?疲れたか。」
「ううん、ちょっと考え事。」
「何を?」
まさか聞き返されるとは思ってなかった。あー、でもディーはデリカシーとかとは無縁だったわ。
「あー、天気が悪くなってきたなって。」
本人にあんたの事だよと言えるわけもなくわたしは適当なことを言う。
「そろそろまとまった雨が来そうだ。」
「わかるの?」
「天気が悪くなる前にはこっちの目の奥が痛むからな。」
そう言って眼帯をしている側をしめす、
「そう、じゃあテクヨについたら少し休暇にしよう。雨の中移動はわたし嫌よ。」
「金、大丈夫なのか?」
「そんな良いとこには泊まれないけど、まぁ大丈夫よ。」
ディーの体調もだがわたし自身もそろそろ毎月の月よりの使者が来そうだし1週間位なら大丈夫だ。
いざとなったらテクヨの街の中で仕事したっていいのだから。
途中野営を2回して今回は何事もなく無事テクヨに到着する。
さて今回は十分海から離れ川からも街1つ分の距離があるのでウキナで仕入れたお魚を売りたいと思います。
今回テクヨ入りしたのが朝だったので午前中までの露店申請が間に合ったので翌日に露店が出せる。
ので騎獣を商業ギルドの裏に預けてざっと市を見てお魚さんの値段をリサーチしておこうと思う。
テクヨの街は背後にレチ山が在りそこから採れる鉱石が街の経済を担っている。
街は鍛冶屋が多く至る所から金床を叩く音が聞こえる。
「ディー剣の研ぎ頼んだ方がよくない?」
というかその全然切れない剣ってどうにかした方がいい。
わたしは生まれてこの方包丁以外の刃物なんて持ったことがないが美容師をしている友人が言うにはMade in japanの刃物は切れ味が違うそうだ。
日本の刃物を製造している会社は元々日本刀製造のノウハウを有しているところが多く海外製の鋏より全然切れ味が違うと熱く語っていた(お高いらしいが)。
ディーの持っている片手剣はドランでディーがこれでいいって言って無造作に選んだ安物だ。7万を値切って4万5千で買った。
が、対フォレストウルフ戦では斬るというより打撃の勢いでのブツ切り的で、これ剣である意味あるの? って思った。
あ、でも木は切れてた。
ので研いでもらえば少しは切れ味よくなったりしないかと思ったんだが。
「『とぐ』? それは聞いたことがないな。」
「え? 研がないの? 包丁みたいに。」
「『ほうちょう』?」
「えーと、料理に使うナイフ? 」
「あぁ、鋭利にするとかそういうことか、しないな。そもそもこれは斬るとういより突くとか振り回して叩きつける様に使うものだ。」
「あ、そう。じゃあ手入れとかどうしてるの?」
「血を拭って錆を磨いて落として錆止めにオイルを拭いとく位だな。」
「そんなんでいいの?」
「そんなものだな。」
「じゃあじゃあ、もうちょっといい剣買えば?」
「値段が高くなると実用性とはかけ離れていくが?」
「なにそれ。じゃあ剣を選ぶ基準って何なの?」
「重さと長さと重心。」
「切れ味は?」
「それよりも頑丈さだな。」
「・・・そう。(夢が無い!)」
まぁ、使う本人がそれでいいって言っているんだからいいけどね。
あ、そう言えば鋏を熱く語った友人が日本刀の切れ味は最初だけって言ってたな。時代劇で無双状態で斬っているけどあれは嘘、斬ったら脂が巻いちゃってどんどん切れ味が鈍るんだよ。包丁だって肉切ると脂で切れなくなるだろ?、あれと一緒だよ。と言ってたな。
つまりディーの言う実用性ってそういう意味なのかしらね。
剣に関しては必要なしとのことだったので金物屋を覗く。
鍋や料理用のナイフ等の調理場用の物を扱う店や、蝶番やドアの取っ手のような小さな金属部品を扱う店や、ネジや釘、その他建築に使うような金属資材を扱う店などで中々面白かった。
その内の1つで調理場用の物を扱う店に入ってみる。
大小の鍋、片手鍋や両手鍋。寸胴タイプからミルクパン。パエリヤ鍋みたいのまであるが中華鍋や玉子焼き用の長方形のフライパンとかは無い。
ここで少し深目で直径25cm位の両手鍋を1つと18cm位の片手鍋1つ、レードルを1、鉄串を10本、料理用のナイフを買った。〆て1万2千ペレ。
大きな木箱に入れてもらいキッチン用品を全部詰めてストレージへ、そうすると木箱1で収まるのだ。99種類しか入れられないのでちゃんと考えないとすぐにいっぱいになってしまう。
次は食器だ。
ここでの食器は木地の物がほとんどで、コップ等が金属製の物もある。
カフェオレボール位の大きさのお椀 (?)を4つ。20cm位の平皿を4つ。コップを4つ。スプーンとフォークを2つづつ。木杓子を2本。まな板を1つ。菜箸とトングは無かったのであきらめた。
最後は食材だ。基本の野菜ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、キャベツ。名前が違うので宿屋などで食事をとったとき似た味のものをディーに教えてもらっていたのでそれを買う。
牛乳とバターも買う。固くて黒い丸パン5個。あと小麦粉と大豆みたいな豆。
それと肉。も同じように味の似たものを買う。原形を見るとギョッとするものもあるが切ってしまえば原形なんてワカラナイ(汗)
「ねぇディー。生魚売っている店が無いんだけど。」
買い物しながら明日の鮮魚の値段をリサーチしようと思ってたのにどこにもない。あるのは干物のような干したものばかり。
「すみません、干してない生魚は無いんですか?」
探しても見つからなければ聞いた方が早い。
わたしは干物を売っているおじさんに聞いた。
「この辺は海からも川からも離れてるから生魚は食べる習慣がないんだよ。お嬢ちゃん達は他所から来たんだね。残念だけどここいらじゃ売れないから扱おうって奴はいないよ。」
「そうなんですか、ありがとうございました。」
聞いて愕然、なんてこったい!
よく考えてみれば当然か。
海からも川からも離れてるということは日保ちしない鮮魚をそこから運んでくる運賃やらを考えたら当然割高になる。高ければ晴れの日でもない限り買わない。わたしの仕入れたお魚は鯵や鰯、鰤等だ。いわゆる大衆魚。晴れの日には向かない。
しかももはや空には重く雲がかかってきている。天候不良に加え元々需要も少ないならば露天を出すだけ経費の無駄だ。
「ディー、ギルドで明日の露店を取り消す手続きしに行くわ。」
わたしはそう言うとディーに抱えてもらって急いでギルドに行ってもらう 。残念ながら自分で走るよりディーに抱えて走ってもらった方が全然速いから。まだお昼の鐘は鳴ってないから急げばキャンセルが効くかもしれない。
急いだかいあって露店のキャンセルはできた。ついでに炊事場がある宿を教えてもらいギルドの裏に繋いでおいた騎獣を連れて宿に向かった。
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