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3 クワエの街

3 クワエの街


騎獣に乗って途中一泊し翌日午後に磯臭いクワエの街に到着した。そのままギルドで納品を済ませクエスト完了です。


クワエは港街なので新鮮なお魚が仕入れられたらいいなと思ってる。


わたしの《ストレージ》の能力は中で時間経過しないので鮮度を保てるのだ。

この後山側の街に行くクエストがあればそこで売ってみようと思う。


そしてクワエの街ではネイシャで仕入れたあの布を売るつもりだ。なので納品をしたついでに露店の出し方をギルドで確認した。


商業ギルドの登録者であれば個々の街で露店を開くことができる。


前日の午前までにギルドにて露店の許可と場所をもらい日数の契約をする。契約時に場所代と露台の料金(一日3000ペレ)を支払う。


今はもう午後なので申請しても露店を開けるのは明後日になる。今回はとりあえず1日だけだ。


本日の宿に入り明後日売る予定の布地を全部出す。


「こんな端切れ売れるのか?」


ディーは布を仕分けしながら首を捻る。


「まぁ、普通にやってたら売れないだろうね。」


実際お姉さんの露店でも売れてる様子は無かったし。


「大丈夫なのか?」


「まぁ、大丈夫よ。たとえこの街で全部売り切れなくとも腐る物じゃないしまた他所の街で売れば良いだけよ。」


話をしながら布を赤系、黄色系、青系、黒系に分けていく。それを其々の色系を偏らないように三枚一組にまとめる。


相手に自由に色を選ばれると偏った色が残ってしまうのを防ぐためだ。


まとめるのは途中の農家で貰った藁を三網にした紐だ。この布は不思議素材の糸で織られているため端がほつれることも、折り後がつくことも、縛りにくいこともない。

うーん、ファンタジー素材万歳。


49組を作って、残り一組は見本で使用する。あ、明日店開きの前に見本に使えるもの買わなきゃ。



次の日わたしとディーは早起きして朝から市を見に行った。

市の様子も見たかったし、何よりお魚を仕入れたい。


坂を下って海に向かうと程なくして港に着いた。


入り江になっている地形を上手く利用しているが意外なほど護岸工事がちゃんとなされた立派なものだった。

どうやらこちらの土木工事は土魔法使いが請け負っているので重機がなくても大丈夫だそうだ。


ファンタジー万歳(ノ゜∀゜)ノ


市はじーちゃんばーちゃんたちが地面にござ引いて色々な物を並べてる。


鮮魚に魚の干物、わかめに昆布、野菜に果物。


変わっているところで《氷》と書いた幟の下におじさんが座っているのとか。

何なのか様子を見ていると木箱に鮮魚を詰めた人がそのおじさんにお金を払って氷を詰めてもらっていた。

おおーッ!? とじっくり見ているとわたしが子供だと思ったのかおじさん得意気に傍らに置いてある水瓶から柄杓で水を掬うと何やら呟きながら柄杓を傾けた。

するとなんということでしょう! 柄杓から零れ落ちる水が氷になっているではありませんか!


思わず拍手するとおじさんはニコニコと手を振ってくれた。


「あのおじさんは魔法使いなのね?」


「そうだ、ああやって氷を売ってるんだ。」


「いいわね~、元手が水だけって儲かるでしょうね~」


「まぁ、魔力は無尽蔵ではないから魔石とか補助に必要だし、思うほど儲からないと思うぞ。」


何だか新しいwordが出てきたぞ。


「魔石?」


「魔力が固まって結晶化した物だ。」


魔力ねぇ・・・


「どうやって手に入れるの?」


「魔物化した獣はその心臓が魔石化しているので倒せば手に入る。」


「魔物化って?」


「魔力溜まりで長年暮らすと徐々に体に魔力が溜まって魔物化するらしい。」


「ふーん、そうなんだ。」


わたしは気の無い返事を返した。だって、魔物化した獣なんかを倒す機会なんてあったら逆に困るわ。


そして散々露店を冷やかして鯵や鰤のような鮮魚を木箱一杯を1000ペレで買い、昆布とワカメなんかも買った。




翌日、お天気が心配だったけど快晴だ。ちょっと暑いぐらいよしよし。


ディーと一緒に大きな西瓜(?)とワイン瓶2本を買って露店の決められた場所に行く。両隣の方にご挨拶をして露台をストレージから出す。布は既にセッティング済みだ。

右はオレンジみたいな果物を売るお店で、左はネギの様な野菜を売るお店のようだ。


わたしは露台の前に出で一枚の布を片手に声を張った。


「お買い物の皆さまちょっとお時間ございましたら足を止めてご覧ください。

取り出したるは何の変哲もない一枚の布。この布実は大変重宝でしてこれこの様に端をキュキュと結びますとあら不思議こーんな大きな西瓜が簡単に持ち運ぶ事が出来るんですよ!」


ディーにちょっと手伝ってもらって西瓜を手提げにした布に詰め込むと幾人かが足を止めてくれる。


「さてさて、この布西瓜を包むだけじゃないんです!」


ささっと、西瓜を出して今度は2本の瓶を包む。


「ちょっと結び方を変えればこれこの様に瓶2本を提げて持ち運ぶ事も出きるんです。」


奥様方がちょっと興味深げにしている。


「しかも使わないときにはこれこの通り! 腰に巻いておけばちょっとしたアクセントにも成りますし急にお買い物のお荷物が増えたときにも慌てず騒がずちょちょいのちょいでお買い物バッグに大変身!」


今度はお買い物バッグの結び直す。よしよし、だいぶ食いついてきたぞ。


「さらに、こちらの布ただの布とはちょっと違う、ケミカラ妖虫糸で織られているため丈夫! 扱いやすい! そしてこの染めは染め物の街ネイシャで染められた一点物! 今を逃したら同じデザインに巡り会うことは二度と無い代物!」


ほーら、奥さま達一点物とか限定品とかに弱い。


「しかも! この布1枚500ペレのところ今回に限り3枚で1000ペレ! 3枚1000ペレでご提供します! 3枚あれば1枚はお買い物バッグに1枚はこれこのように陽射しを遮るストールに最後の1枚は予備に腰に巻いておけばキュッとくびれた腰回りに旦那さんも惚れ直しちゃうよ!」


お客さんからドッと笑い声が起きる。


「さぁ! 3枚1000ペレ! 3枚1000ペレよ! いい色は早い者勝ちよ!」


そう言い切ると露台の前をあけお客さんを誘う。


「見せてちょうだい!」


一人がそう言えばシメたものだ。我も我もと購入してくれる。


1000ペレなのでお釣りも要らない。会計はディーに任せてわたしは購入してくれたお客さんに詳しく結び方を教えていく。


この一回だけで28組を売り切った。


そして夕方までに見本に使っていたものを含めて50組全てを売り切った。



ギルドに露台を返して宿に戻るともう夜だ。


「仕入30000の経費が3000で売上が50000で、儲けは17000か。う~ん、疲れたわりに割に合わないかも。」


ベッドの上で収支を勘定しているとディーは


「そうか? 危険な事もなくていいんじゃないか?」


「ディー、甘いよ、17000ペレじゃその日暮らしだから。」


「そうなのか?」


「そうでしょう? まず宿代朝夕食付き二人で7000、お昼が1000。残り9000だよ? 明日一日仕事がなかったら明後日からご飯も宿も無くなるって事だよ?」


「いや、ほらでも騎獣を売った金とか、クエストの達成金とかあるんだろ?」


わたしはハーッとため息を付いた。

今何となくディーが借金奴隷になった経緯が垣間見えた気がした。


「確かに有るけどさ騎獣を売った金なんて臨時収入だし、クエストだって毎回都合がいいものがあるわけじゃないし、何日も仕事に溢れた挙げ句無理目なクエスト受けて失敗して違約金払えなかったら主従揃って奴隷落ちに成るのが目に見えているんだけど?」


わたしがそう言うと思い当たる節があったのかディーは気まずそうに目を反らした。


「やっぱり運送依頼をもう少し計画的に考えるわ。ディー、この辺りの地図ってどこに行けば手に入る?」


「あぁ、どのギルドででもあると思うが高いぞ?」


「そうなの? じゃあ明日はギルドに朝一で行って聞いてみよう。」


わたしは広げていた持ち物をストレージしていつものようにディーに洗浄魔法を掛けてもらってベッドに入った。


「おやすみディー。」


ランプを吹いて消してしまったのでディーがその後どんな顔していたか知らなかった。





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