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2 わたしのお仕事

2 わたしの商売



翌朝食事を取りながらディーが


「もし本格的に運び屋をやるなら騎獣を一騎残しておいた方が良い。」


と言ってきた。


「どうして?」


「運び屋の依頼には至急って札が付くことが多い。その時に徒歩だと間に合わない。3騎のうち足の一番速いのを残しておくことを俺は奨めるが?」


「解った、わたしじゃどれが足が速いのか判らないからディーが選んでくれる?」


「あぁ、ギルドに行く前に済ませよう。」


宿の騎獣舎に寄って3騎の騎獣を並べて見比べるがディーによると3騎とも大して変わらないようだ。

ので心持ち後ろ足の腿が太いのを残すことにした。


2騎の騎獣の手綱をディーが引いて騎獣屋まで行って売り払う。


1騎50万ペレ、中古の軽1台分ってとこか。2騎で100万ペレ。日本円にして約100万位。えへへ、ボロ儲け。これを元手に試しになにか仕入れをしてから次の街に行こう。


わたしが9日前に跳ばされた近くの街はドランという街でそこでディーを購入して商業ギルドで依頼を受けてこの街ネイシャにやって来た。

ドランから南西にネイシャはある。ドランは機織り物が盛んな街だった。

そこで受けた依頼は白地の反物200の輸送だった。これはネイシャの商業ギルドに納品すれば依頼は完了だ。


商業ギルドに行き反物を納品して依頼料を貰った。8万ペレ。最初に日本から持ち込んだ物を売り捌いてボロ儲けしたので割りが良いのか悪いのかのか判断が付きかねる。

ギルドに併設されている喫茶室みたいなとこでディーとお茶しながら次の仕事の相談をする。


「こういう中途半端な量は利益が出ないから本業の輸送業者は引き受けたがらない、大抵拡張鞄を持った冒険者が片手間に受ける位だ。」


「そうなんだ、じゃああえてその中途半端の依頼狙いでいこうかな。」


「いいんじゃないか、チカの様な子供に仕事を取られたら妬むのもいるかもしれないしな。」


あぁ、そういうのいそう。地味に目立たず穏便にこれわたしのモットーです。


「次どこ行こうか、依頼見てから決めた方が良いかな?」


ディーに頷かれたので依頼表の貼ってあるボードの方に移動した。



◇ 移送依頼 大豆60kg×500個 七月三日までオサカ商業ギルドまで配送 9万ペレ


◇ 移送依頼 至急 燕麦100kg×300個 六月二十五日までウキナ商業ギルドまで配送 10万ペレ


◇ 移送依頼 ロカ芋10kg×10個 七月五日までクワエ商業ギルドまで配送 5万ペレ



移送依頼はこの三つだったからまぁ選ぶとしたらロカ芋だよね。

今日が六月十日だから期限も大丈夫。だよね?

思わずディーの顔を見たら大丈夫だって頷かれた。


ここの暦は1ヶ月が32日一年が13ヶ月で416日。1月から始まり13月で終わる。一週間は8日。曜日という概念はないらしい。因みにわたしがここに来たのは5月32日


受付で依頼を受理してもらい裏の商品管理室でロカ芋を受け取った。


「ネイシャからクワエまではどのくらいかかる?」


「騎獣もあるから途中のサーザンで一泊で三日あれば大丈夫だろう。」


「解った、クワエってどんな街?」


「海の街だな。」


「海! あるんだ。お魚とか美味しいのかな? あ、海産物とかは?」


矢継ぎ早に質問して笑われた。


「じゃあ、クワエで何が売れると思う?」


「悪い、そういうのは俺はちょっとわからん。」


「そっか、そうだよね。んー、じゃあネイシャの特産品が何か聞いてみよう。」


商品管理室から受付に戻って聞いてみた。


「特産品と言えるのか判らないですが、ネイシャでは染色工房が多いですよ。納品していただいた反物は来月の品評会に出展する人達の統一規格反物でそれぞれが工夫した染め物を競い会うんです。」


「へー、面白そうですね。」


「えぇ、一般の方にも公開されますのでその日はちょっとしたお祭りですよ。是非御覧になってみてください。」


商業ギルドを出て市の立っている場所に向かう。街の一区角が常設の市になっていて大抵のものがここで揃う。

この世界というかこの辺りの街はどこも大体似た作りで外周を高い壁で囲い街の中心部に役所とかギルドがあり市がある。中心部が一番栄えていて壁際に行くほど安い宿や店がある。


「出発は明日でいい?」


「俺は構わないが、色々見て回りたいんじゃないのか?」


「うん、仕事受けちゃうと早く済ませないと落ち着かないんだよね。だからざっとでいいわ。」


何だか荷物持ったまま何日もいるのって落ち着かないんだよね。


そうこうしてるうちに市に到着です。

やっぱり食品が多いね。おぉ? あれはなんだ。ディーの上着の裾を握り締めて気になったものを片っ端から聞いていく。

すごい大きなスイカに似たものとか、ピンク色のレタスっぽいもの、日本のものに似ているのもあれば何なんだこりゃみたいなものもある。

市というよりTVで見た中東のバザールみたいな感じかもしんない。

奥に進んでいくと食品から雑貨日用品に代わり衣類やアクセサリーも置いている。

さらに進んで行くと布地や糸等のお店が固まっている。

この辺りのお店は屋台っぽくなく天幕みたいな感じ。四畳半位のスペースに布地の束が積み上がっている。


「すみません、これって切り売りしてくれるんですか?」


軒先で呼ばわったら


「うちは小売りはやってないんだ、他あたっとくれ。」


とけんもほろろに断られた。が予想の範囲内なので問題ない。

日本でも問屋街は一見さんや素人さんお断りが多いのだから。それに同じ布地が大量にあってもね~ 使い勝手に困るわ。

まぁ取りあえずここまで来たから端まで行ってみようとズンズン進んだ。

そして奥まった場所、天幕と天幕の間に押し込まれるように出ていた幌を張った屋台を見つけた。

屋台の台車には色とりどりの端切れがギッシリ載っていた。


「すみません~、これ広げてみてもいいですか?」


「はい、どうぞ。」


側にいたお姉さんにお伺いをたててから商品に触れる。


ふわり 広げると大きめの正方形。某有名ブランドのスカーフより大きい、ふろしき位かな?


布地の糸はなんだろう? 綿にしては滑らか、シルクにしては光沢がない。ポリエステル? キュプラ?


「この布地は何で出来てるの?」


「これは、えーとケミカラ妖虫糸ですね。」


おっと! ファンタジー材料でした(笑)


「これ一枚いくら?」


「これは500ペレですね。」


ふーん、染めも綺麗だしふろしきバックとかに良さそう。


「大きさはみんなこの大きさ?」


「えぇ、実は試し染めの布なので同じ色がないんです。」


そうかそうか、それは好都合。


「そう、じゃあたくさん買うから安くしてくれる?」


早速値切り交渉です。


「100枚ぐらい買ってくれるならお安くしますよ。」


お姉さんそう来たか、ふふんだがしかし


「いいわよ、100枚買うから2万ペレでどう?」


そう言ったわたしにお姉さんちょっと引き気味。


「さすがにそれじゃ布代にもならないですよ。4万ペレでどうです?」


100枚なんて枚数ホイっと買うなんて言うとは思ってなかったんだろう動揺がみえる。


「高いわよ、これ端切れでしょ。こんだけ積んであるんだから他に買い手ないんでしょ?25000で。」


ほーらほーら、積んどくだけじゃ一銭にもなんないんだよ~


「それを言われると、3万ペレですかね。」


図星だったのか一瞬お姉さんは言葉に詰まる。


「150枚なら3万出すわ。」


金額がネックなのか? 3万迄で売りたいとみた。


「わかりました。150枚で3万ペレでお売りします。」


おーい!? いいのかい?


「本当? じゃあ150枚もらってくわ。ディーもこれ10枚づつに数えて、お姉さんはうちらが数えたのを確認してね。」


ラッキー♥ こっちの人って計算に弱いのかしら?


「お姉さん128しかないよ?」


「あぁ、すみません。工房にはまだあるんですけど、どうしましょう?」


「う~ん、うちら明日には仕事でここ出ちゃうんだよね。」


「そうですか・・・じゃあ今から工房に来ていただけます?そうしたらお渡し出来ますので。」


「うちらはそれでいいけどお店閉めちゃっていいの?」


「えぇ、いつもお昼過ぎには店じまいなんで。ちょっと待っていただけます?」


「いいよ~」


気楽に返事してお姉さんが屋台を片付けるのを待つ。


幌の突っかえ棒をはずし台車の脇に乗せ幌をたたみそれも台車に乗せると台車に手を触れ


「収納」


と唱えると台車が消えてなくなった。自分以外の不思議収納ってびっくりするね。


お姉さんはお待たせしましたと言ってわたし達の先を歩き案内してくれた。


お姉さんの後について歩きながら、こっちの人って大きいんだなってしみじみ思う。お姉さんで170cm位かな。顔立ちは欧米人と日本人のハーフっぽい感じ。髪色は基本ブラウン系。青とかピンクとかのファンタジー色は見ない。金や銀は時おりいるけど。

ディーみたいに亜人種も少なくない。ディーは竜人種と鬼人種のハーフだし。あとは耳長人種(エルフ?)小人人種(ドワーフ?)獣人人種、妖人人種。とかいるらしい。


うん、ファンタジー(笑)


そんな事を思っているうちにお姉さんの工房に着きました。

なかに招き入れられて物珍しさにキョロキョロしていると奥に引っ込んだお姉さんの悲鳴が聞こえた。


「どうしました!?」


声をかけてからディーを先に立たせて奥に行ってみる。

奥は土間に大きな瓶がいくつも並んでいた。ここが染色の作業場だろう。その瓶の前に男が一人うずくまっていた。


「兄さん‼」


お姉さんが男の人に取りすがって叫んでいる。


「お姉さんあまり揺すらない方がいいですよ。」


ディーに男の人の様子を見てもらいわたしはお姉さんの腕を押さえた。


「えっ? え、なに?」


「もし頭とか打ってたりすると揺すると危険です。この方の名前は?」


「オリガですけど・・・」


「オリガさん、オリガさん、聞こえますか? 大丈夫ですか?」


わたしは彼の耳元で静かに話しかけ、ディーが手首を取って脈を診る。


「大丈夫生きてる?」


「大丈夫だ、出血をしている様子もないし呼吸も安定している。たぶん眠らされただけだ。」


「眠らされた?」


「ハンターが狩りに使う眠り玉の臭いが部屋に少し残っている。大型獣にも効くものを使われれば人間の昏倒する。念のために医者に見せた方がいい。」


「は、はい。」


オタオタするお姉さん。わたしとディーとお兄さんを見てどうしようとオロオロしてる。


「お姉さん医者はどこ? ディーに呼びに行ってもらおう。」


お姉さんは見ず知らずのわたし達とお兄さんを残して医者を呼びにいくのは不安だろうし、わたしは街の中を医者を探して走り回るには無理があり、でもディーはわたしから離れるのは何かあったときに駆け付けられないというのは不安らしい。


まぁ、当然の反応だわね。


結局わたしとディーで医者を呼びに行って戻って来たときに、染料が全部黒をぶちこまれてて、二人が絶望的な顔でへたり込んでたりちょっとした騒ぎがあったりして面倒くさかったが、参考になれば程度の日本の染色技法をちょっと話したりして宥めたりしてやっと残りの染め布22枚を引き取れておいとまできたときには夜空にお星さまが瞬いてました。



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