表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/29

17 ドランでの仮住まい

17 ドランでの仮住まい



ドランのギルド事務局では騎獣連れということもあって裏口からコッソリ街へ出してもらった。だってギルド事務局なんてお役所の偉い方の人達が仕事しているような感じで怖いんだもん。

いつも利用しているのは門から近い出張所だ。


「結局隊長は何でわたし達をあそこに呼んだのかしらね?」


「チカの勧誘だろ?」


「え? そうだったの? わたしなんか勧誘してどうするんだろう?」


「チカが送り込まれた者だったらあのバルディアにとってはかなりのメリットになるんじゃないか?」


「まぁそうだね。違って残念ってとこなのかな。」


わたしは肩をすくめた。


「チカ、本当にあの国に行かなくて良いのか?」


「うん。行っても肩身が狭くなりそうで。」


援助して貰うだけって何か心苦しいんだよね。わたしのステータスがあまりに低くて同情された訳だから。向こうに行ったって何か役に立てるような特技なんて無いし。

昔、児相とか里親さんの所でお世話になった時も良くしていただいたけどやっぱり気を使つかったし。


「そうか。」


ナゼかディーに頭を撫でられた。むぅ、子供じゃないぞ。


「今日はもう宿屋を探して休もう。なんか疲れた。」


まだお昼前なんだけど、ディーもそうだなと同意してくれたので宿屋のある区画へ移動した。


ドランの街は最初に来た街で何日かいて町中の配達の仕事をしたのである程度は位置がわかる。

ドランの街は全体が2m位の高さの石垣に囲まれていて、門から大通りが中央奥の富裕層の1区まで続いている。

多分この区画が一番最初に出来た所なんだろう。

そこから少しづつ街が扇状に区画が広がっていったようだ。

2区はギルド本部とか公共の施設が多い。住宅も広いお庭の御屋敷が多い。

3区は商会とか大店が軒を連ねている。高級宿屋もここだ。この辺りも小綺麗なお家が建っている。

4区は庶民的なお店や工場、住宅も小じんまりしている。

門から一番近い5区は雑多な感じで屋台や露店商、各ギルドの出張所手頃な値段の宿屋や長屋的な住宅もここの区画だ。


わたし達がどこ〇〇ドアで出てきたギルド事務局はずっと上の方なんで5区まで降りてきて宿屋を探している。

1ヶ月前に居たときに使ってた宿は安くて良いのだけど騎獣連れは泊まれないので別の所を探さないといかん。

ぼったく宿屋なんてのもあるので商業ギルドの出張所でお勧めの宿を聞きに行く。まだ時間はお昼前なので迷惑な時間じゃないだろう。


商業ギルドに着いて中を覗くと閑散としていた。


「こんにちは、今御時間いただいてよろしいですか?」


カウンターのお姉さんに声をかける。


「はい大丈夫ですよ。いかがされました?」


「騎獣連れで泊まれて炊事場が在るところでお手頃な宿屋を探しているのですが御紹介いただけますか?」


「ギルドカードはお持ちですか?」


「はい。」


わたしがギルドカードを出すとお預かり致しますねと言って預かられ、カウンターの下で事務処理をされた(?)のち返却された。


「ありがとうございました。カードをお返し致しますね。さて騎獣舎があって炊事場の付いたお手頃な宿屋ですね? 滞在日数はどのくらいを御予定ですか?」


「10日以上で後は未定です。」


「そういたしますと宿屋というより貸家ですね。一番金額が安いのは5区にあるギルド持ちの長屋ですね。これが1日3千ペレで1ヶ月で3万ペレ。長期になると少し割引になります。次が4区にある貸家ですが1ヶ月以上の契約になります。1ヶ月5万5千ペレ。どちらも備品が揃ってますのですぐに生活出来ます。」


「物件を見てから決めてもいいですか?」


「勿論です。今からご案内いたしますか?」


「お願い致します。」


まず来たのは商業ギルドの裏、通りを挟んだ向こう側の区画に10軒並んでいた。今空いているのは一番手前の右手側だそうだ。


簡素な門扉があってそのすぐ脇に騎獣舎。1頭しか入れられない広さだ。

家に入る引き戸があってなかに入ると土間、そこに炊事場とトイレ。ちゃんと水道がある!

一段高くなっているので靴を脱いで上がる。板の間にテーブルとスタッキング出来る丸イスが4つ。奥に引き戸で仕切られた部屋がもう1つシングルのベッドが2つと物入れ(押し入れぽい)。その部屋の奥には裏庭に出れる引き戸。。

裏庭は狭いのだけど物干しがあって洗濯物が干せるようになっている。板塀で仕切られているのでちゃんとプライバシーは確保できる。両側の壁は隣と共有なので窓はないので閉塞感はあるが気になるほどでもない。

なんか時代劇とかに出てくる町家みたい。


もう一軒見ないでもここに決めちゃっていいかな。ギルドにも近いし、屋台や露店商も近いし。


「ディーここでいいかな?」


「俺は構わないがこの辺の治安はあまり良くないぞ。大丈夫か?」


「この長屋はギルドの持ち物ですので家は門扉を閉めると中から開けない限り侵入不可の魔方陣が作動いたしますので女性一人での留守番でも安心ですよ。」


そう言われてわたしはここに決めた。


一旦ギルドに戻って契約手続きを済ませ鍵と寝具や炊事用品、掃除道具などの日用品を借り受け先程の長屋にとって返した。


ディーに2部屋を《洗浄》してもらってから部屋の中を整えていく。その間にディーは騎獣の世話をしている。

部屋の中が終わったら炊事場の竃に火をいれる。お昼ご飯の用意だ。


ここ何日か温かいものを食べる機会がなかったからスープを作る。テクヨで買っておいた食材で塩漬け肉と蕪のスープ。

それとドード焼肉、あと黒パン。

火が通りやすいものだから30分とかからずに支度が終わる。ディーが戻ったら二人でいただきます。


ご飯を食べ終わった後湯冷ましを飲みながら


「ねぇディー、わたしが帰った後どうする?」


気になっていたことを聞いた。


「どうって?」


ディーは何を聞かれたか一瞬解らないけど表情をした。そして得心がいったように一つ頷くと


「あぁ、不要になった奴隷は奴隷商で買い取ってくれるぞ。」


何て事のないように言った。


!!・・・・・・ Σ( ̄皿 ̄♯


「なに巫山戯た事言ってんだ! このッ! バカタレがッ!!!!!(怒)」


激怒したわたしがテーブルに乗り上げてディーを引っ叩いたけど、わたしは悪くない!


「どうして自分を物みたいに言うのッ! ディーは! ディーの人生はお金なんかに換算していいもんじゃないでしょう!」


思いっきり叫んだせいで息が上がる。


ディーは困った様にわたしを見るだけで何も言わない。


上がった息を整えてイスにきちんと座り直す。たぶん自身の事を話す気がないのだ。


「とにかくわたしがいなくなった後の自分の事をちゃんと考えなさい。言っておくけど奴隷商に売るっていうのはナシだからね。」


わたしはそう言うと食器を炊事場へ下げて洗い物を始めた。


まったくもう、何だって言うのよ。奴隷のままでいいなんて絶対あるわけないじゃない。良いって言うなら特殊な趣味の人なんじゃないの!?

あぁもう、汚れがちっとも落ちないじゃない、いつもディーの《洗浄》で綺麗にしてもらっているから。

洗剤とか無いのかしら、石鹸とか。

そういえば小説の異世界転移ものじゃ必ず石鹸や味噌、醤油なんか作るんだよね。

えーっと、石鹸の作り方はオリーブオイルと苛性ソーダだったけど、苛性ソーダってあるの? あと代用品はアルカリの強いもの。火山灰の石鹸とかあったわよね。


「・・・カ?」


後で買い物に出たときに探してみよう。

そうだ、買い物に行くならニンニクとバジルとかも探してみよう。ドードの肉も塩しただけよりきっと美味しくなる。


「・・・チカ。」


あとあれも、お酢。ワインビネガーって西洋のお酢だよね。いや待て待て、こっちはマジックバックが横行しているから発酵食品が発達してないのよ。

腐敗と発酵って紙一重なのよね。最初に食べた人ってチャレンジャーよね。


「チカ!」


強い口調で名前を呼ばれてハッ!と我に返った。


「な、な、なに?」


振り向いたら後ろに立っててビックリした。


「代わる。」


ディーは短く言って私と場所を変わった。


「そう、ありがとう。」


そう言って退けたわたしの背に


「・・・ちゃんと考えるから少し待ってくれ。」


ボソリと呟かれた。


「うん、わかった。」


聞こえてなくとも構わない位の音量だったディーの呟きだったがわたしは普通に返事をした。


フフン、これで言質は取ったかんね!


ではディー独立計画を建ててみよう。


先ずは仕事だよね。


ディーは元冒険者。体力や技能には問題なし。ただ右目を喪失している為死角が出来るので冒険者としては不安が残る。どこぞの三本刀の剣豪とは違うのだ。


他は読み書き計算は普通に出来るけど、事務仕事をしているのって想像できない。


となると身体を使う仕事で尚且つ危険度の少ないもの。


何かあるかな~。


仕事といったら大まかに第1次産業から第3次産業までだよね。この世界はまだ第1次と第2次の産業がメイン。

因みに第1次産業は生産業、農業とかね。第2次産業は製造業、加工業。例えば小麦を小麦粉にするとか、小麦粉をパンにするとか。第3次産業はサービス業、宿屋や小売業のような商品やサービスを分配する業種だね。


農家ファーマーなディー。なくはないけど、農業って一人じゃ無理だよね。日本みたいに機械化が進めば別だけど。


あ、土属性の魔法が使えれば無いこともないのか?


「ディー! 土属性の魔法使える?」


「何だって?」


「土属性の魔法だよ。」


「使えないが? 急にどうしたんだ?」


「え~っと・・・ ディーの独立計画を建ててみよう! みたいな?」


「心配してくれているのは解るが何で唐突に土属性の魔法何だ?」


「土地を開墾したり作物育てたりするのに便利なんじゃないかなと・・・」


思ったの! だってさラノベの異世界ものだと定番じゃない。


「土地は勝手に開墾出来ないぞ? そりゃ山奥の人里からうんと離れたところなら別だけど。」


「え? そうなの?」


「チカ、何で商業ギルドに登録したんだ?」


「え? 何でだろう?」


首をかしげたわたしを見てディーは深くため息をついた。



皆さんのお陰で253ptになりました。ブクマ登録95件になりました。ありがとうございます!

ツギクル大賞参加してみました(笑) どうでしょうかね~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ