14 どこ〇〇ドア !?
14 どこ〇〇ドア !?
『ジリリリリン! ジリリリリン! ジリリリリン!』
トンネル内に突如鳴り響く電話のベル。
古式懐かしい電話のベル。今時この音はそうは聞かない。
わたしはこれが電話のベルだって知ってたから驚きもしなかったけど他の人達は飛び上がるほど驚いたようだ。
ディーなんてビックっとすると即座に中腰になって反射的に剣に手が掛かっていたもん。
「大丈夫、電話だから。」
「デンワ?」
そんな眉間にシワを寄せなくても噛みつきゃしないよ?
「そう、危なくないから。取り合えずうるさいんで出て良い?」
わたしはスタスタと非常電話のとこまで行き躊躇いもなく受話器を取った。
「もしもし?」
『わたくし統括ギルドトンネル事業部オペレーター、リュセルともうします。そちらはD-T2トンネル内でしょうか?』
あ、最初の時の人と同じ人だ。
「はい、そうです。」
『大変お待たせいたしました。復旧工事班の手配がつきましたので今からそちらへ向かいますのでこのまま受話器を持っていていただけますか。』
「はい。」
何で持ってないといけないのか解らないが持って待っとけと言われれば大人しくそのようにしていると煩わしい奴がやって来た。
推定イソガルさんのバカ息子 (名前なんか覚えたくもない!)
「何であんたが受けてんだ!?」
煩いな、だったら自分で出ればよかったじゃん。
「何でって誰も出なかったから?」
「なら最初にそう使うものだと説明しろよ!」
ディーが奴とわたしの間に立って遠避けようとするがわたしは受話器を持ったままでいなければならない。
あー、めんどくさい。そうだ、なにもわたしが持ってなくたっていいんだよね。
「はい。」
わたしは奴に受話器を押し付けた。
「なんだ!?」
「向こうの人がこれを持ったままでいてくれって、別にわたしでなくともイイみたいだからあなたどうぞ。ここに耳を当ててればそのうち向こうから何か言ってくると思うから。」
奴は嬉しそうな素振りで受け取るといそいそと受話器を耳に当てた。
「もう放っといて行こう行こう。」
「いいのか?」
「いいわよ別に、向こうにも似たようなのがいたし。」
あれだ、ワンマンバスの降車ボタンを押したがるガキ。あれにそっくりだ。
「それより今から来るって言ってたんだけどどうやって来るのかな?」
「たぶん転送陣を使って来るのだと思う。」
「転送陣?」
それはなに? ワープみたいなものなのかしら! o(*゜∀゜*)o
いつ、どこから、どうやって来るのかワクワクして待っていたら非常電話のある側の壁前が揺らいでいる? こう、真夏のアスファルト道路にたつ揺らぎののような、そんな感じだ。
そのままじーっと凝視してるとアハ映像のように何かが輪郭を造っていく。そして呼吸一つ分の間に壁に扉が出来上がっていた。
使い込まれたような木の扉はまるで最初っからそこに在ったように違和感がなかった。
ガチャ
開いたよ! リアルどこ〇〇ドア‼
扉が開いたもんだから例の煩いあいつは驚いたのか受話器を放り投げて飛び上がった。
hahahaざまぁみろ (^3^)~☆
扉から出てきた厳ついおっさんがその受話器を拾い上げると二言三言何かを受話器に向かって言うと戻してしまった。
おっさんの後からワラワラと男たちが出てくる。ひぃふぅみぃよ、数えると全部でおっさんを入れて7名だった。
おっさんが責任者のようでテキパキと指示を出しているようで2名づつテクヨ側とドラン側に走って行った。残りの二名の内の一人がわたし達を呼んだ。
「被災者の方は此方にいらして下さい。」
「ヒサイシャ?」
不思議そうにディーが呟くので
「災害の被害に遭った人の事だよ。」
と教えてあげる。こっちには無い言葉なのかな?
わたしはディーを伴って彼等の近くに行った。イソガルさん達もわたし達が移動したのを見てやって来る。
「この度は被害に遭われたこと大変お疲れさまでした。体調の悪いかたや怪我をされたかたなどはいらっしゃいませんか?」
集まったわたし達に若い方の男の人が聞いてきた。
皆が大丈夫だと申告すると今度は厳ついおっさんの方が話し出す。
「今回の復旧工事の責任者のイーサ・ヤマだ。工事が終わるまでもう暫く不自由をかけると思うが皆さんもう暫く頑張って欲しい。」
イソガルさんが発言を求めるように手を上げる。
「何か?」
「あの、それはどの位かかるのでしょうか? 私共は行商を生業にしております。到着指定日の期限が近いものもありますのでお聞かせ願いますか?」
「今現場の状況を見に行かせてます。なるべく早急にと考えておりますが納品が間に合わなくなるおそれがあるようでしたら統括ギルドから罹災証明をお出ししますので御安心下さい。」
それを聞いてイソガルさんは明らかにホッとした表情をした。
クエストの不達成違約金は大きな負債になるし、その為に品質が落ちれば買い取りをしなければならない場合もあるのだ。
そこへ様子を見に行っていた人達が戻ってきた。
「どうだ?」
「ドラン側はダメですね。」
「テクヨ側も完全に崩落してます。」
「地図は?」
「こちらですね。」
イーサ・ヤマさんのと一緒に残っていた人が空中からサッと地図を出す。
地図を広げて見ながらイーサ・ヤマさんは暫し思巡し
「テクヨ側の方が隣のトンネルとの距離が近い、D-T3はテクヨ側に長いトンネルだ、その先は地形から見て崩落している可能性は低い魔力量を考えるとそちら側を復旧した方が被災者の救助を考えると妥当だな。」
イーサ・ヤマさんはそう他の6人に告げるとわたし達にも
「皆さんテクヨ側に移動で宜しいですか?」
そう聞いてきた。
「はい。」
イソガルさんはそう返事をしたがわたし達はテクヨから来たのだ出来ればドランに行きたい。
「ドラン側の復旧はやはり時間がかかりますか?」
「そうですね、テクヨ側を復旧してみないことには確かなことは言えませんが2・3日はかかると思います。」
2・3日ならテクヨに戻って来た道を戻ってドランに行くよりずっと早い。
「2・3日でしたら戻ってドランに向かうよりも早く着きます。テクヨ側の後でいいのでドラン側が復旧するまでこちらで待たせていただく事はできますか?」
わたしがそう願い出るとイーサ・ヤマさんはあまりいい顔はしなかった。
「出来なくは無いですが、食料等はもちますか?」
「はい、道中煮炊きをせずに済むように準備はしてありますので大丈夫です。」
「でしたら問題はないですね。だだし不測の事態が起こった場合は此方の指示に従ってください。」
もっと渋られるかと思いきや割とあっさりOKを貰えてしまった。後半の台詞も当たり前の事だ。
「はい、わかりました。よろしくお願いいたします。」
わたしとイーサ・ヤマさんの話が終わるとイソガルさんは
「チカさん私共が先に通していただく事になってしまい申し訳ない。」
「いえ、どちらを先に復旧するかは専門のかたの判断ですイソガルさんが申し訳ないく思われる事は何もないですよ。」
そう言ってイソガルさんとは離れた。
「ねぇディー。あの人達って今から魔法使うのかな? 見に行ってもいいと思う?」
「・・・勝手に付いていったら邪魔になるんじゃないか、聞いてみて許可してもらえればいいんじゃないか。」
「そうだよね! わかった! 聞きに行ってくる!」
「まてまて、今打ち合わせ中だろ、邪魔になるから。」
首根っこ捕まれてグェッとなった。
ディーに止められて待つこと暫し、7人がぞろぞろと移動を開始したのを機に突撃した。
「あの! お忙しいところ申し訳ありませんがお伺いしても宜しいですか?」
「お嬢ちゃんどうしたのかな?」
ちょっとチャラ目のお兄さんが答えてくれた。
「わたし魔法というものを見たことがないので今からの復旧工事を見学させてはいただけないでしょうか? 決してお邪魔になることは致しませんのでお願いいたします!」
わたしはそう言って頭を下げた。90゜直角のお辞儀だ。
「隊長~ こう言ってますけどイイですかねぇ~」
隊長さんはチラッとこっちを見ると
「・・・大人しくしてるならな。」
「はい! ありがとうございます!」
そう言ってわたしは再度頭を下げた。
トンネル内部から中々抜け出れません~(T^T)
次の次位には出れると思いますのでゴメンなさい
m(__)m
次回は重機要らずのトンネル工事です。
いつも超遅筆を読んでいただきありがとうございます。
総合評価も211ptになりました。読んでいただいている皆さんのお陰です。ありがとうございます。




