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11 ドランの街へ

11 ドランの街へ




7月4日曇天の空を心配しながらテクヨの街を後にした。


臨時収入があったため諸々を買い込みストレージも10まで埋まった。

野営用のテントとか、やかんや鍋、フライパンやボール等々。食材も色々。植物油も一斗缶でゲットしました。


ふふふ、これでドードカツを作るのだ!


テクヨからドランまで間1晩野営で2日の行程を予定してますが雨の影響で道が悪くなっている可能性もあるので慎重に行くそうです。


街から出たらディーの指示には絶対です。ここは日本じゃないのだからどんな事が起きるかわたしには判断がつかないのだから。


テクヨを出て西に続く道はドランまでの一本道。岩山の間をトンネルが切れ切れに続く。


「これ道を通すのに大変だったんじゃないの?」


「そうでもないらしい、土魔法の熟練者と状態保存の補助魔導師クランが一ヶ月位で造ったらしいぞ。」


はぁー、さすがファンタジー重機要らずですか。


トンネルの中は等間隔に灯りがあり足元も石畳で歩きやすい。道の中央には白線のセンターラインがあり行き交う方向に矢印が描いてある。

100mごと位の間隔で壁に緊急時に使用する非常ボタンが付いている。


異世界でも考える事ってそんなに違いってないのね。


順調にトンネルを何本か抜けトンネル内の休憩所スペースで野営をしそろそろドランまであと少しの場所で土砂崩れに巻き込まれた。


幸いトンネル内に逃げ込んで無事だったがテクヨ側の入り口は埋まってしまった。ここからではドラン側の入り口がどうなっているかは解らない。

万が一あちら側も埋まってしまった可能性も考えてテクヨ側の入り口を確保出来るならしておきたい。


ので


「土砂をストレージして退けてみるね。」


ストレージにどの位入るか解らないが取り合えずやってみたら土砂が消えた瞬間土砂が雪崩れ込んできた。

すぐさま退避したがちょっとやそっとじゃ退けられない程の土砂崩れだったようだ。


「巻き込まれてたら危なかったな。」


「本当、間一髪だったね。」


ディーがわずかな落石に気が付いて騎獣を駆けさせなかったら間に合わなかった。


「ドラン側がどうなっているか行ってみよう?」


ディーを促して騎獣をドラン側へと向けた。


少し行くとドラン側の入り口からの光が見えたのであちら側は塞がっていないようでホッとしたのも束の間


「また崩れるぞ。」


ディーのちょっと尖った耳がピクピクと動き、言うのが早いか地響きがしたと思ったら


ズズズ・・・ ドォンッ!


震動と供にどこかが崩れたような音がしてドラン側から差し込んでいた光が途切れた。


「向こう側も塞がったようだな。」


ディーが舌打ちする。


ドラン側から入ってきた人がいるのかザワザワとした人の声がしている。


「様子を見てくる、ここで待っていてくれ。」


わたしが頷くとディーはテクヨ側に少し戻って道の端により騎獣から降りるとわたしも降ろして騎獣の手綱を渡してきた。


わたしは言われた通り壁にペタリとへばり付き騎獣を前に出して隠れるようにした。


ようはドラン側から入って来た者達がどういう者たちなのか判らないからだ。普通の旅人ならよし、ならず者という可能性だってある。

ディーならある程度離れたところから様子が見えるし声も聞き取れる。ので斥候に出たのだ。

ものの何分もかからずディーは戻って来た。


「子供連れで6・7人位だから盗賊の類いではないようだ、だが一応警戒はしていてくれ。」


「わかった。」


ディーはわたしだけを騎獣に乗せて手綱をとると歩きだした。

そう、テクヨの街にいる間に騎獣に乗る練習をしました! 頑張ったかいあって一人で座っていることは出来るようになりました。

いや、支え無しで一人で座っているって結構大変なんですよ?


「おーい! 無事か!」


ディーがある程度近付くと声を上げてその場に止まった。

向こうだっていきなり近付かれたら怖いだろうし。

そしてその距離に近づいてわたしにもようやくその集団が見えた。2頭引きの騎獣車も停まっている。


「旅の人か?」


向こうもバラバラと体格の良さそうな人影が3人出てきて誰何される。


「そうだ、テクヨから来たんだがあちら側も埋まってしまった。そちらは?」


そう言うと人影はざわめき一人は騎獣車に戻って行く。


「こちらも土砂崩れだ。私達は行商人だ。悪いが手を上げてゆっくり近づいてくれ。」


そう言うと向こうの一人が自分も手を上げてゆっくり近づいてきた。

真ん中ら辺で向かい合うと互いのギルドカードを提示して挨拶をする。

ギルドカードはこういう時の身分証明書として使われることがあるんだって今知った。


「マスター、こちらへ。」


相手の身元を確認したディーはわたしを呼んだ。

因に『マスター』とはわたしの事だ。最初ディーはわたしを『御主人様』と呼び却下したら『チカ様』と言いそれもどうかと異議を唱えたら人前でだけは『マスター』と呼ぶことで落ちついた。


わたしはよっこらせと一人で騎獣から降りてディーの側へ行った。


「こんにちは、チカと申します。」


そう言って自分もギルドカードを提示する。


「こんにちは、とんだ事になりましたね。私共は身内で行商をしております、イソガルと申します。」


50代ぐらいのおじさんがそう挨拶してくれ、騎獣車の方に行くと奥さんと12、3歳位の息子さん、と弟さん夫婦とその娘さん10歳位と妹さん夫婦と赤ちゃんを紹介してくれた。


「義兄さん、やはりテクヨ側も埋まってしまっているのかい?」


心配そうに言ってきたのは20そこそこの男性でフグタンさん。


赤ちゃんもいるし心配だろう。


「兄貴どうする? 暫くなら食糧はもつが助けは来るのかな。」


弟さんは30代ぐらいだ。ナミオラさんというそうだ。


「ディー、あれ使わないの?」


わたしはディーの袖を引いて非常ボタンを示した。


「アレ?」


なんの事だと首を傾げられて逆にわたしの方が間違ってるのかと思い聞いてみた。


「そこの壁にある物って使った事はないの?」


「使った事はないな、 そもそもアレは何なんだ?」


「あれってたぶん非常時に外に連絡するための物だと思うんだけど試しに使ってみない?」


わたしはディーにそう言いついでにイソガルさん達を見回した。


そして全員でそこに移動し物に向き合う。


わたしにはよく見慣れた代物だ。

扉の半分位の大きさ。下は放水の為のホースが収納され、上には赤い非常灯と非常ボタン。その上に緑のボックスに電話の受話器のマーク。まごう事なく非常用。


「どうやって使うんだ?」


「そこの緑のボックスを開けると中に電話があるはずよ。」


ディーにボックスを開けてもらう。

わたしじゃ背が低くて届かないのだ。


「で? どうするんだ?」


ボックス開けたはいいがどうするのか解らないらしい。

仕方ないのでディーに抱き上げてもらってわたしは受話器を取った。


ツッ・ツ・ツ・ツ・・・


聞きなれた電子音の後にプッツと繋がった音がした。


『ご連絡ありがとうございます。こちら統括ギルドトンネル事業部オペレーター、リュセルと申します。現在の状況をお教えください。』


となんとも日本的な受け答えだった。




またまた遅くなりました。

m(_ _)m

ブクマ登録が58件になり大変嬉しいです!

こんな超遅筆を待っていただき感謝です。ありがとうございます。


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