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10 テクヨの街にて その4 ドードを捕まえに

10 テクヨの街にて その4 ドードを捕まえに



翌朝起きるとすでにディーは起きているようでいなかった。

こういうことはたまにあり、 騎獣の世話をしたり自身のトレーニングをしたりしているだけで宿の敷地内にいるので、わたしは一人で宿から出たりないように言い含められている。


顔を洗いトイレに行くのに着替えてドアを開けると霧雨が降っていた。

中庭にあるトイレで先に用を済まし井戸に行くとディーが霧雨が降る中素振りをしていた。


上半身裸で剣を振るっていてその動きと共にと水滴が飛ぶ。


わたしはおもむろにストレージからリュックを出しさらにスマホを取り出すとディーを動画で撮り始めた。


型でもあるのか迷い無く振るわれるがそれは剣舞とかと違って武骨であくまで実践的な感じだ。


ディーは長身だけれども全体のバランスがいい体格をしている。ムチッとした筋肉ではなく靱やかな絞られた野生の獣の様な筋肉だ。

六つに割れた腹直筋、厚すぎない大胸筋、太すぎない上腕二頭筋、筋が浮かんで見える腕橈骨筋。

顔も精悍で隻眼っていうのも萌のツボ。被写体としては最高です。ご馳走さまです。


とわたしに気が付いたディーが剣を止めてこちらに歩いて来たのでスマホをサッとストレージに仕舞った。


「おはよう、そんな格好で寒くないの?」


霧雨が降っているのでわたしは少し肌寒い。


「いや、動いたから少し暑いぐらいだ。」


まぁ! 元気です事。


井戸端での諸々を終え部屋で昨日の晩御飯の残りで朝食を済ませた。


「今日は買い物かな。雨具ないと外にも出れないじゃん。あと何か必要だなって思ったものある?」


「薪や騎獣の餌は外で調達しておきたいな。」


それって買い物じゃないじゃん。


「じゃあ雨が本降りにならないうちに済ませましょ。」


そう言って身仕度を整えて買い物に出掛けた。





「傘差してる人いないね。」


「傘はあるが差さないな。」


「なんで?」


「手が塞がるからな。剣を使う者は邪魔になるし、手が塞がると荷物は持てないし。貴族は雨の日は騎獣車を使うな。」


「だからみんな黒い合羽なんだ。」


道行く人はみな黒いツルツルした素材のフードコートみたいなのを着ている。

あれはどこで買うのだろう?

と思っていたらあちこちの軒先に『雨具在ります』と札が下がっていた。

ので早速入ってみる。


「おぉ、不思議な手触り。」


革のような? 布のような? ビニールのような?


「サイズはそこに在るだけだからお嬢ちゃんは大丈夫だと思うがお連れさんのは一番出るサイズだから今はうちは切らしちゃっててな、悪いな。」


と言うことなので取りあえずわたしの物だけを購入。5千ペレなり。


早速わたしは合羽を着てみる。思っていたより割りとサラッとした着心地。中々上々。


その後他の物も色々買い物しながらディーのサイズの合羽を探すが中々無くてお店で困ったと呟いたら素材を持ち込んでくれたらすぐに仕立ててあげるよと言われた。


「素材って何処から調達するものなんですか?」


そう言われてもコレが何から出来ているのか知らない。継ぎ目の無い一枚革?


「コレはドードの皮だよ。今の時期なら南の森の沼地に一杯いるよ。皮はうちみたいな服屋か商業ギルドで買い取るし、肉は肉屋に売れるよ。もし行くなら大きいやつ何枚かうちに持ってきてくれるとありがたいんだがな。そうだな5枚持って来てくれたら仕立て代はサービスするよ。」


との事だった。


ドード、って昨日シチューに入れた肉だよね。鶏肉のような味なんだけど煮込んでもパサパサしなくてとてもジュウシー。

そして沼地にいると・・・


アレか? もしかしてアレなのか?


「ねぇ? ドードってどんなのなの?」


ディーに聞いてみる。肉買ったときにも聞いたけど適当にはぐらかされたんだよね。


「取りに行くのか?」


「だってディーのサイズの合羽売ってないんだもん。」


言外に行くしかないでしょうと言っているんだけど。


「だったら宿に戻って騎獣で外に出るぞ。」


あ、また誤魔化した。ま、実際見れば分かるし何となく予想はしてるし、良いんだけどね。





でやって来ました南の森の沼地。


『ドード、ドード、ドード』


あぁ、ドードって鳴き声からくる呼び名だったのね。


お相撲さん位の巨体のカエルがあちこちにピョンコピョンコしている。全体のボディーカラーは白。頭部から背中にかけてパステルグリーンとパステルピンクの個体がいる。


「ピンクとグリーンの違いは何?」


「雌がピンクで雄がグリーンだ。小さいものは狩らないのがルールだな。狙い目はあの位から上だな。」


示した先にはわたしの顎位の背のドードがいた。


120cm位かな? ディーの合羽にするにはちと小さい。お相撲さん位のを探さなければ。


「大きいのは奥の方だろうな。」


ディーは騎獣を操って沼の淵に沿って奥に進む。合羽にする皮が不足しているというわりには狩りに来ている人は少ない。


「肉を取るのに養殖しているからな。急ぎでなければわざわざ狩りには来ないぞ。」


なんですと!


聞けばドードは繁殖しやすいく成長が早く病気も少ないので養殖が容易いそうだ。


「それにあの大きさだ、皮に余計な傷を付けずに剥ぐのは外では難ししな。」


確かに。でもわたしのストレージのアイテム収納があればモーマンタイ!


手頃な大きさの雄ドードを発見。ではいってみよう。


「ストレージ!」


目視で雄ドードに照準を付けて言葉をのせれば一瞬で雄ドードは消える。


そして穴堀をしてからドードを出し、


「アイテム収納。ドードの皮と肉。」


次の瞬間そこに残ったのは丸っとドードの骨格標本と内臓。


「ヒーッ! ディー! お願い!」


相変わらずグロ耐性の付いてないわたしは後処理をディーにやってもらう。


「あー、グロ。仕立て代タダにしてもらうのにもう何枚か頑張ろう。」


そう言って大きいドードを探しながら沼地を移動しつつ12匹のドードを狩った。



街へ戻って来たら肉屋にドードの肉を買い取ってもらおうとしたら量が多いので商業ギルドで買い取ってもらってほしいと言われた。


ギルドでその旨を伝えると


「ギルドには保存魔方陣の付いた保存庫がございますが普通の肉屋にはそういうものは置いてませんので大量に買い付けても腐らせるだけですからね。何なら皮も買い取りますよ?」


「皮は合羽を仕立てて貰うので大丈夫。」


「そうですか、では買い叩かれないように品質保証の鑑定を念のためしてはいかがでしょうか? 無用のトラブルは防げますよ。」


「そうね、ドードの皮の相場なんて知らないもの。」


そう思ってドードの皮を取り出した。


「・・・あのこの皮は?」


職員さんは驚いたようにそう言って固まってしまった。


「え? ドードの皮ですが?」


「・・・ドードの皮は生きている時には白地にパステルピンクかパステルグリーンですが死ぬとアッという間に黒く変色してしまうんです。小さい物なら稀にこの色の物が入荷するのですがこの大きさでは殆ど手に入りません。剥ぎ取りの秘密はギルドで厳守しますのでギルドに買い取りさせてください。」


職員さんにそう頭を下げられてわたしは否応なく頷いた。


ドードの皮1枚20万ペレで売れました。12枚×20万で総額240万ペレです。そしてディーのサイズの黒い合羽をおまけでいただきました。

あとドードの肉10匹分役900kgは100g60ペレだったので54万ペレでした。



何だか急にお金持ちになってビックリ。そうしたら商業ギルドに銀行業務があるそうなので口座を作りました。

わたしのとディーのを。ついでにディーをわたしの補佐として商業ギルドに登録しました。

ディーは必要ないと言い張りましたが主人命令で強権発動しました。

もしわたしに何か合ったときディーが無一文になっても困るし。


わたしは何の前触れもなくこの世界に入り込んでしまった。だったら逆も在るんじゃないの? 唐突にこの世界から弾き出される様なことが。









遅くなりました。リアルの仕事が繁盛期には入り忙しくなったら風邪を引き寝込んだらぎっくり腰を併発し気が付いたら一ヶ月経ってました。

ハハハ (´▽`;)ゞ


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