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1 奴隷とわたし

1 奴隷とわたし



「しっかり掴まっていて下さい。」


そう言うなりわたしをひょいっと抱えあげてディーは走り出した。


「はひッ!」


やべ、舌噛んだ。


ディーの首にしがみついて後ろを窺う。


さっき途中の休憩場にいた男達が騎獣に乗って後ろから追い駆けてきていた。数は3、うち一人はすでに弓を構えて矢を注がえている。


殺る気満々じゃん。


そして、『あぁ、やっぱりな。』と思う。


本当だったらその休憩場でわたし達も休むはずだったがディーは彼らを見るとその場をスルーした。

子供連れの二人旅なんてカモでしかないしね。


「道外れます。」


ディーは振り切れないと判断したようで街道をそれて森の中に入った。

木が邪魔で騎獣で追いかけてくるには速度が落ちる。

撒ければよし、ダメなら殺るつもりなのだろう。


「ディー騎獣欲しい。」


わたしがそう言うとディーは手近な木に跳び登った。


まったくディーの身体能力は一体どうなっているんだか。


片手だけで枝を支えにあっという間にかなり高い位置にまで登るとわたしを折れそうにはないしっかりした枝に座らせ


「ここでじっとしていて下さい。」


そう言って自分だけ木を降りていった。


ディーが追い剥ぎ達を始末してくるのまでの間にちょっとわたしの話をしよう。


わたしは9日前突然日本からこの世界に迷い込んだ。


その日は土曜日で仕事は休みでチャリで近所にある業務用スーパーで買い出しをしに行った帰りだった。ここは安くて尚且つ普通のスーパーに置いてないようなものもある、かなり巨大な店舗で食材の他に食器や洗剤など日用雑貨的なものももある。

戦利品を自転車の前かご、後ろかご、ハンドルにまで引っ掛けて危なっかしくチャリをこいでいた。

真夏の空は雲一つなくアスファルトに陽炎が揺らいでいた。帰ったら洗濯物取り込んでとか考えて空みてたらチャリのタイヤがジャリを踏んだ。


え!? ヤバイ倒れる‼


咄嗟に足を着けて体制を立て直したと思ったら見知らぬ道の上だった。

その時続いていた空は一緒だったのになぁとのんきな事を思ったものだ。


だってアスファルトに舗装された商店街の路地がいきなりどこの田舎道だよ的なジャリ道に成ったらどうよ?


幸い? 脳ミソがオタクががっていたからなんとか対処できたけど自分の精神がここまで図太いとは思ってなかった。


いわゆる異世界ってヤツなんだろうとあたりを付けたのはスーパーで買い出しした荷物をどうしようかと考えたら


《ストレージ可能》


とゲーム画面のようなものが空中に浮かんだから。


で荷物をストレージしてチャリでガタガタ道をかなり遠くに見える城壁を目指しましたとさ。


程ほどの所でチャリをストレージしててくてく歩くこと1時間城壁の門前まで来たら人が並んでたので一緒に並び隣にいたおいちゃんと話をしてる間に門を潜ってしまった。


わたしの服装が綿で膝丈のノースリーブワンピースに六分丈のダボパンツ。肩に生成りのショール。足はソールが木の革サンダル。で現地人とほぼ同じで違和感がなかったのと、150cmギリギリのわたしはこちらでは子供にしか見えないのでおいちゃん達の一団と一緒だと思われたらしい。


入場税が要るらしかったんだが、ラッキー。


行商に来たおいちゃん達と商業ギルドに行って塩と砂糖と諸々香辛料(胡椒・グローブ・ナツメグ・ターメリック・クミン・ローリエ・コリアンダー・生姜等々)を売ったら小金持ちになりました。

ついでに商業ギルドに登録もして身分証もゲット。これからもよろしくと言われました。


やっぱり純度の高い塩と精製された砂糖は貴重品だし、香辛料は料理とかに使うんじゃなくて生薬で珍重されているそうです。ちなみに何でこんなに香辛料を持ってたかと言うと本格カレーを作ろうと思ってたのよ! 夏って何故かカレー食べたくなりません!?


でその足で奴隷を買いに行きました。


だってさ、わたしこの世界の事なんにも知らないし、異世界補整で言葉は通じるけど体力はないし、自分の身は守れそうには無いし、裏切れない護衛は絶対に必要だと思ったから。

倫理? 武器を持った人が横行しているような世界ではそんなものより己の命の方がわたしは大事です。


そこで見つけたのがディーです。


ディーは竜人と鬼人のハーフで借金奴隷だ。

依頼で怪我して違約金が払えなくて奴隷落ちした元冒険者だ。

年は19で冒険者稼業に馴れてきたところでの失敗だったらしい。詳しくは聞いていないけどそんなところだ。

身長は220cm、150cmギリギリのわたしと並ぶと大人と子供だ。

金と銀と黒が入り交じった髪は肩より少し長いくらい、瞳は朱に金が入った色で虹彩が縦になっている。そして残念な事に右目を失っている。

そのせいで破格のお安さだったのだ。

顔の作りは端整でまぁイケメン。あと左側頭部に角!

右にもあったけど右目と一緒に失ったそうだ。


冒険者稼業は難しいが子供の護衛位には十分ってなもんだ。


「チカ。」


呼ばわれてディーが戻って来たのに気づいた。

一足跳びで上がって来たディーにお疲れと言って両腕を出す。

いや、わたし一人じゃここから降りれないから。


木の下に3騎の騎獣が繋いであった。


「一騎でよかったのに。」


「街で売るといい、良い金になる。」


ディーがそう言うのでそのまま連れていく事にする。

もちろんわたしは騎獣なんて乗れないのでディーの前に乗せてもらう。

追い剥ぎ達をどうしたのかなんてもちろん聞かない。


ヨキニハカラエってなもんだ。



騎獣に乗って次の街まで着いたのは閉門の間際だった。


馬と恐竜ラプトルを足して2で割ったような騎獣の乗り心地は余り良くなかった。折角ディーに確保してもらったがディーが良いって言ったら売ってしまおう。


今日は一日移動だったのでそのまま宿に入って休んでしまおう。商業ギルドに荷を渡しに行くのは明日にする。


わたしが使えるのは今のところ《ストレージ》だけのようで中に入った物は劣化しない。容量は99種類1種類99個まで入る。袋に入れた物は1つと数えられ最初にスーパーの袋4個(スーパーの袋と認識されている(笑))とリュック1つと自転車の3枠を使ったが残り96枠使えるので目下わたしの収入源は《ストレージ》を使った運送業だ。


宿屋は下に食堂で上が宿泊所。お風呂なんて無くてタライにお湯をもらう方式。


わたしとディーで一部屋、ベットはダブル。ディーと一緒に寝ますがなにか?


二部屋取ったりツインとかにすると割高なのよ。。


寝る前にディーに生活魔法の《洗浄》をかけてもらってからベットに潜り込む。


わたし奥側でディーが出入口に近いほう。


ベットの端っこに背を向けて横になったディーに話しかけた。


「明日騎獣全部売っちゃおうと思うんだけどいいかな?」


「欲しかったんじゃないのか?」


「そうなんでけど、以外に乗り心地よくなかったのよ。あれだったらディーに抱えてもらった方が揺れないしお尻痛くないし。」


「・・・チカが主人なんだ売るとしても俺に断る必要はない。」


「だって騎獣持ってきてくれたのディーじゃない。だから聞いておこうって思ったんだけど。」


「チカ、前から言っているが奴隷は主人の付属物だ。意思確認は必要ない。」


ため息と共に呆れたような口調でそう言われた。


「ちょっと、ディー。」


起き直ってディーの肩を揺すってわたしの方を向かせる。わたしには真っ暗なのでディーの表情は判らないが夜目が利くディーにはちゃんと見えているはず。


「前にも言ったけどわたしはディーが奴隷だからってすべての事に関して全て自分の思い通りにしようとは思ってないから、確かにディーをお金で買いはしたけどそれはあくまでも信用できる人がこの世界にいないからそうしたんであって、ディーがわたしに協力してくれなければわたしは何もできない非力な人間だってことは理解している。 ディーは隷属の魔道具でわたしを害することは直接的には出来ないけど、必要な事を言わなかったり助けなかったりとかは出来るって知っている。だからわたしはディーに信頼されて手助けをしてあげたいって思われる主人にならないといけないんだって思っているんだから。ディーもわたしの思っていることを解ろうとして?」


ガーッと勢いで言い募ったんだが最後の方自分でも何言っているんだか解んなくなっちゃったよ。

ゼーハー肩で息をしながらディーの反応を窺っていたらクスッと笑われた。


「本当にチカは変わった主人だ。主人のことを呼び捨てにしろとか、食事は同じものを一緒のテーブルで食べろとか、寝るときも床ではなく同じベットを使わせるだとか、奴隷に意見を求めるとかこの世界の奴隷の主人は誰もそんな事はしない。俺の初めての主人がこんなだと俺は次の主人の時に苦労しそうだ。」


「次の主人なんか無いから。」


まったくディーはなにを言っているんだか。

ディーと別れるときはわたしが向こう(日本)に帰れる時かわたしが死んだ時なんだからディーは解放するに決まってるっーの。


「そうか、わかったからもう寝ろ。」


そう言ってディーはわたしの頭を撫でた。


「うん、おやすみ。」


若干子供扱い過ぎると思うがわたしは素直にそう言って枕に頭を落とした。









読んでいただきありがとうございます。ブックマークや評価をいただけると励みになります。よろしくお願いします。

遅筆ですがこれからもよろしくお願いいたします。

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