夏のひとコマ
「あづいよ。夏きつすぎ」
「そだね」
現在あてもなく太陽の日差しが容赦なく降り注ぐ道を二人で歩いています。
「これからどうする?」
「どうするってキミが呼んだんでしょ」
昨晩仲の良い友達の長谷部君江であだ名がキミから電話が掛かってきて、
『ヨミ、明日会ってなんかしよう。午前中からふたりでさ』
『いいけど、なにするの?』
『そこは明日のお楽しみで』
そんな感じで気軽に誘われてオーケーして現在ふらふらしているわけです。
ちなみに私の名前は吉名美江であだ名がヨミです。
「だってさ、このうだるような暑さの中家の中のクーラーきいた部屋で過ごすより外の自然の暑さを感じていた方が良くないかね」
「よくないよ。そんなことのために私は呼ばれたの。まさか一日中こんな風にしてるわけではないよね」
「さすがにそれはないない。でもなるべく木陰とかそういう外で涼をとるようにしたいかな」
「お昼はどうするの」
「そこは別に中でもいいよ。なるべくだよなるべく」
キミが私より前に出てくるくる回りながら言います。こんな暑い中そんなに動いて平気なのかな。
「とにかくここより涼しい場所にいこ」
「そうだね」
とりあえず近くに川があるのでそこの橋の下に行きました。
「涼しいね」
「あの道よりはだいぶましだね」
「私が求めてたのはこういう涼しさなのだよ」
「ああ、たしかにクーラーとは違う涼しさだね」
しばらくそこで座っているとキミが立ち上がり、
「飽きた、お腹減った。食べに行こう」
「早いね」
「あんまり食べてなくてさ」
「あれ、珍しいね。どうかしたの?」
「夏バテかな」
「え、さっきまでくるくる動き回ってたのに」
「嘘。最近クーラー効いた部屋でごろごろしてたからお腹空かなくてさ」
「そういうことね。どこか食べに行きますか」
再び暑い道を歩きます。セミの声がジンジン鳴り続いて夏ということを認識させられます。
「どこいく?」
「私はまだそこまで空いてないからどこでもいいかな」
「でました。どこでもいい。一番困るやつね」
グイッとキミが寄ります。私よりキミの方が身長は小さいので下から見上げる格好になります。
「ごめんごめん。しいて言うならのどが渇いてきたからドリンクバーがあるとこかな」
「ファミレスですね」
「だね」
「でも地元にファミレス何種類かあるよ。どれにする?」
「ドリンクバーがあってキミのお腹が満たされるファミレスがいいね」
「それってみんな一緒じゃん」
「だから近いとこで」
「了解」
ここから一番近いファミレスでメニューとにらめっこするキミ。私はドリンクバーと適当なパスタに決めたのですがまだ悩むようです。
「まだ決まらないの」
「いやぁ、安くてかつお腹にたまりそうな物を探すと時間がかかってね」
「貧乏性だね」
「貧乏よりケチのほうがいいかな」
結局さらに悩んで私と同じパスタにしました。私もケチなので安いやつなのです。
「注文したし、ヨミのもとって来るよ。荷物とかは……大してというかほとんどないけど一応ね」
「そうだね。ありがとう。私はオレンジジュースかな」
「了解。そういえば氷はなしだったっけね」
「うん」
氷で冷やさなくても十分に冷たいし、あんまり冷たいのを飲むとお腹が痛くなってしまうのです。
「ふぅ、おいしかった」
「ちょうど午前も終わった辺りだけどどうする」
「またさっきの場所以外の涼探しに行こうか」
「クーラーじゃないところね」
さらに二杯ジュースを飲んでから会計を済ませて私たちは外に出ます。午前中ではないのでさっきよりもかなり暑いです。
「あづい。だけど涼を探さねばならないのだ」
「その使命感はなに」
「なんとなく」
「そうですか」
「でもほんとに暑いね。今日は諦めてまた次回にするか」
「次回もあるんだ」
「夏休み中はずっとあるよ」
「それはやだな」
「そんな露骨に嫌がられるとは」
「ずっとの部分が嫌かな」
「たまにならいいんだ」
「クーラーづけってのもね」
「たしかにね」
「それでこれからどうするの」
「ヨミの家で涼むことにする」
「結局そこに行くのね」
「一回一か所かな」
「今回は川の橋の下ね」
「そゆことでおじゃましますよ」
「次はキミの家ならいいよ」
「了解です」
そんなわけで私の家で過ごして夕方頃にキミは帰りました。特になんでもない二人の夏のひとコマでした。
ここまで読んでくださりありがとうございました。