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vsドランク テレキネシス戦(後編)

 駄目だ、無理だと言われると、却って負けん気、糞意地を張る性分だから、結局それが引鉄となって、浮かせた石や木板を次々と桐生目掛けて発射させる。ただ、桐生の方が一枚上手。次々刀で弾き落として、シールごと両断していくのであった。躍起になって一心不乱に最後の一つまで操り出すも、悉く通用しない。桐生は快足飛ばしてドランク本体に詰め寄ると、その顎にアッパーを入れて、空高く吹っ飛ばしてしまう。


「勝利!」


 桐生は自ら勝ち名乗りを上げているが、こうも力の差を見せつけては、まるで飯塚の必死の戦闘も茶番となり得て、滋たちは白けてしまう。


 さて、勝利と思ったものは実はまだ勝利とならない。ドランクの吹っ飛んだ先が、弥生たちが乗ってきた桐生の車の側であったなら、またまた起き上がって、勝利に浮かれている隙に車体にシールを何枚も貼ってしまう。皆が気付いたときには魔力で車を宙に浮かせた後である。土埃にまみれ、口元に血も滲ませる口惜しさ満杯の面で、その車を渾身の力で一投するのだ。狙われた桐生は高く跳び上がって避けるが、後方のヴァイスに一直線に飛んでいく。


「上手いこと避けろ!」


「了解」


 避けろと言ったが、ヴァイスは飛んできた車体を思いっきり蹴り上げてしまう。


「蹴るんじゃねえよ! 壊れたらどうすんだ! 減価償却だって済んでないんだぞ!」


 その車、桐生専用であっても実際はUWの所有。所謂社用車というもので。壊せば始末書、下手をすると弁償させられることもあるとか。


「ケチなことを言うんじゃないの。今までタダで乗ってきたんだろ?」


「うるせぇ! 買うと結構掛かるんだよ!」


 必死の言い分もまるで子供の駄々。説得力に欠けている。


「車のこと、あまりわからないけど、でも、あの車だって国産でも値の張るスポーツカーでしょ。あいつ、組織のお金だと思って好き勝手高いものを買っておきながら、金銭で自分に難が降りかかりそうになると異常に細かいわね」


 と、弥生の一言。これを聞いて滋も、


「うん、僕もそう思う」


「いっそ壊れてくれて、始末書でも書かされればいいのに」


 二人のそんな不吉なぼやきも、因果とあれば現実になるもので。ドランクが必死の形相で操る車体は、なおも桐生を追いかけて、天地を幾度と往復する度にあちこち傷をつけ、凹ませていく。バンパーから逆さまに地に落下したときには、


「ふざけんな!」


 ただ、こうされても尚、車を自慢の得物で両断しようとしない。そのうちドランク自身が車に乗り込んでしまう。この場の全員を倒す腹なら、桐生に限らず目につくものを宙より轢きにかかるのであった。


「ちょっと、何とかしなさいよ!」


 でも、それでも車が惜しい。


「手を貸そうか?」


 ヴァイスの親切も、


「いるか!」


「もうボロボロなんだから、また買い換えればいいでしょ!」


 弥生も怒って火球を放つが、車体に直撃直前で桐生が刀でその火球を弾き飛ばしてしまう始末。


「何すんだよ! 危ねぇだろ!」


「あんたこそ何してくれてんのよ!」


「大人しく黙って見てろ! 俺が止めるんだから!」


 勿論、策はない。避けるばかりで攻めもしない。車を燃やせない弥生は怒りを燃やして、鶏冠に達して手段も選ばなくなると、


「あんた、前のような結界で問答無用で一気にふっ飛ばしちゃいなさいよ!」


 と、滋に怒鳴る。


「え? ええ? 僕が? 無理ですよ。いや、前のような大きな結界はあれ以来なかなかできなくて…」


「情けないわね! ちょっとはあなたもあいつの身勝手に怒りなさいよ! なんだったら私がまた力尽くで本気を出させてあげようか?」


 桐生も無茶苦茶なら弥生もまた然り。滋の顔は苦みに歪む。この業界にまともな人間はいないのかとヴァイスを探すと、はて、姿がない。四方見回して見つからず、空を見上げてようやく、


「あ、いた」


 宙高く落下しながら掌を翳し、眼下の暴走車を、手から放つ衝撃波で狙い撃ちにしようとしている。一方、車では、桐生が車体にしがみついて、中へと侵入中。空中を移動する車内で激しくやりあって、揺れる、罵声が轟くその末に、運転席の窓を突き破ってドランクを放り出してしまう。


 ヴァイスが衝撃波を放ったのもそのときであった…


「あっ…」


「よっしゃ!」


 桐生の歓喜ごと車は地上に腹から叩きつけられ、ルーフがペシャリと潰れてしまう。


「ちょっと、大丈夫!?」


 駆け寄ってみると、桐生は無事。その人間離れした腕力でルーフを除けようとしている。が、上からヴァイスが降ってルーフの上に余儀なく着地、再び潰されてしまうのであった。



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