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vsドランク テレキネシス戦(前編)

 飯塚と正美を跨らせた箒はたちまち暴走して、晴れた星空の中を縦横無尽に飛び回る。旋回もすれば急降下もする、乗っている二人に夜間飛行の趣などない。目が回って脳は揺らされて、飛んでいる最中に正美などは気を失ってしまう。落ちそうな彼女を抱えながらどこかに着地してくれと飯塚が願うと、それが通じて、昨夜滋が絡まった欅のあるあの高台の墓地の上空で制止する。そのまま街灯の明りが降り注ぐ芝の上に静かに着地するのであった。


 気絶した正美にいくら声を掛けても気がつかない。箒も自ら柄を曲げて穂体を頭にして彼女の様子を窺うような仕草をする。そのうちに絨毯に乗って二人の後を追ってきたドランクもその場に降り立つ。先ほどシールを貼った石や木板も引き連れて、すぐに攻撃の構え。一方の飯塚は先ほど操っていた武器の全てを置いてきている。代わりにポケットから取り出したスティックを構える。


「一丁前に構えてくれるが、君にそれが操れるかね? それでどう攻撃をしようというのやら」


 余裕綽々とされながらも、飯塚とて無計画でもない。さらにライターを取り出して、スティックの先で点火する。


「一歩でも近づこうものなら、いや、一つでも攻撃しようものなら火炎を放出する」


「ほう、生意気なことを言うじゃないか。窮鼠が猫を噛むつもりだろうが、そんなものは諺だけの話だよ!」


 ドランクが大きく振りかぶると、操る全ての武器を一度に集めて塊として、飯塚目掛けて投げ飛ばす。飯塚もすかさず念じて火炎を放出する。炎と塊の衝突は、しかし塊が炎を突き抜ける。飯塚は咄嗟に左に飛んで直撃を免れるが、熱せられた塊が気絶している正美に向かって飛んで行く。


「しまった!」


 そう言ったか思ったか、すると、突然箒が身を挺して彼女を守る。熱い塊を、野球のバッティングのようにその身で打ち返してしまうのである。その衝撃で箒は真っ二つに折れた。


「何~ッ」


 箒を作った本人ドランクこそが、その事態に一番驚いている。


 箒はもはや再起不能、飯塚がどれだけ命令しても動きはしない。あれだけじゃじゃ馬の如く飯塚を困らせていた箒だが、何だかんだとアイテムの中では一番愛着を持って、一番大事にしていたのもそれである。ふと、その目頭が熱くなる。


 彼は立ち上がるとスティックとライターを構える。落涙に耐えて、悲しみを怒りに変えて火炎をドランク目掛けて発射する。溜まった涙で目が眩めば、直撃はしない。当たりはしないが放ち続けて、そのうちライターがガスを使い切る。


「残念だったな、君」


 ドランクの頭上に再びシールを張った塊が呼び寄せられる。反撃の手段を失ってついに涙を流す飯塚の脳天を狙って容赦なく放り投げられると、ここで、ようやく追いついたヴァイスの飛び蹴りが塊を粉砕する。


「何だと!」


 驚くのもまだ早い。次には、さらに桐生の足がドランクの背中を蹴り飛ばして豪快に吹っ飛ばす。時を同じくして弥生が運転する車も到着する。弥生に滋、バーモンが続々と飯塚のもとへと駆け寄る。


「大丈夫ですか!」


 と滋が問えば、


「見る限り、いまのところは平気そうだね」


 とヴァイス。桐生が立ち上がって、


「問題はあいつだな。おうおう、もう起き上がっているぜ。想像以上にタフだね」


 言葉通り、ドランクはばらばらになった石や木板を宙に従えてすでに次の一撃の構えを取っている。


「貴様、よくもこの私を足蹴にしてくれたな! これまでだって無礼の数々! もはや許すことはできないな!」


 目標が桐生に移ったようだが、彼とて望むところ。得物を鞘から抜いて脇構えのまま腰を落す。


「ドランクさん! おやめになったほうがいいですぞ! 相手が悪すぎます!」


 二人の間合いに割って入ってバーモンが叫ぶ。そんな忠告を聞くような素直な赤髪でも勿論ない。


「貴様、いつの間にそこにいた! いや、そんなことはどうでもいい! そんなことよりこの私に降参しろと言うつもりか! 冗談じゃない! こいつらの一人や二人… いや、三人や四人、私一人で充分だ! 貴様は黙ってそこで見ているがいい!」



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