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作戦もとい三十路男の恋の応援、実行(前編)

 今宵は雲一片もなく、満天星空の瞬きも瑞光と見えて、バンダナを巻く飯塚の気合も乗る。視線は前方遠くを歩く、例の新入社員の後輩こと「平正美たいらまさみ」に据え、気付かれないよう後をつけながら、いまにでも飛び出してその背中をギュっと抱きしめてやりたい衝動に耐える。


「現在、N町の本屋の側を通過。団地を抜けたら畑があるので、やるならそこかと」


 飯塚が滋たちと一旦合流したのは彼女が会社を出てすぐのこと。弥生からイヤホンと時計に内蔵した無線を借りて尾行をし、こう状況を報告しながらバーモンを先回りさせていく。


「了解しました。そこにしましょう」


 バーモンが応答すると、同行していた滋と弥生も少し離れて見守ることにする。畑の側の道は五十メートルばかし。その間、周りの畑以外は街灯一本のみ。ひと気もなし。バーモンは道の中ほどで待機する。弥生と滋は近く民家の塀の角に隠れる。見えるだとか見えないだとか、二人で押し合いへし合いをしているうちに目標の彼女が現れる。


 消えかかった街灯の下、一人佇む白髪でスーツを着た男の姿は異様である。弥生や滋にしてそう思えば、目標の彼女からすれば尚一層のこと。目にするや立ち止まって辺りをきょろきょろと見回している。誰か人がいないかと探しているのか、それとも別の迂回路がないのかと探しているのか、可哀そうなほど落ち着かない様子。が、可哀想であればあるほど、それを助ける飯塚は興奮してしまう。


 シチュエーションは整ったが、さてバーモンはどのようにして目標の彼女を恐怖に突き落とすのか。幽霊や妖怪を演じるのも一つ、強姦魔を演じるのも一つ。ここに来る前にあれこれと悩んで弥生にも相談したが、彼女の助言も、変人じみたことを問えの一点張りであった。具体案はなし。結局バーモンが一人考えるしかなかったのだが… 今まさに、何やら話しかけたようで。遠くで見守る弥生や滋、少し離れて後をつける飯塚の耳には何と言ったか、小声が過ぎて聞こえない。正美のほうは顔を蒼白とさせて尻込みをする。今にも走って逃げ出しそうである。


「ところで弥生さん、誠司には場所の連絡ってしました?」


「え? そんなのしてないわよ。あんたしたんじゃないの? ああ、それより何だか私の方が腹が立ってきた。どんな卑猥を言ったかわからないけど、見ているだけで女の敵に思えてくる」


「あそこにいるの、あれ、誠司じゃないよね」


 そう言って滋が指差すその先を、弥生は目で追いかける。後をつける飯塚よりも正美に近いところに人影があるのだ。凝らして見て、


「あれ? あいつだ」


「やっぱり、そうだよね」


 何をしに? と思ったときには、


「おっと、こんな人通りの少ない夜道で女の人を困らせて、あんた変質者だな」


 などと気取ることなく、その人影こと桐生が、バーモンに向って喋りかけている。おそらく何の気ない、普段の人助けの通りで、飯塚に花を持たせる作戦があることも忘れているに違いない。となれば、弥生も滋も大慌て。でも自分たちが出る訳にもいかず、塀の影でばたばた、やきもきとするばかり。その瞬間、桐生の背後より勢いよく近づく別の人影がある。あっという間に桐生の背中に蹴りを見舞うと、桐生を抱えて真っ直ぐ弥生たちが隠れる塀へと連れてくる。蹴った影は誰でもない、ヴァイスである。


「何しやがんだ、この野郎!」


 と桐生が叫べば、有無も言わずに蹴りつけ踏みつけ黙らすヴァイスと弥生に、普段は決してこういうことはしないであろう滋までも便乗して足蹴にする。弥生はすぐに無線で、


「やるならいまよ!」


 耳を劈くこの声に蹴り出されるように、飯塚がバーモンたちの前へと躍り出る。



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