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自首も口にするバーモン(後編)

 一時間もすると弥生も飯塚のアパートへと到着する。前日のスカート姿と違って本日は黒のジーンズに白のパーカーという姿。動きやすさ優先も、男の子のようで色気はない。肩から斜めに大きな黒いボストンバックも掛けている。入ってくるなり、


「いやはや、オールはやっぱりきついよね」


 声も嗄れている。その喉を潤そうと彼女も勝手に冷蔵庫を開けて、コップも勝手に拝借して麦茶をごくごく一気に飲む。


「そのバッグは何なんですか?」


「無線一式」


「ところで誠司に電話を掛けました?」


「え、私? 掛けていないけど。あんたさっき掛けたんでしょ?」


「いえ、メールだけです。まだちゃんと説明していないんですよね。夜の作戦、というか一芝居のこともまったく話してなくて。一応、隊長だから、ちゃんと報告したほうがいいのかなって思っているんですけど… 帰ってきてから話を聞くってことになってますけど、誠司が着くの、多分夜の七時くらいだと思うんですよね。その頃はもう作戦も実行しているんじゃないかと…」


「あんた、まじめね。報告なんて後からでもいいじゃない。あいつ、隊長っていっても隊長らしいところほとんどないし。確かに調査の延長上での作戦だけど、戦闘があるわけでもないんだから。ただの人助けよ」


「でも、禁止されているっていう薬を使うんですよね。僕たちそれを黙認するわけですよね。ちょっとそれって問題になりませんか?」


「あんた、細かいわね」


 そこにバーモンが口を挟んで、


「でも、もうすでに使っていますからね。条約では使用の禁止に関して解釈も曖昧ですし、多分、大丈夫だと思いますよ。使った人間がそれと知らずに使ったことを考えて使用者に対する処分は基本的に甘いですから。一番罰せられるのは製造者ですんで。幇助に対する罰則も確かに存在しますが、すでに飲んでしまって、残りの薬も飯塚さん自身で所持している以上はそれも大丈夫でしょう」


「でも、黙認なんですよね」


「なんでしたら、今回の作戦に関して、あなた方UWの連中は一切関与していないと、そうしてしまえばよろしいのではないですか。あなた方は影から見守るだけで、私一人がこの作戦を立て、善意から飯塚さんに協力したと、そういうことでよいのではないですか?」


「でも、それだと…」


「いえ、私のことを心配してくれているのでしたら大丈夫です。もう製造者として罰せられますからね。今更、幇助だろうが、黙認だろうがどちらも関係ありませんよ。むしろこれはあんなものを作った罪滅ぼしです」


「ちょっと寂しいわね、それ」


 しんみりとした話を聞かされて弥生の気も変わると、桐生に報告しようと電話を持って和室に入る。漏れ聞こえる声によれば、夜の作戦の説明なのだが、そのうち口喧嘩が始まって、怒声に罵声、ぷりぷりした顔で戻ってくる。


「どうだった?」


「バーモンさんの好意に甘える形でやればいいんじゃないかって。自分が戻ってくる前にさっさと終わらせておけってさ。最悪の場合、ヴァイスさんに罪を全部おっ被せればいいだとか言ってた」


「ハハ… 一応は許可が下りたんだ。でも、小ずるいというか、情が薄いというか、利用できるものは何でも利用してしまえって感じですね」


「そうなのよ、面倒は御免ってのがアリアリよね。変なところで管理職風ふかしてくれて。ただ、それでも救いなのはあいつもこういう作戦は嫌いじゃないってことね。終わらせておけって言っているくせして、作戦の詳細をああしろ、こうしろって言うのよね。それも嬉しそうに。変な奴よね。本当は自分も混ざりたいんだと思う」


「なんとなく、誠司らしい」


「ま、これで何かあっても誠司に全部責任を持ってもらうことも出来るわね」


 フッフッフと弥生の含み笑い。それを見て滋は苦笑い。



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