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自首も口にするバーモン(前編)

 午前の授業も済むと、寄り道もせずに真っ直ぐ飯塚のアパートへと出向いて、滋はバーモンと合流する。今夜の作戦の詳細を二人で練り込んで準備を万全にするつもりであったが、どのような手はずをとればいいかと悩んでも、二人して普段より遠慮だらけで我先とは行かない性分の為に、足そうが掛け合わせようが一向に良いアイデアが浮かばない。昼の三時を過ぎたところで一旦小休止。お茶でも飲もうと飯塚の部屋の冷蔵庫を勝手に開いて冷えた麦茶を取り出し飲みだせば、二人揃ってまったりとする。


「ところで、あの薬はバーモンさんが作ったんですよね。どんな副作用がでるか、わからないんですか?」


「それがまだまだ実験段階でなくしたものですから、わからないんです。ただ、可能性として考えられるものは、肉体に何らかの弊害が出てきたり、もしくは麻薬のように精神が乱されたりですかね。これらは過去に私とは別の人が作った魔力増強剤の例なんですけど。一時的な魔力アップで体も心も壊されるんじゃ、使い道も限られてきますね。自分が死んでもいいくらいの復讐、そんな場面でしか使い道がないですよ。条約や法律で禁止されるのも頷けます。それでも作った私は、どこかで自分が作れば副作用もなくせると思っていたんでしょう」


「ということは、もしかしたら本当に副作用のない薬を開発しているかも知れないってことですか? 飯塚さんの体にも何の影響もないと」


「それは限りなくゼロに近い可能性ですね。いままでアンダーグラウンドでも公の開発機関でもそれに成功した例は上がっていません」


「それじゃ、もしこれから飯塚さんの体調がおかしくなって、もう治ることのない病気になったり、最悪の場合、その薬のせいで死んでしまったりしたら、どうするつもりですか?」


 バーモンは顔を曇らせて、


「やはり、自首しますかね。あなたもUWの一員なら、もう私の顔もわれてしまっている訳ですからね。逃げても無駄ですから。然るべき処分を受けますよ」


 滋は自分のこの仕事が人の人生の大半に大いに影響を与えるものだと、このとき理解する。決して楽な仕事ではないとは思っていたが、自分だけが苦労する仕事とは勝手が違う。責任の重さが違う。そうして改めて自分の適性を疑ってしまう。


 そこに彼の携帯電話に桐生からメールが届く。文面は、


『副作用の詳細がわかるまで時間が掛かる模様。結果がまだ出ていないが、俺は先にここを出る。あれこれ寄ってそっちに向かう。飯塚さんは平気か?』


 滋の返事は、


『了解です。飯塚さんはいまのところ無事です。現在は仕事に行っています。弥生さんから話を聞いていると思うけど、こちらはいま、薬を作った人と一緒にいます。話を聞く限り、その人自身もどんな副作用が出るかわかっていないようです』


 すると間もなく、


『何それ? そんな人と会っているなんて初耳だけど。現在運転中、寄るところあるから七時くらいに着くと思う。着いたら詳しく教えるように。ついでに弥生にも文句を言っておけ』


 はて、昨夜、弥生が帰る前に桐生に連絡を入れてくれると言っていたはずだが。確認の電話をしてみると、起きてまだ間もない声で、


「ごめん、忘れてた」


 聞けば、あれからまたカラオケに行ったと言う。


「顔を洗ってからそっちに向かう…」



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