魔力増強剤、UWに知られる(前編)
茂みの陰からバーモンのいる電柱の陰へと移り、息を潜ませ様子を窺うドランクたち三人は、時折聞こえる叫び声や衝突音や高笑いに眉を顰める。そのうち勢いよく窓ガラスが割れ、箒を握った滋が飛び出し、もとい滋を振り回す箒が飛び出してくる。それが暴れ馬の如く夜空を飛行するのを目にし、窓から顔を出した桐生の、
「おわぁ、スゲェ。って、感心してる暇はねぇな」
と二階より飛び降りて駆け出すのを見、弥生と飯塚が玄関より飛び出して後を追うのを見て、
「あれだ! 間違いない! 私が開発した箒一号だ!」
「さて、どうします?」
「無論、追う!」
こう告げるや、ドランクは一人で駆け出してしまう。
「思い立ったら何とやら… どうします? 同じく追いますか? 俺としては部屋の中を物色するのもアリかと思うのですが」
「いえ、追います。あの人が何をしでかすか、側で見ていないとそちらの方が恐ろしいですから」
「なるほど、あなたも気苦労が絶えませんね」
心情を汲み取って黒服も一旦後を追う。
暴れ箒が引っ掛かったのは、高台の樹齢百超す欅の枝。よくぞ握り続けたものだと、箒にぶら下がって降りられない滋に桐生などは感心半分、笑い半分。
その場は町でも有名な寺の境内で、百歩ほど歩いた先には墓が群れている。欅の大木も首吊り自殺の噂で知られ、夏場は近所の中学、高校生の肝試しによく使われている。ひとまず滋を助けて、その場で魔法アイテムの質問が再び為されると、普段どおりにシールもスティックもバンダナも持参する飯塚は、それらを広げて見せつつ、薬だけは隠そうとする。
「さっき、何か飲みませんでした?」
弥生が聞いて、薬の入ったケースも渋々渡す。中には一錠のみ。この錠剤が何かと聞かれれば、飯塚も誤魔化すことができず、解説書の文面を覚えている限り喋る。
―魔力増強剤
UWの隊員三人が口を揃えて聞き返す声が夜の境内に響く。墓石に隠れて様子を窺っていたバーモンは眩暈と脱力に襲われる。知られて拙い相手についに知られて、夢も希望も華やかな未来も露と消えたと意気消沈。
「まだ貴様が作ったと知れた訳じゃない。要は奴らが組織に持ち帰る前に奪還すればいい」
同じく隣の墓石に隠れるドランクの強気も、いつもの無謀とますます滅入る。




