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能力者がアイテムを使ってみると(前編)

 仕事の話に戻ろうと言っておきながら、恋の話ならぬ恋の罵り合いで延長戦を迎えた桐生と弥生の五十歩百歩。これに口を挟む隙間も見つけられない滋は、自分だけならまだしも、飯塚も放置のこの集中力が散漫とする子供のような二人の態度に溜息が漏れる。箸休めのように窓の外を眺めると、こちらを覗き込む、いや隠れる意思もないように亡霊の如く気色悪さで眺める人影を目にするのであった。何かいると咄嗟に叫んで、皆で確認すると誰もいない。目の錯覚を疑うが、飯塚もどうやら同じく人影を目にしていたと言う。無意識のうちにその防衛本能が働いていたようで、彼はスティックを握り締めて身構えていた。


「あれ、それは何?」


 弥生がスティックを取り上げて、蛍光灯に翳して向きを変え角度を変えて六面より眺める。


「か、返してください!」


 飯塚が取り乱すのを見て、今更思い出したように桐生も「魔法だ」と口にする。飯塚はそれだけで怯んでいる。どうやら図星である。


「それで何が出来るんだろ? 弥生、何かわかるか?」


 聞かれて弥生は少し考えてのち、意識を集中して誰に向けるでもなく振ってみる。すると、何やら自分の魔法力がスティックに宿って広がるような感覚がある。


「これ、やっぱり普通じゃない」


 さらに意識を高め、実験の心半分、悪戯心半分、スティックの先端で桐生の腕を叩いてみると、バチバチッと電気が走る。


「何すんだよ!」


 桐生も相当に痛かったようで。


「ご… ごめん、ちょっと予想外。でも、何が起きたのかしら?」


 返答を求めて飯塚へと振り返る。つられて滋も、怒っていた桐生も振り返る。飯塚は何も答えない。


 解らないのではない。彼の中で、おそらく静電気だと見当はついている。スティックが微弱な静電気を捉えて、彼女の魔力によって膨らんだという理屈である。裏を返すと、つまり彼女は、その体に魔力を備えているという理屈になる。想像する所、薬を飲んだ際の自分以上の魔力である、しかも彼女はバンダナも巻いていない。飯塚はこの事実に戦慄を覚える。


「あ… あなた方は、いったい… 何者なんですか…」


 桐生たち三人は三人して目を細める。


「あなたこそ何者なのよ。こんな凄いの、どこで手に入れたのよ」


 試しにもう一度桐生の腕を叩いてみると、やはり同じように電気が弾ける。


「お前! 遊んでんじゃねぇよ!」


「これ本当に凄い。間違いない、この人よ。この人が犯人よ!」


 スティックの先で指された飯塚の顔は引き攣り始める。


「ほかにアイテムがあるかもしれないな」


 桐生は立ち上がって部屋を物色し始める。手始めに飯塚に許可なく隣の和室に足を踏み入り、押入れの中からボストンバッグを見つける。これまた許可なく開けてしまって、中から折りたたみ式の箒を見つけて嬉しそうに皆の前に晒す。


「すごい。もう疑いようがないね」


「ふっふっふ、それじゃ、詳しく話してもらおうか」


 飯塚の顔から血色が失せる。彼は、この不思議で強烈で遠慮のない若い三人に、自分が殺されるのではと想像する。一人は猛獣の如き腕力で自分を部屋へと引きずりこみ、一人はいとも簡単に電気を操る魔力を持ち、一人は妖艶に人の心を弄ぶ。味方だと言っていたものも、いまでは信じることも出来ない。


「あ… あなた方は、本当に何なんですか! 私を、私を調べて何をしようと言うんですか!」


 こう叫ぶ飯塚は発狂寸前である。見かねた桐生が滋の背中を小突いて説明を促す。滋には自分が選ばれる理由がわからない。一応、説明をしようとするが、不慣れに加えて元来喋り下手だからしどろもどろ。


「あの、僕たちはつまり、結局テレビの人たちじゃないということでして、なんといえばいいのか、調査員といえばいいのか、いわゆる一つのそんな感じです」


 訳が分かるような、分からないことを答えるので、飯塚が戸惑うのも当然。ただ、滋の容姿は想いを寄せる女性を想起させて、宥められた心地にもなったとか。



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