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「UWって、そもそも何なんですか?」(後編)

「UWって、そもそも何なんですか?」


「そもそもって言われても… イギリスが発祥の対オカルト心霊超常現象集団みたいなものよ。私も歴史は詳しく知らないけど、組織ができてからもう何百年って経つそうよ。本部もイギリスだけど上のことはあまり詳しく知らされていないのよね。それと日本支部とか、世界に支部がたくさんあるけど、ネットワークだけ繋がっていて基本的にその国々で独立しているの。公にはされていないけど、日本のUWの資金も日本政府から出ていたりするし」


「へぇ…」


「あんた、この一ヶ月の訓練の間に何も聞かされていないの?」


「う~ん、誠司も忙しいからっていうことで、あまり… 『UW』って名前が創設者の名前のイニシャルだってことぐらいは教えてもらったけど…」


「それだけ? ほんと、いい加減。一番どうでもいいようなことじゃない。嫌になってくるわ」


「でも、大体わかりました。お金の流れとかしっかりとしているようなので、ちょっと安心です」


「へぇ、物分りいいじゃない。あんた私たちと同じ歳で同じ大学生よね。どこの大学?」


「K大学です」


「え? それじゃ私たちと同じじゃない。あんたみたいな子、見かけたことないけど、学部は?」


「理工学部です」


「え? ああ、理系。へぇ、結構頭いいんだね。理系はキャンパスも別のところにあるしね。私たち文学部や経済学部とはなかなか顔をあわせないか」


「でも、来年度から理系もすべて文系のほうのキャンパスに移りますよ。新しい建物も完成したようですから」


「へぇ、そうなんだ。確かにそんな話があったわね。サークルは? 入ってる?」


「サークルとかは、入っていないです。入っているんですか?」


 これを聞かれて弥生は殊更嬉しそうに頷く。友人たちと楽しめる時間が彼女の現在の生活の中で至福とある。考えるだけで楽しくなり、逆にそれが叶わないと不機嫌になるそうだ。


「本当は今日も遊ぶ予定だったのに… ねぇ」


 そう相槌を求められても滋は苦笑いしかできない。


「それで、何サークルなんですか?」


「バドミントンよ。これでも学校内じゃ一、二位の腕なのよ」


「魔法力なしで、ですか?」


「当たり前じゃないの。バドミントンのどこに魔法力を使うチャンスがあるのよ」


「いや、こう、すばやく動く魔法を使ったり、風を操ったりで、有利にできるのかなぁと思って…」


「残念ながら私にはそんな魔法は使えないわよ。私なんて炎を生んで放つくらいしかできないんだから。いってしまうとそういう『能力』よ。何でもできる魔法使いになりたいと思ったこともあるけど、でも現実にはそんな人、いないのよね。少なくとも私の知る限りではいないわ。火も水も風も大地も何だって操れるような魔法使い、そんな人がいたらこの業界の中でも大ニュースになるわね。激レアよ。それに一般の人の前で能力は使えないし。御法度、とは言わないまでも、極力使わないほうが自分自身のためになるからね。変に騒がれても仕事もし辛くなるし、周りから偏見を持たれても、ねぇ」


 そう緩く笑う彼女とて、人知を超えた能力を身につけてやっかみや疎外や迫害を受けないこともないだろう。少なからず一度は経験しているに違いないと、覚醒して日も浅い滋も悟る。それでも彼女にしたって桐生にしたって、自分の人生を明るく楽しく生きている。弥生と初対面の滋にも、そう見える。この人間としての一面はいわゆる一般人と何ら変わりがない。特殊な能力があろうとなかろうと、社会に順応する、しないの悩みは、人みな同じ。むしろ根暗で社会に溶け込めない一般人のほうが世の中には多いかもしれない。なるほど彼らが強いのも、彼らが覚醒するのも頷けるような気がする。ならば同じように覚醒できた自分にもまた、これから大変になるであろう人生を、それでも明るく楽しく過ごせていける才能があるのかもしれないと、滋は思う。そう思えることは案外と幸福で、急にUWという組織が居心地のいい場所に感じてくるのであった。


 そのうち日も沈んで、照明のない屋上では人の顔も見えづらくなる。雑誌の文字はもう読めない。弥生はスクッと立ち上がって、スカートの裾を払いながら、


「あんた、今日ここに何時までいろって言われてる?」


「え? いや、そういえば、そんな話は何も… 何時までいればいいんですか?」


「私だって知りたいの。まさか本当に徹夜しろなんて話じゃないわよね」


 弥生の、早く終わらせて遊びに行きたい一心は相も変わらず。携帯電話を使って直接桐生に掛けてみると、相手はすぐに出る。


「あんた今どこにいるのよ!」


 これまた鬱憤吐き出す大きな声で。すると、


「お前たちの後ろだけど」


 返事が弥生たちの背後からも聞こえる。


「いるならいるっていいなさいよ!」


「ちょうど今着いたんだろうが… でかい声出すなよ、両耳で痛いじゃねぇか」


「で、あんた何しに来たのよ。交代してくれるの?」


「いや、監視中止。ターゲットと思われる人の情報が入った。これからそいつの家に三人で行くぞ」


 そう真面目な顔して言うので、


「あんた、遊びに行っていたんじゃないのね?」


「当たり前だ! 人を何だと思っているんだよ」


 友だちと遊ぶ予定もどうやら諦めたか、弥生の顔もいよいよ引き締まる。比べて滋は、緊張が為に顔面から血の気が失せていく。



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