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情報はタダじゃない(後編)

「それじゃ早速、その情報とやらを教えてもらおうか」


「ええ、ではまず先にお代から頂きましょうか」


「さ…先払いだと?」


「それは常識でしょう」


 ドランクにすれば予定外。常識知らずと一瞬でも思われたことも屈辱で、憤懣が腹の底から続々と湧き上がると、何を血迷ったか、


「えぇい! 予定変更! 即実力行使! バーモン、奴を捕まえてしまえ!」


 が、元より乗る気のないバーモンには心と体に準備が不足して、狼狽えるばかりで手も出なければ足も動かない。


「ええい、どんくさい。私がやる!」


 手早く黒猫の首根っこを掴み上げ、側に屑篭を見つけてその中へと放り込む。篭の口を逆さにして床に押し付け、その上に座り込んで、


「さあ、ここから出して欲しければ情報をよこしたまえ。いやならこの事務所を物色してくれよう。金にがめつい黒猫君、好きなほうを選びたまえ」


 何たる早技、と、バーモンもついつい感心。


「よし、バーモン、いまのうちに手がかりになりそうなものを探してしまえ」


「え? あ、ハイっ」


 彼の体もこの返事でようやく動き出す。


 さて、黒猫の返事が皆無とくる。屑篭の中で暴れるわけでも喚くわけでもない。どうしたことかとゆすってみても反応がない。まさか死んだか逃げられたか。恐る恐る屑篭の中をそっと覗き込んでみると、やはりいない。


「いつの間に?」


「あ、あそこです! 照明の上!」


 バーモンの指差す先は、天井から吊り下げられた白熱灯の傘の上、そこに黒猫が四足で立っている。凛と構えて、ニャーと静かに鳴くや、ドランク目掛けて飛び掛かる。何をしたのか瞬の後には彼を気絶させてしまっている。次はもちろんバーモンへと振り返る。妖しく光った黒猫の目が彼を捉えると、これまた一直線に飛び掛かる。迫りくる黒猫は、夢か幻かバーモンには随分と巨大な猛獣に見えたという。


 二人が目を覚ますとすでに日暮れ。辺りは木々が鬱蒼と生えて、蛙の合唱が四方より聞こえてうるさい。誰に運ばれたか覚えてもおらず、それでも側には灯を点された提灯が一つ、メモが一枚。読めば「この道を南に静かに進んで塀を越えた御堂の中」と書かれてある。彼らが目覚めたのは確かに畔道の上。誰の手配かわからぬまま、兎にも角にも二人して道を南に歩けばそのうち塀が見えてくる。乗り越えると御堂が見え、側に監視役が一人。得意の催眠術で眠らせて、その隙に中へと忍び込む。そこには確かに「穴」がある。二人は嬉しさに打ち震え、喜び溢れて雄叫びを上げた。


「誰かいるぞ!」との声がする。これに押されるように二人は「穴」の中へと飛び込んでいくのであった。


 ただ、自分たちの財布から現金がごっそりと抜かれていたのだが、それに気付いたのは彼らが「あちら側」に着いて後のことである。



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