春の日
今年もまた、タンポポの咲き誇る季節となった。
だけれど私は1輪のタンポポも摘むことはおろか、踏むことすらできない。
君が
祠なんかただの飾りだろ!
そう言って、酔った勢いのまま祠を崩したあの日。
君は崩れた祠から発せられた光に包まれて
タンポポにその姿を変えてしまった。
あれからもう何年も経つけれど、
ここに、私の目の前に咲いているタンポポはもしかしたら君の子孫なんじゃないか
そう思ってしまう。
だから私は今でもタンポポを摘むことも踏むことも絶対にできないんだ。
だって君は――
祠を壊しちゃうような人でも――
それでも私の大切な人だったから――
【タンポポ】
花言葉:真心の愛、思わせぶり。一説によれば、神託、軽率。