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第4話 遠い想い

 初夏の朝はすがすがしい。ややひんやりとしたやわらかい風が肌にふれる。聖護はこんな早朝が好きだった。昔から早起きで、これに関しては親を困らせたことがない。今朝もいつもより早く登校して、まだ人のいない学校の静かで穏やかな朝の雰囲気を味わっていた。聖護にはお気に入りの木がある。校門の程近くに、校庭につながる小さな林があって、その奥の方に大きな樫の木が学校の塀の上に大きく手を伸ばしていた。聖護は塀に飛びつくと少しみぞおちが痛んだが、かまわず軽々塀の上に乗り上げて、簡単に丈夫で大きな枝にたどり着いた。聖護はそこに座って、太い幹にもたれかかろうとして再びみぞおちが痛んだ。


「…っつ!あいつ…。」


聖護は昨日の事を思い出しながらゆっくり背中を幹に預けた。ここは眺めがいい。入学してほどなく見つけた場所だ。学校が小高い丘の上に建っているので町全体が見渡せる。聖護は時折、考え事があるとここへ来ていた。まだ静かな閑散とした町を一通りゆっくり眺めてから、聖護は校門の近くに目をやった。あいつはどこに住んでいるのだろう、そう言えばあいつのこと何も知らない、聖護はふと昨日の涼子の言葉を思い出した。


ーあの子は決して人を近づけないし、誰にも近づかないわ。ー


なぜだろう、過去に何かあったのだろうか、聖護はふとそのことが気になった。そう言えば涼子は昔からの知り合いのような口ぶりだった。涼子なら何か知っているかもしれない。聖護は涼子に紫織のことをもう少し聞いてみようと思い立ったが、昨日、涼子にからかわれたことが同時に思い出されてひっかかった。


ーその気あったりして。ー


聖護はかき消すように首を振った。


「ばかだなあ、友達だよ。友達!」


自分を納得させるように思わず独り言を吐いた。それでも、思い出しただけで心臓が高鳴る。聖護は自分がなぜこんなに動揺しているのかよくわからなかったが、紫織のことが気になるのは事実だった。しかもあの蒼い瞳。どこかで覚えがあるはずなのに、思い出せない。聖護はもどかしく、もやもやした気持ちをもてあました。


「ちぇ!しかたない、昼にでも美人の諏訪先生様に会いにいくとするか!」


苦虫をつぶしたような顔でつぶやいた。聖護は気が短い。元来せっかちで曖昧さや優柔不断なことが嫌いである。このハッキリした気質とすばやい行動力、後を引かない天性の明るさが人をひきつける。いわゆる生粋の体育会系のタイプである。

 聖護は覚悟を決めると安心したようにもう一度目の前の景色に意識を向けた。ふと校門の手前で暗いメタリックグレーのベンツがとまったのが目にはいった。右側の運転席から運転していた男が降りてくる。黒っぽいスーツを着た30ぐらいの知的な長身の男だった。男は運転手とは思えないような品のよさと物腰で、上流の優雅な紳士のようにも見える。顔立ちはシャープな作りで端正な彫刻のように整っていた。男は左側にまわりこむと滑らかな無駄のない動きで後部のドアをあけて頭を下げる。車から出てきたのは紫織だった。男はドアを閉めると紫織に近づき何か声をかけている。紫織は男の顔を見ることなく、黙ってうなづいていた。


「あいつ…そう言えば学長の甥っていっってたな。例にもれず、いいとこのおぼっちゃんか。まあ、ここはそんなやつらが多いのは事実だけど、専用車で登校かよ。いい身分だな。」


聖護はぶつぶつ独り言をはいて、ふと紫織の言葉を思い出した。


ー心臓あまり丈夫じゃなくて…。ー


体が弱いなら送り迎えもするよなと納得しかかったが、同時に昨日紫織が自分をかばってくれた時のことも思い出した。


「あんなことしても平気なんて本当に心臓が弱いのか?」


しかも、聖護のみぞおちに見事にヒットさせて気を失わせている。どう考えても、体が弱くて、あまり体を動かしてないやつに出来る芸当じゃない、と聖護はとっさに立ち上がって木から下りて校門に向かっていった。


「よう!」


聖護が校門の前で紫織を呼び止めた。紫織は一瞬足をとめたがそのまま歩き出した。聖護は通り過ぎようとする紫織に近づいた。


「無視かよ。紫織。」


紫織は振り向かずに立ち止まる。


「・・・おはよう。」


淡々と言うとそのまままた歩き出した。聖護は紫織の態度にむかっときた。


「紫織!俺の顔を見ろよ!なんで逃げるんだ!」


紫織は驚いたように半身振り返り、少し眉を吊り上げ、不機嫌そうに言葉をはきだした。


「逃げる?なんのことだ?昨日も言っただろう?僕にかかわるなって。ひとりでいるのが好きなんだ。ほっといてくれ!」


聖護はすかさず紫織の腕をつかみ強引に自分のほうに体を向けさせた。


「なんでそんな態度なんだよ!俺に何か言いたいことがあるんだろう?なんなんだよ、その目は!なぜそんな目で俺を見るんだ!なんかひっかかるんだよ!お前はなんで人を遠ざけるんだ?」


聖護がムキになって声を荒げた。腕をつかまれた紫織は一瞬はっとしたが、次の瞬間さっと目をそらした。ほんの少し間があって大きく息を吸い込むと聖護の腕を振り払って怒りをあらわにした。


「うぬぼれもいいとこだ。君は傲慢なやつだな!僕の気持ちもわからないくせに自分のことばかり押し付けて!君には関係ないだろう!僕にかかわらないでくれよ!僕は君みたいな無遠慮でめでたいやつ大嫌いなんだよ!」


紫織はそう言い放つと一瞬困ったような申し訳なさそうな表情をしたが、すぐにきびすを返し、歩いて行ってしまった。残された聖護はしばし呆然としていた。

 結局、昼まで何も手につかず、授業中、斜め前方に見える紫織の姿が目に入るたびに校門での光景がぶり返されて落ち着かなかった。聖護は人に嫌いとはっきり言われたことは初めてだった。しかもこんなにイラつかされて翻弄される相手は未だかつてなかった。友達は多く、明るく人懐っこい性格のためすぐに誰とでもと仲良くなり、多くの人が聖護を自然に受け入れていた。それだけに紫織に正面きって嫌いといわれたことがひどく気になる。自分は独りよがりだったのか、なんであんなにムキになってあいつを追いつめたりしたのか、聖護は自分でも不思議だった。紫織の前だとつい感情的になって押さえがきかない。でも、なぜ、あいつはああまでかたくなに人を拒むのか、あの一瞬見せた紫織のやりきれないようなすまなそうな表情が心にひっかかる。なんなんだろう、ますますわからない。聖護はほとんど授業を圏外モードでやり過ごし、昼になった途端、昼食もそこそこ涼子の元へ急いだ。


 昼の医務室は出入りが結構多い。涼子がこの4月から担当するようになってからその人口は確実に増えてきている。体の具合が悪いというより、うれしそうに診察を受けにくる。男子部で若くて綺麗な女医さんとなれば想像がつく。多くがたいしたことはない。ちょっとすりむいただの胃の調子が悪いだの、頭痛だのとなにか理由をつけてやってくる。もっとも、涼子は見かけの容姿とは違って、豪快でさっぱりしていてりりしい。その辺の男より男らしい気質である。さぼりや仮病は見事に見破って適当にあしらって教室にかえしている。

 聖護は勇み足で医務室まで来たが、昨日の涼子の言葉が頭をよぎってノックしようと思いつつ少し躊躇した。しかし、自分のイラつく気持ちを何とかしたくてもう一度ノックを試みようと手を上げたその時、ドアが開いた。目の前に現れたのは紫織だった。聖護は不意打ちをくらってどきっとしたが、一方紫織の方は驚くそぶりもなく、目を合わせないようにそのまま出て行こうとした。しかし、部屋の奥から涼子のからかうような声がして振り返った。


「なーんだ、あなたたち気が合うわねえ。」


笑いながら近づいてくる。涼子はおおらかに屈託なく笑う。その表情はさっぱりした天性の明るさを表していた。


「聖護くん、まさか調子が悪いんじゃないでしょう?」


唐突に質問された聖護は紫織を前にややしどろもどろになる。


「あ、いや、その、用事があって。」


「私に?」


涼子は聖護の顔を見てきょとんとする。


「…はい。」


聖護が紫織をちらっとみて涼子に向き直って返事をすると、紫織は無視して部屋を出て行った。 聖護は自分を徹底的に無視する紫織の態度にため息をついて、紫織の後ろ姿をしばらく眺めてから医務室の中にはいった。しばらくは、診察が目当ての学生が数人いたが、一時待つと、すぐに人が引けて静かになった。


「どうぞ、聖護くん、ここにかけて。何か飲む?」


涼子は自分の診察用デスクのそばの患者用の椅子をすすめた。涼子が飲み物を持ってくる間に聖護は部屋を眺めた。

 医務室の中は、慣れ親しんだフェノールの匂いと外のいろいろな木や草花の匂いを含んださわやかな空気が入り混じっていた。化学的な匂いと外の生き物たちがかもし出す匂いは酷く似合わないような組み合わせなのに涼子がいるとなんだか不思議と自然に感じる。涼子がマグカップを2つもって席にもどると聖護に差し出した。


「はい、コーヒーしかないけど。砂糖とミルクもたっぷり入れてあるわ。」


聖護はマグカップを受け取り、一口飲んだ。コーヒーの香りと甘さが口の中に広がる。聖護はなんだか少し、ほっとする気分になった。その様子を涼子は眺めて目を細めて少し微笑んだ。ふと聖護がその視線に気づき、顔を上げた。


「諏訪先生はどうして医者になったの?」


涼子は唐突な質問に驚いた顔をしたが、すぐに笑って応えた。


「うん、実はね、紫織くんのお父さんの影響よ。」


「あいつの親父も医者なの?」


「そうよ。もう亡くなってしまったけどね。」


涼子はふと寂しそうな目をすると、窓の外に目をやった。


「優秀で立派な先生だったわ。私もこの学校の学生だったの。中等部の頃、母が病気でこの病院にお世話になった時、担当の先生が間宮先生だったの。本当に優しくて熱心で、時に厳しいりっぱな先生だったわ。母は結局亡くなってしまったけど、本当に感謝してるわ。私はその時、将来医者になりたいと思ったのよ。」


聖護は黙って聞いていた。


「ようやく、医師免許もとれてこれからって時に、亡くなってしまったわ。私は少しでも先生に近づきたいと思ってこの病院に居座ることに決めたのよ。」


涼子は急に振り向くともういつもの笑顔に戻っていた。


「でも、聖護くん、そんなことを聞きに来たんじゃないでしょ?」


涼子は笑って聖護にウインクした。聖護は驚いて真っ赤になった。


「あははは。君はわかりやすいわねえ。ふふふ。」


さらに聖護は赤くなる。突然涼子がかがんで聖護の顔を覗き込んだ。

さっきまでのからかうような笑いが涼子の顔から消えた。あの真面目な顔だ。この顔になると妙に空気がかわる。


「紫織くんのことでしょう?」


聖護は言い当てられるとはっとして床に目を落とした。そしてうなずいた。


「あははは。本当に君はわかりやすいわねえ。だから人に好かれるのね。正直だし、正義感も人一倍強いしね。人の気持ちをつかむ天性の魅力があるわね。君の周りにはいつも人の笑顔があふれているでしょう?」


聖護はおどろいてお顔を上げて涼子の顔を見つめた。涼子は目があうとふっと笑い、話を続けた。


「おどろいた?なんで君の事をよく知っているかというとね、あなたのお父様を存知上げてるからよ。あなたのお話よく伺うわ。須崎先生にそっくりね。いい先生よ。強くてやさしくて頼りになる立派な先生ね。」


そういうと驚いた顔して話を聞いている聖護の頬をぱんぱんと軽くたたいた。涼子の手はひんやりとしてフェノールの匂いがした。父もそうだった。父はいつもフェノールの匂いが残り香のようにかすかにしていた。それがいつのまにか父の匂いとして記憶され、聖護にはなじんで安心できる匂いになっていた。さっきまで紫織のことでいらいらして落ち着きがなくもてあましていた気持ちも、いつのまにか静まっておだやかな気持ちに変わっていった。涼子は聖護の様子を確認しながら話を続けた。


「そうね、うまく言えないけど、君が太陽のまぶしい恩恵を受けているとしたなら、紫織くんはね、夜の…今はまだ闇の中にいるわ。そう、深くて暗い闇の中で一人耐えているってとこかしら。君たちは陽と陰でまるで反対ね。でも、反対の性質は引き合うわ。」


聖護は涼子の話が紫織の話に戻るとはっとして聞き返した。


「あいつはどうして人を近づけないの?」


一瞬静かな空気が流れた。


「…紫織くんはね、幼い時からいろいろなものを背負ってきたの。彼が生まれるのと引き換えにお母様がなくなって、母親の愛も知らずに育ったわ。でも、間宮先生が生きていらっしゃったころは、まだ子供らしい、素直で天使のような子だったと聞いているわ。間宮先生がそれは愛しんで彼を支えていたのよ。でも、10歳のときに間宮先生を亡くしてから、彼の目から光が消えてしまったの。今でも覚えているわ。お葬式の時の小さくて弱々しい彼の後姿を・・・。紫織くんね、お父様と最後の別れの後、心労で倒れてしばらく意識不明だったの。ある日、突然目をさましてから変わったわ。覚悟したんだと思う。すべてを自分で背負ったのね、きっと。昨日あなたに言ったことは本当よ。彼はあなたに関しては心配したり怒ったり、あんなに人間らしく感情を表わすんですもの、本当驚いたわ。君の何かが彼をひきつけるのよね。」


聖護は涼子の顔を見ながら黙って聞いている。


「いずれにせよ、彼はこの先、心を通わせられる友達が必要よ。一人では必ず行き詰るわ。彼はとでも繊細でデリケートな子なの。頭もいいし、思慮深くて驚くほど人に対して優しさを持っている子なのよ。でも、時にそれが彼を追い詰めるわ。だから、君みたいな強くてまっすぐな人の差し伸べる手が必要だわ。」


聖護は涼子の顔から視線をはずして考えこむような顔をした。


「どうしたの?少し重かった?」


涼子は心配そうに聖護を見た。


「いえ…、心をかよわせるっていってもどうしたら?俺、今朝、あいつに…僕にかかわるな、おまえなんか嫌いだって言われた。あいつ、近づこうとするとすぐに振り払うんだ。だけど、俺は振り払われるほどあいつのことが気になって仕方ないんだ。あの瞳が助けてっていってるような気がしてならないんだ。先生、どうしたらいいんだろう?どうしたら、あいつの心を開かせることができるんだろう?」


聖護は顔を上げて涼子をじっと見つめた。涼子はしばらく聖護の目をみて安心したように微笑んだ。


「よかったわ。君に話すべきか悩んだけど、君からこちらに飛び込んできてくれたから。君は強くてやさしくていい男ね。聖護くんあせらないで。君ならきっと紫織くんの心を開くことができるわよ。長く凍っていたんだもの。そう簡単に溶けないわ。君の暖かい太陽のエネルギーで少しずつ溶かせばいいのよ。聖護くんらしくね。君ならできると思うわ。彼のそばに居ることで彼もそのうち君が居ることに慣れるわよ。ふふふ。」


聖護ははっとした。そうだ、自分が気になるからっていらいらして…。なぜそんなにあせってたんだろう。紫織の気持ち…。大事なことを忘れていた。聖護は自分がいつもの調子で一方的だったことに気付き、自分を戒めた。


「先生、ありがとう。もう、いくよ。」


聖護はすっきりしたような明るい表情で立ち上がって医務室を出て行こうとドアのところまで来ると、ふともうひとつ聞きたいことを思い出した。


「あ、先生、もうひとつ。あいつ、心臓弱いの?運動とめられてるって。」


諏訪はにこにこしながら


「そうね、ちょっと昔から体弱いから、時どき負担になるのよ。激しいスポーツでなければ普通に過ごせるんだけどね。万一の場合を考えて授業や部活動みたいなのはストップしてるのよ。」


「持病があるの?」


「持病…。まあ、そんなとこね。」


涼子の顔が一瞬曇った。聖護は少し気になったが、午後の授業がはじまる時間が迫っていたのでそのまま医務室をあとにした。

 授業中、紫織のことが気になったが、今朝よりはましだった。授業をすませると校庭に飛び出した。聖護は集中してボールを追いかけることでいらいらした気持ちを払拭した。


 紫織は、午後の授業が終わると医務室に顔を出した。体育の授業の時や他に時間があると医務室か図書館で過ごすのが日課だった。あまり人と話をしなくてもいい上に、静かである。また、一応、授業中は所在が明確になるところに居ないといけないこともあって、図書館では準備室、医務室ではベッドが置いてある休養室で本を呼んで過ごした。紫織は涼子に軽く会釈をすると休養室の窓際の椅子に腰掛けて本を開いた。しばらく本に視線を落としていたが、ふと顔を上げて窓の外に目をやり、そのままじっと眺めていた。窓の外には聖護がボールを追いかけて飛び回っていた。涼子はその様子を時折見ていて、診察用のデスクのところから紫織に声をかけた。


「気になる?」


紫織ははっとしてすぐに本に目を落とし、


「別に。」


ぼそっというとそれきり顔を上げない。涼子は小さなため息をついた。


「聖護くん、あなたのことを気にしていたわ。あなたと友達になりたいって。」


紫織はだまっている。


「あなたが人を近づけたくない気持ちはわかるわ。傍に人を置けば危険をはらむものね。でも、聖護くんはきっとあなたを助けられる子よ。まっすぐで強い素敵な子よ。あなたの理解者が居てもいいんじゃないかしら。総真も心配してたわ。」


紫織は本を閉じて立ち上がって涼子を不機嫌そうに見た。


「僕は一人でいるほうが好きなんだ。」


涼子は真顔で続けた。


「たしかにあなたは特別よ。でも、みんなと同じようにはいかないとは思うけど、もう少し学生生活を楽しんだら? 総真もそう思ってるわ。」


紫織は沈黙したまま涼子から視線をはずし、立ち去ろうとした。


「あなたはそうやってすぐ自分を隠すのね。周りを拒む気持ちはわかるけど、でも、聖護くんと向かいあってるときだけはポーカーフェイスができないみたいね。素直になったら?」


紫織の足が一瞬とまったが、そのまま医務室を出て行った。涼子は大きくため息をつくと


「いいコンビだわ。あのクールな子がいつも手放したことがない本を置いていくぐらい動揺するなんて。聖護くん、なかなかやるわね。ふふふ。」


紫織の本を取り上げて微笑んだ。普通の子の人生を持っちゃいけないわけじゃないのよ、紫織くん。涼子は心の中でつぶやいた。


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