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第15話 赤い瞳

紫織VS笠井です。ちょっと暴力的な表現有です。ご注意を。

 笠井は黙って歩いていく。紫織はその不気味な妖気をはなっている華奢な少年の後ろ姿をじっと睨みつつ、少し距離をあけてついて行った。連絡通路を2つ抜けて、講堂へ出る。ここは、学院の建物の中でも古いものだった。明治時代に建てられて昭和になって2〜3度改修して手をいれているが、ゴシック調のクラシカルな造りは当時のままの姿を残していた。

 中には当然誰もいない。壁には大きな窓がいくつも並んでいて、普段なら外の明るい光がさしこんで、美しい景色を映し出す。しかし、今日はガタガタと今にも割れんばかりに音を立てて振動し、そのガラスは激しい雨に打たれて薄暗く景色すらゆがんで見えた。建物を殴るように打ち付ける風雨の音が二人の足音をかき消して行く。

 笠井が足を止めて振り返った。紫織も立ち止まる。


「なぜ、僕を見ていたの?」


笠井が薄いグレーのひややかな瞳で紫織を捉える。紫織は警戒をしてじっと笠井を眺めるのみで返事をしない。


「ふん…、まあいい。」


笠井が鼻で笑い、紫織を捉えたままもう一度にやりと笑った。そして血のように赤く染まった唇を動かした。


「おまえは何者だ?」


笠井の声がやや細い少年の声から太くて低い男の声に変わる。その瞬間、紫織の蒼い瞳がぼわんと紫に変化した。


「ふふふ…、人ではないな。」


不気味に笑うと笠井の目が赤く光りはじめる。笠井の目は全体が血のように赤く、中心の瞳孔は肉食獣のように縦に細長く金色に鋭い光を放っていた。


「ふん、リーディングか。こざかしいことを。」


そう言うと笠井は焦点をあわせるようにその金色に光る瞳孔をじわっと広げて紫織を捉えた。紫織は途端に体が動かなくなる。身体は硬直して、微動たりともしない。血の気が急激に引いていった。笠井は爬虫類が獲物に向けるようなしめった気持ち悪い視線を紫織に向けながら紫織に近づいてくる。笠井の目から視線を逸らすことができない。体中が狂ったように打ち付ける心臓になったみたいに敏感に迫る危険に反応していた。笠井が紫織の首に手をかけてくる。細く華奢な手がやんわり締め上げた。


「ふふふ。人間の魂より、おまえのほうが格段に味も質も高い。人間の魂なぞ、闇に落として追い詰めないとまともな味にならないからな。私は運がいい。極上の魂が自らから転がりこんで来たんだからな。」


「やはり…おまえか、斉藤の心を追いつめたのは…。」


笠井の手が少し首を圧迫していたが、話しだけはなんとかできるようだった。紫織は笠井の金色の目を見つめたまま、低くくぐもった声を発した。


「ふん?では、おまえか。私の狩を邪魔してくれたのは…。」


一瞬面白くないといった顔をすると、すぐに今にも喰らいつきそうな獰猛な顔に変化する。金色の瞳孔がさらに広がって光った。それと同時に紫織の首にかけられた手に力がこもる。


「ううっ!」


紫織がうめき声をあげる。みるみるうちに笠井はひんやりとしたグレーの光で覆われていった。その光が、笠井の手を介して紫織を飲み込んでいく。紫織はだんだん陶酔していくかのように苦しさが消えていった。甘美で恍惚とした感覚が紫織を覆っていく。笠井に首を絞められていた紫織の美しい清麗な顔が妖艶な顔へと変化していった。


「いい顔だ…。どうだ、気持ちよくなってきただろう?おまえの魂は極上の気を放っているからな、最高の味に仕上げてやるよ。」


そういって、笠井は笑うと紫織の頬をねっとりと舐め上げた。


「その汚い手を離せ。」


威圧するような一言に笠井はビクッとする。紫織の紫の瞳が赤く鋭く光ると真っ赤なルビーをはめこんだような瞳にかわっていった。笠井は驚いて怯えたように顔をゆがませる。紫織がひややかに見下すようににんまり笑った。笠井はゾクッと寒気がして、全身に鳥肌が立つ。おそるおそる手をはずして後退る。


「おまえは…何…者…?」


「誰に口を聞いている?」


紫織が鋭い目つきで凄気を放ってじわりじわりと笠井を追い詰めるように近づいていく。


「そんなばかな…。なぜ、動ける?」


笠井の顔が恐怖でゆがんでいく。


「ばかか、私にこんな小細工は通用するはずもないだろう。」


紫織が静かに一瞥する。笠井はその場にへなへなと崩れ落ちていった。


「なさけないな。ふん、まあ、おまえごときの外道にはお似合いだがな。」


ひややかに見下したように笑う。


「おとなしくしていれば見過ごしてやったものを。おまえはそのけがらわしい気で私に触れたのだ。それ相応の罰を受けるがよい。」


紫織はそう冷たく言い放つと、ルビーのような真っ赤な瞳でじっと笠井を見た。笠井は途端に動けなくなり、恐怖にゆがんだ顔を紫織に向けたまま固まっていた。紫織はその美しく妖艶な顔に涼しい笑いを浮かべながら笠井に近づくと、シャツの襟を掴み上げて立ち上がらせる。一瞬目が鋭く光ったかと思うと笠井の胸に力をこめてその手を突き刺した。肉をえぐるような鈍い音がする。


ぐちゃっ…。


笠井の体がピクッと動いたかと思うとそのまま動きをとめた。紫織がにやっと笑った。








紫織になにが起こったのか、次回笠井はどうなる?聖護は?

すみません、なるべく早く更新します。次回も是非お付き合いください。よろしくお願いします。

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