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父、ジョン の愛刀「紅露」これは私がこの世で一番嫌いな刀だ。

紅露、つまり血を意味する。

あの刀は父をここまでに叩き挙げた刀だ。

いくせんもの人間達の血を吸いつづける、妖刀。

私はその刀を見た瞬間、幼い日に記憶が蘇った。


ある和室、そこには父の刀が床の間に飾ってあって、目の前にもう一本刀がある。

美しい黒地の桜模様。父とは形の違う刀。

つばがないのだ。

父はそれを手にとり、鞘から取り出して私にそれを見せる。

「Maria、これはお前の刀だ。大人になったらお前はこれを相棒にして戦ってゆくんだぞ。」

「はいっ。パパ。」

「いい子だな。Maria、いいかこの刀の名は(紅桜)だ。」

紅桜・・・・。


私は手にとっていた弱った刀を捨てて口を開いた。

「パパ、紅桜あるかしら。パパを殺すならあれで殺したいわ。」

「紅桜か・・・。懐かしい名だな。あの刀は今東京にあるな。」

「なら、東京まで行きましょう。」

「それもいいだろう。じゃあ一時休戦だ。」

その夜、私と父は飛行機の中だった。

父はふと口を開いた。

「お前、私の後を継がないといったが、一体これからどうしようと考えていたんだ。」

「この世界から消えたい。ただそれだけ。もう、これ以上ごたごたはごめんなの。家族で幸せに穏やかに生活出来るのがどんなに幸せかパパにはわからないだろうけど・・・。」

「だが、お前はマフィアの娘に生まれ、そして、育った。ごたごたはついて回るものだ。それが、私達の宿命だ。」

「そんなの、勝手ね。私は散々いやな思いをしてきたわ。もう、こりごりよ。」

「だから、リックにかけてみるのか?」

「何で知ってるの?」

「私を甘く見ないでおくれ。そんなことお見通しさ。」

父はそう言って、意地悪く笑う。

「お前はリックという男がどんな男か知っているか?」

「私と同じように家族を殺された、そして復讐をしている。」

「じゃあ、言っていたか?彼がMI6の人間だということを。」

「何ですって?」

「しかし、今となっては彼はお払い箱にされてしまったがな。」

「どういうこと?」

「仕事でドジをふんだんだよ。おまけにそれが元で家族を殺されたというところさ。お前、そんな男にかけてるのか?」

「別に彼の為に動くわけじゃないわ。それにパパ、私いまおなかの中に子供がいるの。その子のためにも新しく生き直すつもりよ。」

「お前妊娠してるのか、まさか、リックとの子か?」

「いいえ、彼との子じゃあないわ。パパは知らない人よ。」

「ロバートだろう。ジンから正式にじゃないが、彼をお前が殺す前に二人は結婚したと聞いているからな。」

「そんなことまで・・・。」

「お前の情報は全てお見通しなんだよ。」

「パパは最低ね。」

「不愉快だ。」

そう言って、父は口を閉じた。

そして、空港につくまで口を開くことはなかった。


父の自宅は東京の白金にある。

父は一度一家を壊滅させて死を装って、東京に移った。

そして、計画道理、約束のあったやくざと組んで日本マフィアの頂点に立った。

とはいっても、彼は黒幕で表には決して出ない。

私は初めて父の家に足を踏み入れた。

日本庭園が広がりその奥に離れがあってそのとなりに大きな和風の屋敷がある。

父がにわに足を踏み入れた瞬間、玄関から4、5人の着物を着た女性たちが出てきた。

「志乃、離れに茶を準備しておきなさい。あと、奥の間にある紅桜を持ってきなさい。」

そういって父は庭を散歩しだした。

志乃という紫の着物を着た老年の女性は父に一礼するとそそくさと建物の中に入っていった。

私はただただ広い庭をのんびり歩いた。

かれさんすいの石庭に池に滝、日本の庭園を全部作ってある。

そして、刀で真っ二つに切られた竹たち。

父が居合の練習をしているところなんだろう。

「Maria、来なさい。こちらで一杯、茶でも飲みさい。志乃の点前はすばらしいぞ。」

私は父に言われるとおり離れに入って、志乃の入れた茶を飲んだ。

ただの抹茶だ。

父はその後、私に紅桜を手渡した。

「お前に渡す日を描きながら、毎日手入れを欠かさなかった。Maria、私はお前を殺したくはない。考え直せ。私の後をついだって子育ては出来る。結婚だって、出来ないことはない。」

「パパ、生まれてきた子は私と同じ生き方をしなくちゃあいけないのよ。それがどんなに辛く、不幸なことか私は身を持って知っている。それをさせたくないから私はこの世界から消えるの。パパ、悪いけど私の心はもう決まっているわ。」

「それは残念だ。」

二人は同時に立ち上がり庭に出た。

日はすでに傾いていて、夜闇はすぐそこだった。


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