決着
京都 嵐山
私はここに一度だけ来たことがある。
仕事とかではない。
まだ、父や母が健在だった頃、旅行できたのだ。
父は親日家で事あるたびに日本には来ていた。
なので父は日本のマフィアつまり、やくざとは繋がりが深かった。
しかし、父が死んでからは一度も足を踏み入れたことはなかった。
秋の嵐山は絶景だった。美しさを表しようもなかった。
私は嵐山の奥地、の荒れ寺に立っていた。
私の目の前には二人の男が立っている。
白髪の混じった初老の全身黒ずくめ、青い瞳の男、彼がジンだ。
そして、その隣に立つブロンドヘアーの眼力の強い屈強な体つきの男。
こいつが、最後の標的、ベネディクトだ。
この男はその人生も境遇も私にそっくりだった。
彼も父親がイタリアで成り上がったマフィアのボスで抗争の果て一家は壊滅し、彼は15歳で天涯孤独の身になってコロンビアで拾われて優秀な殺し屋になった。
そして、ジンと出会い。ジンに気に入られ後継者に納まった。
そして、私の娘達を殺すように指示し私を監獄に閉じ込めた。
最初に口を開いたのはジンだった。
「ひさしぶりだ。Maria。元気だったか?」
「久しぶりね。ジン・・・。元気だったか?おかげさまでね。いろんな目にあったけど。あなたの選んだ後継者のお陰でね。」
「聞いているよ。全く、それを聞いた時私も激怒したさ。Maria心配ない私がコイツにお仕置きをしておいた。もう、怒るのはやめなさい。」
彼は私を娘のように思っている。
彼は私になだめるように微笑みかけるとベネディクトの服の袖を挙げた。
すると、そこには無数の痣があった。
ベネディクトは私を真っ直ぐに見て土下座をした。
土下座の意味。それは私もよく知っている。
「Maria。君へのし打ち許してくれ。あれは私の間違いだった。私の罪は重い、そのための償いはかならず一生かけて・・・。どうか、許してくれ。」
彼はそう言って頭を下げた。
私は余計、腹立たしかった。私は許す気なんてなかった。
ロバートだって私は殺した。もう、引き返せない・・・。
いや、引き返さない。私はベネディクトを見て口を開いた。
「いいわ。すべて、水に流しましょう。でも、この事実を決してあなたは忘れてはいけないわ。
償いはあんたは一生私の犬になること、わかったわね・・。」
「そうか、ありがとう。本当にすまなかった。」
「和解も成立した。さあ、Maria、仕事を始める。」
「仕事内容は?」
「あの書類を依頼人に渡さなくてはいけない。」
「どうして、あの書類は政府からの預かり物でしょう?誰にも渡せない。依頼人が政府要人でなくては・・・。」
「そうだな。あの書類は過去の政府の未発覚の汚職の経歴を記してあるからな。政府は我々に保管を依頼した。我々の活動に目を瞑るということを条件に・・・。しかし、一年前に就任した大統領はこの契約を無視して、我々をつぶしにかかってきた。奴らは完全に書類ごと私達を潰す気でいるらしい。だから、書類を流出させる。」
「だから、書類が必要なのね。」
「ああ、しかし、書類の扱いは君に任せたままだ。教えてくれないかどこにあるのか。」
「私が組織を辞める前、書類は焼却処理してフラッシュメモリーに保存してあるわ。」
「そのメモリーはどこへ。」
「ここよ。」
そういって私は自分の胸に手を当てた。
「肋骨の間に埋め込んであるわ。」
「はっはっはっはっ!そうか、さすがだな。よし、では行くとしよう。」
そう言って私達は山の奥にある別荘に入った。
おくの部屋に通されて私達は御簾越しに依頼人を挟む形で座った。
御簾が邪魔して依頼人が分からない。
しかし、依頼人は英語を話している。どうやら日本人ではないようだった。
「それで、依頼の品は?」
「それは後日お渡しします。契約の内容がすべて遂行された暁に。」
「そうか、では二三日待ってもらうとしよう。」
「分かりました。では。」
そう言って、私達が席を立とうとしたときだった。
「そこの女性。ちょっと残りなさい。」
男が私にそう声をかけた。私はすぐのその場に残った。
「名前をおしえてくれないか。」
「Mariaです。」
「Maria・・・・。おい、御簾を上げなさい。」
すると、世話役の女の人が御簾を上げた。その先に座る人物に私は驚いた。
「お父さん・・・。」
そう、その先にいたのは死んだはずの父がいたのだ。




