二人目 私の失ったものを持っている男
Mariaの復讐リスト
1 一人目<完了>
2 テリー<今回>
私はイギリスに向った。
テリーを殺すために。
私はロンドンの郊外に向かった。
テリーには妻に子供が二人いる。
過去を捨て新しいなをもって普通の商社マンとして生活していた。
いまや彼は私の失った全てを持っている。
許せない…。私から全てを奪ったくせに…
緑色の芝生に転がる遊具
私は憎しみを込めて芝生を踏みドアの前に立った。
陽気な午後、彼がいるはずはない。
勿論だ、だからこそ私は来たのだ。
ベルを押すと颯爽と彼の妻が出てきた。
「はい。どなた?」
三十代半ばの気品のある笑顔を持った彼女は私に微笑んできた。
御愁傷様・・。旦那を選び間違えたよあんたは・・・。
私は穏やかに微笑んで、
「こんにちは。クリスいる?私、彼の異母兄弟の姉なんです。」
彼女はとても驚いた顔をする。
「クリスの親戚の方?」
「クリス、もしかして俺は天涯孤独なんだとか言っていた?仕方ないわよね、だって肉親と言える私はずっと連絡もしないで旅をしているんだもの。いないも同然だから。」
「そうなんですか。それは、はじめまして妻のキャシーです。そして、」
彼女の両脇には二人の娘がべったりと寄り添っていた。
「娘のジェにファーとメリーです。さあ、パパのお姉さんにご挨拶なさい。」
ジェニファーとメリー?私の娘達と同じ名前じゃない。
私ははらわたが煮え繰り返った。しかし、ここで一思いに殺すなんてできない。
それじゃあ全ての計画が台無しだ。
「こんにちは、おばさん。」
子供達が私に挨拶をしてきた。私は泣き出しそうだった。
しかし、涙を耐えて微笑んだ。
「こんにちは、ジェニファー、メリー、Mariaおばさんよ。よろしくね。」
そういって私は二人を抱きしめた。
彼女は私をリビングへ招くとコーヒーを出してくれた。
相当暇を持て余していたらしく、彼女の顔はとても喜んでいた。
私はミルクの渦を見つめながら口を開いた。
「クリスの様子はどう?元気にしてる?」
「仕事が忙しすぎて、私達はほったらかしにされてるわ。もう、何週間も休暇を取ってないのよ。」
「そう、あの子とってもまじめだからね・・・。」
「まったく、私達を何だと思ってるのって思うの・・・。確かにおかげで収入が多いから生活は豊かよでも、娘達はパパの顔がわからないって言うのよ・・・。」
だいぶ、不満がたまっているようだった。
私は渦をずっと眺めていた。
彼女は続ける。
「娘が自分の父親の顔がわからないって言うのよ。そんなのひどすぎない?でも、全然、彼気にしてないのよ・・・。ねえ、Mariaあなたからの何か言ってくれない?」
「そうね・・・。このままじゃ、いけないわね。どうかしら今日私が彼に電話するわ。レストランで食事をするの。みんなでね。あの子は優しい子だからきっときてくれるわ。そのときに話し合いましょう。」
私は彼女を落着かせるよう微笑んだ。
「本当!ありがとう。すごい嬉しいわ。じゃあ、ぜんぶお願いするわねお姉さん。」
彼女は私の手を握って感謝いっぱいに笑った。
私はコーヒーを飲み干し、彼の携帯の番号を聞きだし準備をするわと言って家を出た。
そして、私は電話をかけた。
「もしもし。」
テリーの声だ。全てが蘇ってきた。
「久しぶりね・・・。テリー」
「・・・。」
「覚えてる?私よ、Maria。」
「何しにきたんだ。」
「冷たいわね。昔の同僚にそんな口の聞き方しないでよ。」
「刑務所の中じゃないのか。」
「ええ、狭いしつまんなかったから出てきたの。そとはやっぱりいいわね。そうだわ、あなたの奥さん綺麗な人ね、でも、とっても怒っていたわ・・・。あれじゃあ美人が台無しよ。あなた浮気でもしてるんじゃないの?ふふふ。」
「家族には手を出すなよ。関係ないんだから。」
「随分弱くなったわね・・・。あんなに非情なあんたがそんなこと言うなんて。悪いけどそれはあんた次第よ。」
「殺すなら俺だけにしろ。」
「なら、今日午後7時、○○ホテルの789号室に来なさい。それじゃあね。」
私は一方的に電話を切った。そして、再びダイアルを押した。
「あっ、もしもしキャシー?私よMaria。彼にいま電話したの。それでね、彼が○○ホテルののスイートをとるからそこで食事しようですって。だから、8時頃にホテルに来て。」
「わかったわ。本当ありがとうお姉さん。」
「それじゃあね。」
彼女の声は喜びに溢れていた。しかし、ここから先に彼女にはとてつもない不幸が待っているのだ。彼女には何の罪もないだろうしかし、テリーと結婚した時点手そんなのは理由にはならないのだ。不幸としか言い様がない。
だが、そんなこと私には気にならない。
夜。
私は789号室でワインを飲みながら、夜景を眺めていた。
そして、ベルの音が鳴る。
そして、彼が入ってきた。
背の高いスラリとした体系にブラウンの目間違えない彼だ。
崩れたスーツが仕事のハードさを物語っている。
「奥さん相当、怒ってるわよ。」
「一体なにが望みだ?」
私は立ち上がり彼の元に歩みながら言った。
「娘さん可愛いわね。ジェニファーとメリー・・・。」
「なずけ親は俺じゃない、ディクソンだ。」
「へぇ、いいセンスしてるわ。でも、この世に二人もジェニファーとメリーは要らないのよ。」
「娘達には手を出すな。何も罪もない。」
「可哀想よね。運が無いとしかいえないわ・・・。」
私は彼の頬を撫でた。
「頼む殺すなら俺だけにしてくれ。君に対して罪を負っているのはこの俺だ。」
私は彼にワインをひっかけて頬を殴った。
「ただ殺すだけじゃあ私は満足しないわ!」
満足なわけないだろう、目の前で娘を殺し、私を苦しめた。そんな奴を簡単に殺して気が済むはずがない。
彼は私を鋭く見つめた。殺し屋時代の瞳だった。
「じゃあ、一体どうすると言うんだ。」
「言ったでしょう。二人もジェニファーとメリーは要らないって。」
「そうか、それなら仕方ない。」
そう言うと彼は私に掴みかかろうとした。私はすばやく後ろに下がり彼の額に銃を押し付けた。
「一つだけ助けられる方法があるわ。知りたい?」
「なんだ。」
「娘を私にちょうだい。」
「なに!」
「そうすれば娘を殺さない。」
「そんなことできるはずないだろう。キャシーになんて説明する。」
「そんなの私の知ったことじゃないわ。さあ、どうする?殺すか、生かすか。」
私はぐっと銃口を彼の額に押さえつけて言った。
彼の顔は苦悩に満ちていた。汗が止まらなかった。
しばらくするとすると、彼はため息をつき言った。
「わかった。娘を渡そう。」
「そう、賢明な決断ね。あなたはいい父親だわ。じゃあ、そろそろ下のロビーで三人が待ってるはずだから迎えに行ってあげて。」
私は銃を懐にしまい。笑顔で彼の背中を押した。
私がワインをしまい、イスに座ろうとしたときだった。
外から子供の無邪気な笑い声が聞こえた。二人の声だ。
二人はドアを開けて部屋中を駆け回って私を見つけた。
「あっ!!Mariaおばさんみつけた!!!」
私も二人に微笑んで二人を思いっきり抱きしめた。
「いらっしゃい。二人ともパパにあった?」
「うん!」
「パパが今日はおいしいものがいっぱいあるよって。」
「そうよ!!今日はおいしいものがいっぱいあるわ。たくさん食べましょうね。」
「うん!」
すると、キャシーも姿を現した。とても喜んだ顔を私に見せてくれた。しかし、夫が来るとその表情は少し曇ってしまった。
「さあ、みんな食事にしょう。」
テリーは父親らしく二人娘を抱きしめてディナーの席へ向かった。
食事は本当の家族のように温かく和やかだった。
そして、私はその空気に水を差すことにした。
「ねえ、クリス。あなた仕事ばかりで家族をそっちのけにしているみたいじゃない。いくら何でもキャシーにも娘たちにもひどすぎやしない?」
「姉さんそんなこと言ったって仕方ないよ。いま仕事が波に乗ってるんだ。今働かなきゃあいけないんだよ。」
「でも、そのために家庭が壊れてもいいの?あなたキャシーとろくに話し合ってないそうじゃない。この機会にゆっくり本音をぶつけて話しなさい。隣の部屋を私が取っておいたから。子供たちは私が相手しておくから。さあ、ジェニファー、メリー、おばさんとあっちでテレビ見ましょう。」
そう言って、テリーとその妻を部屋から閉め出した。
そして、私はジェニファーとメリーを連れて行った。
そして、翌朝、娘たちのいるはずの部屋には娘たちはいなかった。
テリーはキャシーに真実をすべて話した。私の身の上をそして、自分の過去を、こんなことになった理由を。
それを聞いて彼女は錯乱し夫に呪いの言葉を遺して数日後自殺した。
彼もすべてを失った。私のように・・・。
それから一ヶ月後私は彼の元を訪れた。
彼はやつれていた。髪の毛も真っ白になり生気を感じられなくなっていた。
「ひどい有様ね。」
彼は憎しみと憎悪に満ちたまなざしで私を睨んだ。
「娘たちは無事なんだろう?」
「ええ、元気にしてるわ。」
「どこにいるんだ。」
「それを知る必要がある?」
「もう、いいだろう。十分罰は受けた。会ったりはしない。見守るだけでもさせてくれ。」
「悪いけどそれは無理よ。私だって、二人の所在はわからないもの。」
「どういうことだ!」
彼は私の襟首をつかんだ。
私はそのままで言ってやった。
「養子に出したわ。今は二人とも別々に暮らしているわ。」
「なんだって!なんてことを、この悪魔!」
彼はそういって私の首を絞めようとした。しかし、私はさらりと身をかわした。
「悪魔?それはあんただって同じよ。私は目の前で子供を殺されたわ!目の前で殺してやらなかっただけ私はまだ親切だわ!」
私は彼を見下ろして鼻で笑っていってやった。
彼は全身を震わせながら泣きながら言った。
「なぜ、私を殺さないんだ!すべて私の罪だろう。私の死では贖えないのか?」
「あんたがしんだってそれで終わりでしょう。そんなの気が済まない。だから、あんたは殺さない。一生苦しんでもらうわ、それがつぐないよ!!自殺なんてさせない。もうすぐあなたの元にFBIが来るわ。あなたを逮捕しにね。まあ、余生を楽しんでちょうだい。」
私はそういって彼の頬にキスをして彼の元を去った。
そして、車を走らせた。
私が彼を殺すのは簡単だしかし、それでは私の復讐心は満たされない。あの地獄の日々と目の前で行われた残虐な仕打ち・・・。単なる死では償うことが出来るはずがない。だからこそ死んだように生かす。時がくるまで生かさず殺さず苦しませる。
これしか私の復讐心を満たすものはなかった。
私は車の中で頭の中のリストに一本の線を入れた。
そして、アクセルを力強く踏んだ。
次は あいつ・・・・。
ロバートよ・・・・。
私は西へ向った。
数年後テリーは獄中で謎の突然死を遂げた。
二人の娘の名を呟きながら。
こんにちは★第二話書き終りました。今回はMariaの復讐心の強さを思いっきり出してみました。彼女は復讐の鬼でしかありません。だから、あんなことをやってのけるのです。ちなみにあの養子に出された二人の女の子はその後は立派に成長し幸せに暮らしています。
こんな文書をすらすら書ける自分にちょっとびっくりな椿です。どうかこれからもよろしくおねがいします。
安倍椿




