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悪魔といわれた男

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「フレディーが死んだ。」

「そうか・・・。おおかた口を滑らしたんだろう。」

「やっぱり、俺が自ら消しに行くべきだったかな。」

「無駄な体力をつかうだけだやめとけ。あの女は必ず来るさ・・・。」

「順番からすれば次は俺だ。好きに始末させてもらうがかまわないだろう?」

「かまわんさ。それより、サムの居場所は突き止めたか?」

「あぁ、突き止めたよ。」

「これでお前が失敗してもあの女は簡単に片付くな・・・。」

「その保険は必要なくなるだろうよ。俺はあの女がこの世で一番嫌いだ。大体、あの時に殺さなかったこと事態、ムカツク出来事だった。」

「あの時はサムがいた。完全な状態でな。あれが限度だったんだ。しかし、今となってはあの男にちからはない。」

「そう、だから、好き勝手にあの女を始末できる。」

「テキサスの悪魔の復活となるかな。」

「そろそろ、眠りから覚めるだろうよ。」


私はロシアを出国してキューバに向った。

ここから先は作戦なんて必要ない。

これから相手するのは善人たちじゃなく悪魔達だから。

悪魔は退治するのみだ。


私はビーチを歩きながら余暇を楽しむ人々をのんびり眺めた。

右手には今朝買った新聞をにぎりながら・・・。

新聞の一面にはロバートの訃報が掲載されていた。

今の私の中には彼の言葉が木霊していた。

(この復讐の果てに君を待っているものは何もない。待っているとすれば死か、無だ。)

そんなこと頭の隅では最初からわかっていた。

でも、今の私の存在理由は復讐しかない。私の中からそれがなくなった瞬間、私は廃人となるだけだ。そんなの私はいやだった。それは私にとって屈辱でしかないからだ。

もう、止まらない。誰も私を止められないのだ。


ビーチ沿いのカフェでのんびりカクテルを飲んでそんなことを考えていたときだった。

「隣いいかな?」

「えぇ・・いいわ・・・。」

私はその声の主を見て驚いた。

「サム・・・。」

「久しぶりだね。」

ブラウンの髪の毛に私にそっくりの目元、間違いない私の唯一の肉親弟のサムだった。

サムは無邪気な笑顔で私の隣に座り、カクテルを注文した。

「昨日知ったんだ。Mariaが来てるって。多分のここら辺にいるかな〜って思って朝から捜したんだよ。でも、元気そうで良かった。」

私は彼がそう話している間にある一つのことに気がついた。

右腕がない・・・。

私はそれを見た瞬間、私の脳裏にある言葉がよぎった。

(彼の命をかけた助け)

私はこの言葉の意味がずっとわからなかった・・・。

私は言葉が出なかった。

すると、その様子を察したらしく彼は笑いながら口を開く。

「ある日、目が覚めたらなくなってたんだよ。最初は困ったけどすぐ慣れたし、なんてことなかったよ。」

「サム・・・。ごめんなさい。私のせいで・・・。」

「姉さんのせいじゃないよ。仕方なかったんだよ。」

「許せないわ。」

「大切な人のためなら腕も一本や二本、何てことないよ。」

「なんてことないなんて・・・。そんなわけないでしょう。私だけでなく、あなたまで・・・。許せないわ・・・。」

「Maria。この世界で生きている以上はそれは仕方ないことだ。」

「・・・。」

「Maria。聞いてほしい。俺もあの時で組織と縁を切れたんだ。今は家族も出来て幸せだ。

だから、許さないなんて言わないで、忘れてほしいんだ全ての過去を・・・。今、姉さんは命を狙われている。許せなくて復讐したい気持ちもわかる。でも、復讐したって失ったものを取り戻すことはできない。だから、もう、忘れて今を生きてほしい。今のMariaには復讐以外には何もないのかもしれないけど、それは今だけだ。亡くなった娘達のためにも生きてほしい。」

「だから、刑務所に戻れというの?」

「そうしてほしい。今、姉さんの命を守れるのはそこしかない。―――とウィルは姉さんがここに来ていることを知ってる。今度は本気で殺す気だ。早くアメリカへ行ってほしい。」

「いやよ。サム、悪いけど、もう、止まらないわ。私はそのために夫すら殺したわ。」

「ロバートを・・・。」

「サム、用心なさい。おそらくあいつらはあなたにも手を伸ばしてくるわ。家族を守れるのはあなたなんだから。しっかりしてね。それじゃあ。あえて嬉しかったわ。またいつかね・・・。」

私はサムの頬にキスをして席を立った。代金をテーブルに置いて私はその場から立ち去った。

今の私には何も響かなかった。




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