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愛と嘘(9)

結婚して三ヶ月。

夫婦生活は順調で私達の幸せの絶頂の中にいた。

しかし、最近どうも彼の表情が思わしくない。

それもそうだろう・・・。

彼の組織は今、崩壊の危機に瀕している。

新しくできた謎の組織との抗争により。

彼の強大な情報力をもってしてもその組織の情報はまったくわからず、彼らは指をくわえて組織の弱体化を見ていくしかなかった。

そして、追い討ちをかけるように彼にFBIの捜査のメスが入り始めたのだ。

このままでは破滅するだけだ。

私は彼に何度も協力すると言ったのだが彼は聞き入れなかった。

そして、ついに彼は私を伴い海外に逃亡した。

行った先はロシア。

私達は彼の友人の別荘に身を寄せた。

私は心身ともに疲れきった彼のために温かいスープを作って、目の前にある雪景色を見ていた。

彼はとてももう申し分けなさそうに私に口を開く。

「すまない、Maria・・・。こんな思いをさせて。」

「どんな思いを?私は幸せよ。だって、こんなところに二人っきりでいられるなんて、新婚旅行じゃない。こんなにゆっくり出来るのも久しぶりなんだから、のんびりしましょ。」

私はわらって彼の手を握っていった。

彼は私の胸に顔を沈めて動かなかった。

彼はとても疲れていたんだ。日々、神経を研ぎ澄ませる生活は、正直で人を信じる優しい彼にとっては辛い生活だっただろう。彼はしばらくして窓辺に立って深深と積もる雪を見つめていた。

別荘の周りには生き残った彼の組織の手下たちが警護に当たっていた。

私は紅茶を飲みながら彼の後姿を見ていた。

何の音もしない、ただ聴こえるのは暖炉の中の薪がパチパチと燃える音だけだった。

しかし、こんな静寂そうながくは続くことはない。

私がカップを持ってキッチンに向った瞬間だった。

ドアが蹴破られる音がして、瞬時に大柄な男達10人ほどが部屋に入ってきた。

そして、彼に銃を突きつけた。

私はというとキッチンにあるドアからひとりの入ってきた。

彼は10人近い男達に囲まれてテーブルの上に座らされていた。

「お前たちは一体何者なんだ。」

「今からゆっくり説明しますよ。ロバートさん」

「その声は・・・。」

声の主はキッチンから出てきた。

「久しぶりですね。この前あったのは彼女の居場所を教えたときでしたね。」

「フレディー・・・。何の真似だ。まさか・・・。」

フレディーはサングラスをはずし彼と向き合うように座った。

彼は優しく微笑んで回りの男達に下がっているように指示をした。

すると、男達は別荘から出て行った。

「その通りですよ。一連のことは私の組織のやったことです。」

「なんで、君のような・・・。」

「私のよな小物にこんなことが出来たか?いい質問ですね。実は私の組織とは言いますけど、実際は違います。私を買ってくれている方がいらっしゃるんです。その肩の援助を受けて・・・。」

「そういうことか。で、それは誰かな?教えてくれると嬉しいが・・・。」

「残念ですが、私の口からは言えません。ですが、時期にわかりますよ。」

「そうか。私を殺すのは一向に構わない。そういう世界に生きているんだから、しかし」

「Mariaだけは殺さないでくれと・・・。」

「あぁ、そうだ。彼女はもうこの世界から足を洗っているんだから。」

「ロバート、悪いがそれはできない。彼女にはもう、死んでもらったよ。彼女はパトロンに殺すように命じられていたから。」

「まさか・・・。そのパトロンとは・・・。」

「えぇ、そうですよ。」

「やっぱり・・・。さすが彼だ、彼には何でもお見通しのようだな・・・。」

「そのようですね。さあ、お話はこれぐらいにしましょう。」

そう言ってフレディーは立ち上がった。そして、銃を取り出し、ロバートに渡した。

「どういうことだ?」

ロバートは怪訝そうな顔でフレディーを見る。

フレディーは笑顔で答える。

「あなたを殺すのは私じゃあないです。」

「あなたを殺すのは私よ・・・。」



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