愛と嘘(8)
「そういうことでお願いね。しばらくは私が動くことは出来そうにないから。頼んだわよ。」
私はそう言って受話器を置いた。
そして、私は化粧台に座り化粧をする。
今日はとある大富豪の主催するパーティーなのだ。
私は嫌がったが出席しなければならなくなった。
私は彼の準備した白いドレスを着て私は彼と車に乗った。
パーティー。
久しぶりの言葉だ。と、いっても私は招待されて出席したことはない。
私にとってパーティーとは標的のいる場所だった。
ここにいる人たちはたいていは能天気な馬鹿ばかり。自分の命が狙われているなんて露程も考えていない。
私はすることもなくただ食べ物をつまんで会場の隅に座っていた。
着飾った人間達がけらけら笑ってのんきに過ごしている。
そんな、光景を見ていて私は虫唾かが走った。
私は外を見ながらため息をついたときだった。
「Maria。」
ロバートが私の肩に手をかけて微笑んできた。
そう、さっきまで彼は私の知らないところにいた。
仕事、と言って私をこんな場所に放置していた。
私は彼の手を跳ね除けて、嫌気がさして場を後にしようとして
玄関口に出たときだった。
私の頬を何かがかすめた。
そして、私の頬から一筋の赤いものが流れ出てきた。
そして、次の瞬間、護衛の者達が私を取り囲み私を建物の中に引き戻す。
そして、激しい銃撃戦がはじまる。会場内は悲鳴が木霊して騒然とする。
「大丈夫か。Mariaどうして勝手に外に出たりしたんだ。」
「どうして??よく聞いてくれたわ。私はあなたの人形じゃないのよ?こんなところに私を置いてどこかへ行くなんて・・・・。私にとってどんなにつらいことか・・・。ひどいわよ。」
私はそう言って泣きじゃくった。
彼は戸惑っている。突然、こんなことをされたら誰だって戸惑うのは当たり前だ。
私は子供のように身体を丸くして泣いている。
彼は私の肩をもって、別室に移した。
そして、私を抱きしめてずっとそばにいた。
この夜、私達はこのままだった。
この夜の銃撃事件で死傷者は10人を超え、そのうち5人がロバートの組織の人間だった。
警察はこの事件は暗殺集団のようなプロ組織のしわさと断定し、捜査はFBIが行うことになった。
死んだ五人とはロバートの右腕ジア以外の私の護衛たちだった。
この事実に彼はショックを隠しきれなかった。
そして、すぐさま彼は携帯を握り私の前から消えてしまった。
私はというと、その彼が消えたドアを何の気なしに眺めていた。
彼は組織の建て直しに奔走した。
そして、私はというと、彼の屋敷から一歩も出なかった。出なかったんじゃない。出れなかったんだ。
毎日、朝の7時に起きて、二人で朝食を食べて、それから、メイドと一緒に家事をしながら世間話をする。そして、夕食の支度をして、彼の帰宅を待つ。しばらくは彼も仕事が忙しく帰宅が深夜になっていたが最近は8時には帰ってくる。組織が安定してきたからだ。
私は彼と夕食をともにして中庭を散歩して一日を終える。
しばらくはそんな生活が続いて、私達は幸せに円満に生活してた。
そして、ある日いつものように彼と中庭を散歩していた時だ、
「Maria。」
「何?ロバート。」
「君は僕達の今後をどう考えてるんだい?」
「そうね・・・。あなたと一緒にいたいわ。でも、このままこの生活を続けるのはちょっと・・・。」
「確かにそうだな。」
「ねえ、ロバート。お願いがあるの。」
「なに?」
「仕事をさせてほしいの。」
「どこで?」
「あなたのところで。」
「それは・・・。俺はいいとはいえないな。」
「どうして?私ならあなたの力になれるわ。」
「ねえ、Maria。」
彼は私を噴水の淵にすわさせて真っ直ぐに私を見つめる。
そして、ポケットから箱を出す。その中には指輪がある。
「Maria。俺は君のことを愛している。一度は君を憎んだこともある。でも、今は憎んだ以上に愛している。俺は決めてるんだ。妻には絶対殺しをさせない。生まれてくる子ども達のために。って。Maria、私の側で一生いてほしい。君の一生まもる。」
私は彼の手を取った。そして、涙を流した。
「ロバートごめんなさい・・・。渡し何もわかってなかったわ・・・。あなたがそんなに私を思ってくれてたなんて・・・。ありがとう。」
私は彼に抱きついて、キスをした。
私達は正式な書類を出して結婚することは出来なかったが、屋敷の中でひっそりと結婚式を挙げた。
私達は幸せの絶頂にいた。
しかし、絶頂をすぎれば訪れるものは決まっている。
そう、私の作戦は成功している。
時期に私は女神の微笑みの元、成功を手に入れる。




