一人目五年前の記憶
目を開ける。
その先は教会。
目の前にはマリア様の像。
私はMaria。
もう一度目をつむる。
両手を合わせる。
私は閉じた目を開く。
とが開く音がする。
誰かが入ってくる。
私の後ろに座る。
「久しぶりだなMaria・・・。」
男の声
私は振向かない。口を開くだけ。
「五年ぶりくらいかしら。」
「何の用だ。突然。」
「あの時の事、覚えてる?」
「あぁ、覚えているよ。忘れもしない。」
「じゃあ、呼んだ理由もわかるわよね。」
男は立ち上がりキリスト像の前に立った。
「そういうことか・・・。」
この声と灰色のショートヘアー、ブルーの瞳、そして、右頬の切り傷の跡。
私の中にあの忌まわしい全てが蘇ってきた。
男はキリストを見つめて口を開く。
「お前は組織を裏切った。」
「私はあんな組織のやり方についていけなかった。しかるべき手順でやめるといったわ。」
「そんなの理由になるもんか。お前はボスの許可ももらっていなかった。勝手に姿を消すなんて裏切り行為だった。」
「もういいわ、今更こんな事言ったって何にもならないもの。でも、あんた達のおかげで私はこの世界で生きていけなくなった。そして、三年も動けなくさせられた。すべてを奪われた。これは消えない事実よ。許さない。」
「だから、一人ずつ処刑していくのか。」
「えぇその通り。死んで!」
私は懐から銃を取り彼に向って発砲した。
避けられた。そして、撃った弾はキリストの額に当たった。
「神殺しだな。」
男は私の前に立って言った。男は笑うと私を突き飛ばした。
私は大きく吹っ飛ばされた。椅子が壊れる音が教会中に響き渡る。
男は銃を取り出し私の額につけた。
「姿を現さなきゃ、こんな事にはならなかったのに・・・。お前、助けられていたのがわからなかったのか。」
「殺しとけば良かったのに。私を生かしたのは大きな間違えよ。」
私は笑っていった。
彼も笑った。
「確かに。そうに違いない。それじゃあ、その間違えを正そう。彼の命をかけた助けを無駄にするなんて最低な女だ。」
「無駄にはしないわ・・・。」
バン・・・・。
私の視界は真赤に染まった。
そして、男は死んだ。灰色の髪を赤に染めて。
私は凛とする聖母マリアをみつめた。
私は扉を開けて教会を後にした。
冬の風が頬を撫でる。あの時の風と似ていた。
忌まわしい過去が蘇ってきた。
全てが黒くって、苦しみに溢れていた。
私は懐からタバコを取って火をつけて車に乗った。
そして、南に向った。
瞳をとじてしまうと、自分の悲鳴と子供の悲鳴が聞こえる。
それは今から五年前のことだ
私がいつもと同じように朝食を準備している時だった。
寝室には幼い二人の娘が眠っている。
夫はいない。
娘を起こしに寝室に向おうとした瞬間だった。
突然、視界が真っ暗になり意識が消えた。
次に目を開けたときそこには五人の男が立っていた。
私は柱に縛り付けられていた。
見覚えのある場所だった。
そして、悪夢が始まった。
何日続いただろうか・・・。
感覚すら麻痺してた。
ただ、叫ぶことしかできなかった。
そして、ついに最後には目の前で娘を撃ち殺されてしまった。
私は裏切り者だった。
新しい組織の長のやり方についていけなくなって
口論の末、抜けてやるといって組織を辞めた。
そして、こうなった。
気がついたら私は刑務所の中だった。
無期懲役、そして、2年間、私は地獄の日々の身体面での後遺症に悩まされた。
そして、三年後私は脱獄し、自宅に戻った。
自宅はなくなっていた。そして、私は全てを失った。
今の脳裏に刻まれている、あの男達の顔。
私が出来ることそれは復讐それしかなかった。
私はアクセルを強く踏み空港に向った。
次はあいつ・・・・。
テリ−よ・・・。




