若者の戯れ言
ただの、落書きです。よくあるネタです。
「やっぱりさ、純潔な娘がいいよ。他の男と比べたりしねぇもん。」「おめぇ、そりゃ自分に自信がねぇって言ってるようなもんだぜ?」
夜もふけた、ある屋敷の一室。男どもは酒とつまみとバカ話で盛り上がっている。「いいよな、セドは。」「何が。」「可愛い幼なじみがいるじゃん。」「バッカ。あいつとは、恋仲にもならねぇよ。あいつ、婚約者いるぜ?」「うわ、なんだよ。じゃあ俺達五人共、独り身かい。」「かぁー、やってらんねぇ。」そんな話をグダグダしている。5人の若い男どもは、皆、貴族の冷や飯食いだ。兄や姉が家を継ぐ為、己の食い扶持を稼がねばならない。今は、まだ学生の身だが二年後には卒業である。「まだ、学校に通えるだけマシだぜ?俺の親戚に、学校通わす金がなくて、金持ちの未亡人に婿入りしたやついるけど、」4人とも、息をのんで聞く。「尻にしかれて、まぁ可哀想なもんだ。ただただ、夜の為に飼い殺しにされてるような始末さ。」「うわぁ。」「怖ぇ。」「い、いや、その未亡人が幾つの人で、もしかしたら美しいボディラインを…。」「20歳以上年上の肥満体だ。」「げぇっ!」「地獄だ…。」男どもは、我が身に置き換え青ざめる。「はぁ…。それじゃ、皆は卒業後は騎士コースで就職に決まりかい?」「俺は文官だな。」「マルセルは体力ねぇからな。」「まぁなぁ。馬に一時間と乗れないんじゃなぁ。けれど、計算や書写なら何時間でもいけるぞ?」「うへっ、俺にゃ無理だ。」「ガインは絶対騎士だろ?」「俺、体力はあっけどバカだからなぁ。作戦とか覚えらんねぇんだよ。」「最悪じゃねえか。」「戦で、それは致命的だな。」皆、車座に座り、真ん中にナッツや干し肉、魚の燻製と地元で作られたチーズに水差しにいれたワインを、各々好き勝手に飲み食いしながら喋っている。
「せめて、戦に行く前に、本望 遂げてぇな。」「お、なんだ?ミグの本望って。」「だからさ、可愛い嫁さんだよ。」話は始まりに戻る。「そんなん、俺達五人、全員思っとるわ。」「ジル、お前は違うだろ。」「なんでだよ。」ガインはニヤニヤしながらジルを燻製で指す。「クラスのバン達と行ったんだろ?裏路地。」「ぶっ!」「おい、マジかっ!」「てめえ、抜け駆けかよっ!」「お前一人、先に経験したのかっ!」にわかに、男共は殺気立つ。「待て待て、話を聞けっ!」「なんの話だ!」「感想かっ?」「聴きたい聴きたい。どうだったんだ?」「どんな女だ?」ジルに四人が詰め寄る。「…確かに、宿には行ったよ。」「「「「おぉ~。」」」」四人は同時に歓声を上げた。「…けど!あんなとこ、行かなきゃ良かった…!」ジルはカップを握り項垂れる。他の四人は顔を見合せる。「とんでもねぇ年増だったのか?」「見たことねぇ醜女だったとか。」「臭かったのか?」「ひでぇな、そりゃ。」四人は好き勝手に結論付ける。「違う違う。そうじゃねぇよ。」「じゃあ、なんだよ。」「もったいぶらず話せよ。」「こいつ、経験したからって上から目線かよ。」「へっ、俺ぁほんとに愛する女に俺の純潔捧げるんだ。」「だから違うっての!」ジルはカップの酒をぐいっと飲み干すと「…出来なかったんだ…。」「「「「は?」」」」またしても、四人の声は揃う。「なんだよ、金が足りなかったのか?」「女にはぐらかされたか。」「前に先輩に聞いた事があるぞ。女の旦那が乗り込んできて、下着姿で逃げ出した奴の話。」「お前ら、ちょっと静かに聞こうぜ。ジルの話。」セドが、静かにさせる。「…確かに、バン達と行ったよ。裏路地にあるけど、貴族や騎士を相手にする店でさ。比較的綺麗で、信頼のある店なんだ。」ふむふむと、四人は聞いている。「でさ、まぁ確かに金額は高いが、全く無理ってワケでもない。上手くしてやがんだ。」「あ、だから最近、昼飯、持参してたのか。」「ガイン、口、挟むなよ。」「で、それから?」ミグがジルのカップに酒を注ぎながら先を促す。「部屋に案内されて、待ってたんだ。したら、女性が入ってきて…。」「ほぉほぉ。」「たらいに、湯と、手ぬぐいを入れてさ、先ずは洗うんだよ。その、下を…。」「なるほどな。」「なんでなるほどなんだ?マル。」「汚れていたら、感染症の原因になるんだ。それと、感染症にかかっていないかのチェックだな。」「あー、女に移っちまったら仕事になんねぇもんな。」「で?」四人はジルを見る。「…その後、その女性がふ、服を脱いだんだ…。」「おおっ!」「美人か?」「でかかったか?!」「若い?!俺達より上?下?」「…。いっちゃったんだ…。」「「「「は?」」」」三度、四人の声が重なる。「え、最後までいったって事か?」首を振るジル。「え、まさか…。」「お前、まさかなのか…?」ガインとミグの言葉にジルはわぁっと顔を覆って泣きだした。「悪いかよぉっ!お、俺だって恥ずかしかったよっ!けど、仕方ねぇじゃんっ!我慢出来なかったんだよぉっ!」「お、おお、そうだな、仕方ない。」セドはジルの肩を抱く。「そうだな、初めから成功する奴は少ない。失敗は誰でもあるさ。」とマルセルがジルの背を撫でる。「け、けど、その後は、しっかりとやり遂げたんだろ?その…。」ガインが何とか話を盛り上げようとしたが、「…優しく介抱された…。」場は、一瞬で静まり返った。「…だが、ジル。お前は、偉い!」ミグが立ち上がり叫ぶ。「お前は、意を決して一歩、前進したんだ!たとえ、負けたとして、その一歩の勇気に違いはないっ!」「おぃ、あいつ酔ってるぞ。」「放っておけ、ジルには良い薬だ。」セドとマルセルは小声で話す。「なのに、俺達ときたらお前を羨んだり、けなしたり、最低だ…。」ヨヨヨと泣き出すミグ。「いや、けなしちゃいねえよ。」と、ナッツを噛みながら突っ込むガイン。「よしっ!今から、弔い合戦だっ!」ミグは顔をあげ拳を振り上げる。「いや、誰も死んどらん。」セドも、突っ込む。「皆で、その宿に行こうっ!」「「「はっ?」」」今度は、三人の声が重なった。「俺達、五人なら安心出来るだろっ!みんな、一緒に大人になろうぜっ!」ミグは、ジルを引っ張りあげる。「お、おい、ミグ!」「なんだ、ガイン!逃げ出すのかっ!?」この言葉にカチンときたガインは、「ば、バッカ言えっ!誰が逃げだすかっ!いょぅし!行ってやる!女が泣いて喜んで、立ち上がれない位、やってやるっ!」「その意気だ!」部屋を出る三人に「ちょ、ちょっと待て。」「お前ら、飲み過ぎだ。」後の二人が追いかける。バーンっ!と、扉を開いた先に。「…。」「「「「「…。」」」」」立っていたのは「…アリア…。」「ミゲル坊っちゃま。ガイン坊っちゃま、ジゼル坊っちゃま、マルセル坊っちゃまに、セドリック坊っちゃま。」ミゲルの乳母にして、メイド長。この、五人が頭の上がらない絶対的存在。「いや、その。」「あ、アリア。俺達、別に、そのなんだ?」「言い訳無用っ!!」ビリビリと、電撃が走る。「直ぐ様、ベッドに入ってお休みなさいましっ!明日も、学園へ参りますでしょうっ!いつまで、このアリアに雷を落とされるおつもりでっ?!」「は、はいっ!すぐ、寝ますっ!」「明日も早いっ!」「お、お休み、アリアっ!」「お休みっ!」「お休みっ!」五人は、慌て部屋に戻り、寝床に飛び込んだ。「…。酔いが冷めた…。」「良いことだ。」「縮こまったぜ。」「もとから、縮んでんだろ。」はぁーあ、とため息が部屋に満ちる。「…なあ、知ってっか?」ミゲルが、小声で話す。「なんだよ。」「今度は怪談か?」「いや、アリアの事だよ…。」しばらくの間の後、「アリアって、若い頃は、絶世の美女として社交界に君臨してたらしい。」「んな、アホな。」「デマだろ。」先ほどの姿を見た直ぐ後に、想像もつかない。「…いや、俺のじい様が言ってたかも。」マルセルが、ポツリと話す。「ミグの家は上手くやった。あの、“奇跡の薔薇”を家に入れる事が出来たのだからって。」沈黙がしばらく続き、「…俺、女が怖くなった。」ジルが呟く。「…俺も、まだ学生で居てぇや。」ガインは、布団を被った。「…お休み。」「お休み。」静かな就寝となった。




