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痛み止め
ありふれた平日の午後、
目隠しされた駐車場に私はいた。
膝と腰に、力が入らない。
立っているのもしんどい。
心が痛むと、こんなふうになると知らなかった。
心の痛み止めがあれば、今すぐ飲みたい。
私も早く帰らないと、倒れ込んで帰れなくなる。
香澄は、奥さんの家に帰っていく準備をする、冷たいAの目を見つめた。
彼は、その地位に登り詰めた狡猾さで、
冷たさを愛想の良さそうな表情で誤魔化している。
私は、その目の中に、私への愛情を探した。
そうしないと、さっきまで何故Aに抱かれていたのか、辻褄が合わなかった。
身体は、まだ離れたくないと訴えていたが、心は泣きたかった。
さっき渡されたブランドのブレスレットの箱が、Aに買って貰ったバッグの中で輝いていた。
いっそ、物をもらうために抱かれていると思えば、整合性が取れたのに。
もう二度とこんな思いをしたくない。
「来週も会えるから」
Aはそう言って、スポーツカーに乗り込んだ。
私は、幼かった。
まだ愛される夢を見たかった。
ママからもパパからも与えられなかった愛情を、Aに求めていた。
Aが本当に奥さんを大事にしてるのは直感していた。だからこそ、奪い取れたら。
私は、既に試合に参加してしまっていた。
「うん」
去っていく車、運転する横顔を見送った。




