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第3話 賢者の石(中編2)

      6


 学院に戻ったわたしは、再度アベル殿下の部屋へ向かいました。

 最上階では、殿下は研究を続けています。

 マンドラゴラをすり下ろしながら、何かをしているようです。


「……大根おろしでも作るのですか?」

「マンドラゴラだ」

「マンドラゴラなんて、音の出る大根のようなものでしょう?」

「危険度の高い魔法植物なんだが!?」


 ツッコミを入れるアベル殿下。

 ですが、障壁持ちのわたしにとって、マンドラゴラの叫びは何の脅威にもなりません。


「それよりも、調べてきましたよ」

「ああ、聞かせてくれ」


 わたしは調査結果を報告しました。

 とはいっても、得た情報をそのまま伝えただけです。

 その取捨選択はお任せしてしまいます。


 説明が一通り終わると、殿下は腕を組んで数分考え事をしていました。

 そして、その思考が終わると無駄に美しい声で告げます。


「この事件に関して、謎は三つ。まず、犯人はどうやって賢者の石を盗んだのか。ケースには鍵が掛けられていた。それに、警備の人間は残っていた」

「普通に考えれば、不可能ですよね」

「だが、事実としてケースの中には偽物が残されていた。可能性としてまず考えられるのは、賢者の石を保護ケースごとすり替えたというものだろう」

「ケースごと?」

「賢者の石だけではなく、ケースも偽物を作っておいたのだ。すり替えた後、本物は別の場所でゆっくりと開ければいい」

「その可能性は既に考えました」


 わたしは少し得意げに言いました。


「あのケースは土台に固定されています。それに関しては、確認しました」

「では、土台ごと盗んだとしたら?」

「土台ごと? それも難しいと思います。土台は床にしっかり固定されています。この固定状態を外すのは不可能だと思います」

「そうか。では、渡してあるカギは偽物というのはどうだ? 犯人は普通に鍵を使ってケースを開け、賢者の石を偽物にすり替えた上、また鍵をかけた」

「それなら可能ですね」

「いや、不可能だ」

「自分で言ったのに!?」

「鍵は四人が自分でかけたはずだ。だとしたら、すり替える隙などないだろう」

「そうですね」

「まぁ、この謎については然程重要ではない。ケースから賢者の石を取り出す方法については、他にも思いつく。不可能ではないということが分かっていれば、それでいい」


 簡単に言ってくれますね。

 わたしには、賢者の石を取り出す方法など一つも思いつきませんでした。


「では、二つ目の問題だ。盗まれた賢者の石はどこにいったのか」

「盗んだ犯人がどこかに持っていったのでは?」

「あれほどの魔力を放っているものだ。服の中に隠したとしても、魔法使いがすれ違えばそこにあるのは気づかれてしまう。魔法使いの警備員もいた以上、持ち出すのは不可能に思える」

「確かに……」


 わたしが警備についていたら、確実に気づいたでしょう。

 あれだけ強大な魔力を有しているものが移動するのです。

 すれ違わなかったとしても、異変には気づくはずです。


「これに関しては、また後で考えることにしよう」

「では、第三の謎は、犯人は誰かということだ。まぁ、これは然程重要ではない」

「重要ではないのですか?」

「そうだ」


 普通なら一番重要なところでしょうに。

 何せ、強盗殺人です。


「それで、殿下。私はもうお役御免でよろしいですか?」

「駄目だ」


 駄目でした。


「君にはまだ頼みたいことがある。とりあえず、オークションが中止になるかどうかを確認しておいてくれ。以上だ」

「それだけでいいのですか?」


 事件解決のための情報収集でもさせられるかと思っていました。

 ですが、面倒がないならそれに越したことはありません。


「商会は独立性が高い組織だ。事件が起きたとしても、魔法学院が関わる必要はない」

「それは何よりです」


 どうやら、仕事は増やされなくて済んだようです。

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