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7話 任務 — 静寂と覚悟






PTDによる初の実地転送訓練は無事に終了した。

青白い光の中、帰還する隊員たち。

最後に星野が現れると、湯中が淡々と頷いた。




「転送完了。全員、無事帰還です」


「……よし」




星野は隊員の顔を順に見渡し、小さくうなずいた。




「ご苦労だった」




五十嵐が大げさに伸びをする。




「いやー、あれ訓練じゃなかったらビビってたぜ。過去の渋谷って、なんか“匂い”が違うよな」


「……少しは緊張感持ってください」




山野がピシャリと返し、場に小さな笑いが漏れた。

湯中は淡々と続ける。




「行動記録は解析に回します。問題がなければ、2週間後に次の任務に入る予定です」




柳が少し身を乗り出す。




「次も訓練ですか?」


「いえ、次は“初任務”となります。内容は……国内の重要人物を狙ったテロの未然防止です」




その言葉に一瞬、場の空気が引き締まった。

星野が、冷静な声で確認する。




「現代の警察や公安では対応困難な案件、ということか?」




湯中はそれに頷く。




「公には報じられないでしょうが、特殊部隊Tの存在意義が問われる機会になるでしょう」




星野は短く「了解」とだけ返した。









廊下。

黒木と星野は並んで歩いている。

黒木が口を開いた。




「初訓練……思ったより、スムーズでしたね」


「そうだな。思っていたより“みんな、よく動いた”」




黒木は少し意外そうな顔をする。




「“思っていたより”って、そんなに期待してなかったんですか?」


「……初めての編成チームに、完璧は望めない。今回は上出来だ」


「なるほど、隊長らしい判断です」




どこか“業務的な会話”の延長。それでも、少しずつ歩み寄る空気が生まれていた。




「これから、でしょうね。私たちの連携も」


「……そうだな」









一方、小野田は帰還直後に情報端末を開いていた。訓練中にログに記録された、市街地の映像と通信データ。




「やはり……この時代の通信傍受レベルは甘い。監視カメラのデータは、いくらでも抜けるな……」




淡々と打鍵しながら、小野田はある座標をピンで留めた。




(訓練だったが、得られたものは多い……この時代の“情報環境”そのものが、我々にとって武器になる)




データ端末の画面に、2048年の渋谷の衛星写真が浮かび上がった。









訓練が終わり、再び静かな時が流れ出す研究施設。

だが、それは嵐の前の静けさでもあった。



次の任務──それは「過去で起きるはずだったテロを未然に防ぐ」という、特殊作戦部隊Tにとって“最初の試練”となる。



彼らはまだ知らない。

それが、未来と過去の境界に立ち始めた瞬間だったということを──。







 翌日。会議室に全員が揃っていた。

正面のスクリーンの前に立つ星野の声が、静かに響く。


 


「今回の任務は、過去で実際に発生したテロ事件の“未然防止”だ」

一瞬、空気が張り詰める。

 


「標的は、当時注目されていた若手の国会議員。将来的に日本の安全保障政策に大きな影響を与えるとされていた人物だが――2048年、都内で発生したテロ事件によって死亡している」



 スクリーンには、当時の事件の時系列と現場の地図が表示された。


 


「我々はその過去に介入し、事件の発生そのものを防ぐ。現代の警察・公安では対応が追いつかなかったため、特殊作戦部隊Tが動くことになった」

 


 五十嵐が腕を組み、眉をひそめる。



「詳細は? どんな規模の連中なんですか」

 


 星野が資料を切り替えながら応じる。


 

「人数の概要は不明だが、武装集団による爆破テロと、それに連動した暗殺だ。議員は至近距離からの狙撃で即死。組織の詳細な構成は不明だが、都市部に拠点を持ち、地下に潜伏していた形跡がある。情報網の隠蔽も巧妙だ」

 


 横で小野田が小さく頷いた。



「現在、通信記録や監視映像の解析を進めています。事件当日の動線も、可能な限り洗い出します」


 


 山野が少し身を起こして尋ねる。




「前回の過去への転送は訓練でしたが……今回は実戦任務になるんですよね」

 


 星野は静かに頷く。



「そうだ。今回は交戦も想定される、完全な実戦だ」

 


 全員の視線を正面で受け止めながら、星野は続けた。


 


「成功すれば、未来の損失を防げる。失敗すれば、歴史は元のままだ。――だからこそ、慎重に、そして確実にやる。これは俺たちにとって、最初の“本物の任務”だ」

 


 緊張のなかにも、確かな意志が満ちていく。

誰も口を開かない。その静寂に、星野の声が重ねられる。


 


「準備を徹底しろ。現場で後悔するな。全員、生きて帰ること。それが最優先だ。……以上」



 


 隊員たちはそれぞれ静かにうなずき、ブリーフィングルームには確かな“覚悟”が根を下ろした。











ここまで見てくれたそこのあなた!!さいこーです!

神城クロノと申しますm(_ _)m

今回は、OSMANTHUS — 未来を変える戦い —の7話を読んでくださってありがとうございます!

これから、週2〜3本ペースを目指して執筆していきます

当分の間はストックが溜まってるのでポンポン行きます!

読んで、面白いなーと感じたらぜひ☆の評価ください!

ブックマークも意欲が上がるし嬉しいです\(^o^)/

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