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4話 集合 — 光の届かぬ日常





説明を終えた次の日の朝。

食堂に向かった星野は、先に来ていた五十嵐を見つけた。




「お前、家帰んなかったのか?」


「自衛隊の一人暮らしですよ?そもそも運ぶもの少ないですし。とりあえず鍵貰って、寝ました」


「よく寝れたか?」


「隊長の難しいお話のお陰で、ぐっすりっす」




五十嵐の回答に苦笑しながら、星野は食堂の冷蔵庫に向かう。

最初から用意されていた食料品や飲料水がいっぱい詰まった業務用冷蔵庫だ。

この前電話で山渕陸将補に聞いた話では、定期的に業者に頼んで補充してくれるらしい。

これも全部無料という待遇に星野の肩は少しだけ重くなるのだが、あるモノは消化しなきゃいけないので不承不承ちゃんと冷蔵庫から朝食を取っている。



ここには部屋よりも大きなキッチンもあるが、朝から何かを作る気にはなれない。

冷蔵庫から取ったのはバナナとロールパンと野菜ジュースだ。

ここ数日の朝はそれである。




「隊長って朝バナナ率高いですよね?」


「これが一番栄養になるからな」




星野が五十嵐と同じテーブルにつくと、五十嵐は星野のバナナをまじまじと見ていた。

星野は自分のバナナよりも、目の前で朝からステーキとソーセージ、ご飯にパンまで摂取している五十嵐の方が変だけどな、と小首を傾げた。




「泊まったのはお前だけだったのか?」


「あー、山野は泊まるって言ってましたよ。他のメンバーは一旦帰宅して、とりあえず数日必要な分の荷物持ってくるって言ってましたよ〜」


「確認なんだがお前と山野は着替える気ないのか?」


「自衛隊ですよ?1日くらい気にしません」


「自衛隊なめんなよ?普通着替えるだろ」




早朝の馬鹿はもう放って置きたいと星野は強く思った。

こんなに緩い朝を迎えて良いのだろうか?

今後の部隊の未来が不安だ。

あぁ、バナナが今日も美味しい。




「ふはぁ〜、おはようございます!隊長!五十嵐さん!」




入口の方から欠伸をしながら山野が現れた。

凄まじい寝癖なのだが、あの年代の女子なのに気にならないのだろうか。




「だっはー!すげ〜寝癖だなぁ山野!」




山野の壮大な寝癖は五十嵐のツボを確実に押さえたらしい。

初日から着替えもなく泊まれる二人はそういう人間性なのかもしれない。




「えー、そんなすごいです?」


「半端じゃねぇぞ!ね、隊長」


「確かに、普段のプライベートの山野がどういう生活しているのかを察せる出来栄えではあるな」


「グッ………胸に突き刺さるお言葉です」





 それから数分後、今度はきっちりとしたスーツ姿の黒木が現れた。

髪もしっかりまとめられていて、優秀なキャリアウーマンの雰囲気である。




「おはようございます。……皆さん、早いですね」


「黒木副隊長、なんか一人だけカッチリし過ぎてませんか?」




 五十嵐が白米を口に運びながら指摘する。




「初日なので、念のためですよ。──というか、五十嵐さん。朝からその食事は胃に重すぎませんか?」


「いやぁ、これくらい食べないと任務に支障が出ちゃうんで」


「えっと、まだ任務ありませんよね?」


「……確かに」




 言葉を詰まらせる五十嵐に、黒木は小さくため息をついて、席についた。

どうやら、お弁当を自作してきたようだ。

この時間に出勤してきてお弁当まで用意する周到ぶり、明らかに常識人枠である。




 その時、入口の方から「失礼します」と静かな声が聞こえた。

黒縁眼鏡にボサボサ頭の青年、小野田だった。




「あれ、小野田……居たのか?」




 星野が声をかけると、小野田は淡々と答えた。





「ええ。夜中のうちにネットワーク環境を確認してまして。とりあえず、ここのWi-Fiは一部暗号化が甘いので直しておきました。ついでに食堂の電子レンジが管理システムと繋がってたんで、あれじゃ情報漏洩のリスクになるので切りました」


「電子レンジがネットに繋がってる意味がわからんな……」




 星野が苦笑いを浮かべると、小野田は軽く首を傾げる。




「IoTは便利ですが、セキュリティホールにもなりますので」




 ぽかんとしながら「IoTってなんだ?」と呟く五十嵐の横で、黒木だけが「……頼もしいですね」と呟いた。










「──おはようございます!あ、隊長!訓練場、お借りしました!」




 声とともに現れたのは、筋肉の塊のような男──海自出身の海野誠司だった。

Tシャツがやや張っているのは、朝から身体を動かしていた証拠だろう。




 「お、海野。訓練してたのか?」


 「つい身体が動いちゃって。……朝のトレーニングって、いいですよね」


 「えぇ……朝から? 何やってたんですか?」




 五十嵐がロールパンをかじりながら問う。




 「腕立てとスクワットと水泳を少々。ここの地下に小さいプールがあるんですよ。最高です」


 「マジか……朝から別次元だな」と五十嵐が唸った。


 「自衛隊でも、ここまで体育会系って珍しいっすよねぇ……今からシャワーですか?」と引き気味な山野。


 「もちろん済ませてきました。礼儀ですから」




 海野はにっこり笑って着席した。

完璧すぎて、逆にどこか抜けていそうな気さえする。




 それからかなり遅れて、ゆるふわパーマの青年がのそのそと現れた。




 「おはようございます〜……あ、皆さんもういらっしゃってたんですね」




 柳雅人。

空自出身の三等空尉。

眼差しは優しく、声も穏やかで、全体的にどこかふわふわしている。




 「柳、お前……今来たのか?」




 星野が尋ねると、柳は少し申し訳なさそうに笑った。





 「昨日は一旦荷物取りに帰って……夜には戻ってきてたんですけど。ベッドが、あまりにもフカフカで……目が覚めたらこの時間でした」


 「俺ももうちょい寝れたなぁ」と五十嵐は落ち込んでいる。


 「反省してます……でも、おかげで脳は冴えてますよ?」


 「まぁ、寝坊してもすぐ動けるなら良いけどな……」星野は呟いた。




 黒木はお弁当を食べながら、柳に軽く会釈した。




 「柳さん、着任初日から遅刻は評価に響きますよ?まぁ今日は決まった時間が無かったのでセーフですが」


 「す、すみません……次からは、気をつけます」




 優男の柳と、超体育会系の海野。対照的な二人が加わり、これで湯中以外のメンバーは揃った。





「よーし……とりあえず、今日は正式任務もない。

この施設は複雑だし、部屋の整理とか、装備の確認とか、それぞれ慣れておけ。昼にはまた一度集まるぞ」




星野の言葉に皆が返事を返す。

とりあえずは一旦解散だ。




星野は執務室に戻り、今後の方針について検討を始めた。

改めて考えても不安が尽きない。

だが、仲間がいる事に安堵する。

これから何をしていくべきなのか。

それを考えるのが今の星野の任務である。











はじめまして!皆さん

神城クロノと申しますm(_ _)m

今回は、OSMANTHUS — 未来を変える戦い —の4話を読んでくださってありがとうございます!

これから、週2〜3本ペースを目指して執筆していきます

当分の間はストックが溜まってるのでポンポン行きます!

読んで、面白いなーと感じたらぜひ☆の評価ください!

ブックマークも意欲が上がるし嬉しいです\(^o^)/

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