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3話 始動 — 戸惑いと希望





この特殊部隊の任務内容を星野から聞かされた隊員たちは、言葉を失った。

沈黙の中で、五十嵐だけがニヤつきながら星野を見る。




「つまり、過去に戻って事件を未然に防ぐってことですか?」


「あぁ、概ねそういうことだ」


「冗談……じゃないんですよね?」


「事実だ」




タイムトラベルが可能なのか。

理解が追いつかない。皆が困惑しているのも無理はない。

それでも、ここに集められたのは事実で、直属の上官である星野は真剣に話していた。

星野が冗談を言う人間でないのは、五十嵐もよく知っている。だからこそ、困惑していた。




「本当に、そうなんですね?」


「そうだ。俺たちはそのために集められた部隊だ」


「なるほど……」




五十嵐は半信半疑のまま、黙り込んだ。

次に声を上げたのは、黒木だった。




「政府がタイムトラベルの実現を認めているのなら、技術的に可能なのでしょう。それを前提として伺いますが……そのPTDという技術は、具体的にどのような仕組みですか?」


「俺が受けた説明では――PTDで過去に行くと、指定した日時の“およそ”24時間前に着く仕様になっているそうだ。

ただ、まれに予期せず数日から数か月ズレることもあるらしい。

そして、指定した日時ちょうど――つまり事件が起きるとされる時刻に、自動的に現在へ帰還する」




黒木は目を閉じ、顎に手を置いたまま、黙って耳を傾けていた。

本当に戻れるのか。その疑念は消えない。

他の隊員たちも、それぞれ黙って内容を飲み込もうとしていた。

一人を除いて――五十嵐だけが、どこか楽しそうにニヤついていた。




「それと……過去で使用した帰還時間を再度指定することは禁止されている。

時空干渉のリスクがあるらしいが、理由は正直よく分からない。俺にもまだ、分からないことばかりだ。

詳しい話は、PTDに関わっている研究者・湯中から説明があるだろう。

あと……過去でどれだけ過ごしても、身体的な老化や成長には影響しないらしい」


「身体的な変化が、ない?」


「山渕陸将補の話では、実験中に帰還時間の5年ほど前に誤って飛ばされた人がいたらしい。

幸い、その人物は出発前に健康診断を受けていて、帰還後も成長も老化も確認されなかったそうだ」


「……そう、ですか」


「隊長〜。難しすぎて分かりません」


「だったら黙ってろ五十嵐」


「はいっ!」




まだ全員が納得しきれていないのは、星野にも分かっていた。

というより、星野自身が納得しきれていない。

本当にこんなことがあるのかと、未だにどこかで疑っている。

だが、関わっている人間の階級、規模、そして命令の重さから考えれば、冗談ではないのだろう。


「納得できないのも当然だ。俺だって最初は混乱した。

だが、“上”が事実だと言えば、それが事実になる。受け止めるしかない」




星野は隊員たちの顔を一人ひとり、しっかりと見ながら言葉を続けた。




「改めて確認する。この部隊から離れたいという者がいれば、今ここで申し出てくれ。

任されたはいいが、俺だって最初は不安だった。

だからもしそう思うなら、俺が責任を持って上に掛け合う。

だが、それでもこの部隊でやっていきたいというなら、一緒に戦ってくれると助かる」




最初に声を上げたのは、やはり五十嵐だった。




「そもそも警察との合同部隊って聞いて、面白そうだと思ってましたけど……

タイムトラベルで事件を未然に防ぐ?そんなワクワクすること、断る理由がありませんよ、隊長!」


「お前は、そういう奴だな」


「あったりまえです!」




次に顔を上げたのは黒木だった。




「本当にそれが事実なら――前例のない部隊です。

これまで助けられなかった命を救える可能性がある。

私は、人を守るために警察官になりました。今後とも、よろしくお願いします」




他の隊員たちも、星野が思っていた以上に前向きな反応だった。

全員が、この部隊に残ると口を揃えた。

星野は胸をなでおろしながらも、その安堵を表情には出さなかった。


全員が互いの顔を見ていた。

これから共に未知の戦場をくぐり抜ける仲間たち。

その認識が、自然と表情を引き締めさせた。

だが、誰一人として暗くはなかった。


新たな始まり。

未知の技術、新たな可能性、そして重大な任務。

それぞれが、それぞれの胸に、何かを決めた瞬間だった。


その後、今後の方針について話し合った。

とはいえ、何もかもが手探りだ。

決められることなど限られていた。

だからこそ、大まかな方針だけが決められた。


その中で、副隊長には警視庁から出向している黒木警部補が任命された。

これは、部隊長である星野の判断だ。




「私でいいんですか?」


「警視庁組は黒木しかいないからな」


「でも、経験はそれほど多くありません」


「問題ない。誰もこんな経験はない」


「……確かに。分かりました。頑張ります」




また、隊員たちはこの拠点内の宿舎へと引っ越すことになっている。

この件も、すでに伝えてあった。


宿舎は個人部屋で構成されており、広さも設備も十分。

鍵付きのマンションのような部屋で、キッチン、バス、トイレも完備。

家具家電も揃っており、警察や自衛隊の寮と比べて格段に待遇が良い。




「隊長はもう引っ越し済みなんすか?」


「あぁ、荷物はすでに搬入済みだ。最初の任務は……引っ越しだな。明日には湯中も合流する予定だ。今日は施設に慣れて、引っ越しの準備をしてくれ。あ、部屋は好きなところを選んでいい」


「了解っす!」


「「「「了解です!」」」」





説明を始めたときに比べ、室内の空気は少しだけ変わっていた。

不安と好奇心、そして使命感――それぞれの胸に、何かが灯り始めていた。


小さな変化かもしれない。

だが、それがこの先の大きな変革の、始まりだったのかもしれない。




はじめまして!皆さん

神城クロノと申しますm(_ _)m

今回は、OSMANTHUS — 未来を変える戦い —の3話を読んでくださってありがとうございます!

これから、週2〜3本ペースを目指して執筆していきます

当分の間はストックが溜まってるのでポンポン行きます!

読んで、面白いなーと感じたらぜひ☆の評価ください!

ブックマークも意欲が上がるし嬉しいです\(^o^)/

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