第三話 襲撃
突然の尿意がきて目が覚めた。
時計を見てみたがまだ深夜の3時だ。
変な時間に起きてしまったと思いながら、窓から差し込む明かりを頼りに部屋から出てトイレに向かった。
そのあとさっさと用を済ませ手を洗った。
あとはトイレから出ていき床に就くだけだが、一瞬ものすごい胸騒ぎがした。
俺は違和感を感じ目の前の鏡で背後を確認した。
すると扉の前に女性の影が見えた。
俺は急いで振り返り直接扉を見た。
誰もいなかった。
なんだただの見間違えかと思い安心した。
だが念のため俺はもう一度鏡を見た。
今度はしっかりと女性の姿が見えた。
ふと鏡越しに女と目が合った瞬間、その女の口角が不気味なほどに上がった。
まるで魚眼レンズで覗いているような気分におちいるほどだ。
俺はかたまった。
無意識に筋肉が硬直してしまったのだ。
やばい...なにか手を打たないと
スズク
「テレッテー♪テテー♪(セルフbgm)ためになるかわからない1分雑学~!
今日紹介するのはエッチングクリィーーム!イエェーーイ!
エッチングクリームは薬品で、ガラスに塗ればガラスが腐食してすりガラスに変わっちゃう魔法のようなアイテムだ。
そして今目の前にある鏡はガラスでできているぜ。
つまりこのエッチングクリィーームを使えば鏡が映らなくなるってワケ。
それではクリィーームを塗っていく!」
しかしなにも起こらなかった。
スズク
「クソッッッそうだった!!!
エッチングクリームがしっかりと作用するまで15分ほどかかるんだ。
つまり1分の枠に収まらない!!。
だが鏡を映らなくする方法は他にもあるぜ。
それは...鏡を粉々に粉砕することだ!」
俺は死にもの狂いで鏡を粉砕した。
それはもう粉になるまで粉砕した。
スズク
「どうだ俺の力を思い知ったか?
鏡の中に居ようと頭脳(物理)を使えば退治できるんだよ。
マジでビビったぜ。」
俺は荒くなった呼吸を整えるように深呼吸をした。
同時に耳元で囁き声がした。
謎の女性
「あなた面白いわね。
でもアルミナに関わっている人達は全員殺すように指示されているの。
心苦しいわ。
もしあなたがアルミナに関わってないって言うのだったら見逃してあげないこともないけど。
どう?」
ゾクッと肌を逆撫でる気配がまだ背後にいる。
仕留めきれていなかったか。
ということは鏡が本体になっているわけではないのか。
とりあえずここは様子をみておくか。
スズク
「アルミナとは昨日初めて会ったんだ。」
一言でも間違えたら殺されるかもしれない状況だったので声が少し震えてしまっている。
謎の女性
「あらそうだったのね。
じゃあ関係ないようなものね。
約束通り逃がしてあげ...ない。
だって私天の邪鬼だから♥」
首にいきなりひんやりとしたなにかが当たった。
俺の生存本能が逃げろと言っている。
俺は必死にしゃがみ、攻撃を回避したあとに全力でダッシュした。
さっき俺のいた場所には鋭くとがったクリスタル?のようなものが突き刺さっていた。
もしあれが首に当たっていたらと思うとゾッとする。
「おい、この屋敷で暴れているのは誰だ?
レイカ様を狙う刺客ならオレがぶっ潰してやるぜ。」
逃げているの先に人影ではなくロボ影が見えた。
スズク
「ベシター!!!」
頼もしい助っ人が駆けつけてくれた。
ベシターは長年この屋敷を守ってきた有能ロボットだ。
なにか撃退する術を持っているはずだろう。
俺は期待しながらベシターの後ろにまわった。
ベシター
「オレに任せておけスズク!
オレには戦闘できるようにって高性能魔力砲弾が腕に搭載してあるンだぜ。
コイツの最高出力に当たっちまったらドラゴンだろうと無傷じゃすまない。
しかもオレはパーフェクトロボット、よほどのことがなければ百発百中で当てられるぜ。
これでも食らって消し炭になりやがれ【龍殺し魔力砲弾】!!!」
ベシターの腕から紫色に輝いた光弾が放たれ刺客を襲う。
直後に光弾が爆ぜて辺りは煙に包まれた。
正直オーバーキルな威力だ。
だが煙の中から声が聞こえてきた。
謎の女性
「素晴らしい威力だわ。
当たれば私でも消し炭になっていたでしょう。
正面から防御してもよかったけど、百発百中って言われると避けたくなっちゃうじゃない。
だって私って天の邪鬼だから♥
ベシターの攻撃がはずれた?
嘘だろ?
だが刺客は無傷のまま立っている。
そういえばベシターはっ!!!
俺はベシターの状態を確認した。
ベシター
「マジかよ~。
オレこの距離ではずしたの~?...ケヒッttt」
やっぱりだ。
ベシターは今ものすごく酔っぱらっている。
直前まで焼酎をガブ飲みしていたんだ。
かなり酔いがまわっていて、手元がフラついてはずすなんてことなら起こりうる。
俺は念のため確認で中指を立ててみた。
スズク
「この指何本に見える?」
ベシター
「2か?いややっぱり3本ダ。
どうだ正解だったか✨?」
ベシターは期待を孕んだ綺麗な目で見つめてきた。
俺は悪ノリで中指を立ててしまったことを後悔した。
正解だったということにしておこう。
世の中には知らなくたっていい真実がある。
スズク
「正解だ。
だが、お前は休んどけ。
理由は...聞くな。」
俺はさっきの中指の件を隠蔽した。
これで今後一切このことを掘り起こされる心配はないだろう。
スズク
(さてこっからどうしようかな。俺一人じゃ相手にするのはきつい。)
そう"一人なら"だ
レイカ
「待たせたね。
爆発音が上階からしたかと思えばキミの仕業だったかアストラ群星団ウラヌス。
想像より来るのが早かったな...。」
ウラヌス
「あら厄介なのが来ちゃったわね。
ここで争うつもりはないわ。
だからまた後日殺しに来てあげる♥
じゃあ~ね♥」
そう言い残しウラヌスの体は段々と透けていき消えていった。
レイカ
「本体はもう逃げてしまったようだね。」
スズク
「本体?」
レイカ
「ああ、今さっきまで君たちを襲っていたのは光魔法を利用したウラヌスの分身だよ。
実際のところただの光だから闇魔法以外の攻撃すべてが効かないんだよ。」
あれってことは実はベシターの攻撃効いてないだけで当たってたんじゃ。
すまない友よ、疑ってしまった俺を許してくれ。
今度あいつにいい酒を買ってあげよう。
俺はそう心に誓った。
スズク
「そういえば会話に出てきたアストラ群星団ってなんなんだ?」
レイカ
「そうだね。
簡単に言えば魔王軍幹部のみで構成されたやばい集団だね。」
スズク
「なにそれやっべぇじゃん。」
レイカ
「うん、ヤッッッバイ。」
語彙力のなくなった師匠可愛いな...。
あと気付いたが師匠寝起きだからか寝癖ついてるな~。
キュートだ。
というか魔王なんかいるのこの世界!
なにそれ初耳なんですけど。
レイカ
「ともかく私は今魔王軍に追われる身なんだ。
スズク君には私の弟子として最低限戦える力が必要だ。
だから今から出かけるよ。
鑑定場に。」
今さらっとヤバイ状況下にあることを話していなかったか?
魔王軍に追われてるって...まあ聞き間違えか。
それより鑑定場!!!?
ぜひとも行きたい。
俺って実はすごい能力を持っていたりして...。
あぁ妄想が止まらない。
だが
スズク
「今からって言ってるけど、まだ朝4時だよ。
勘弁していただきたいんですけど。」
レイカ
「ほら駄々こねないで行くよ。
師匠の命令を無視するつもり?」
師匠は嫌がる俺を無理矢理外へ連れ出して、鑑定場へ向かった。
ブックマークと高評可をしていただけると今後の励みになります。
この世界について
最初の方に窓から差し込む明かりと言ってますが、この世界は地下です。
なので太陽も月も存在していません。(地上にはあるかも)
じゃあ差し込んでいる明かりはなんなのかと思うわけです。
その正体はでっけぇ魔道具です。
各階層ごとに先人達が過ごしやすいように作った明かりを出す魔道具が太陽と月の役割を果たしているのです。
しかしまだ開拓の進んでいない上の階では魔道具がありません。