表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悲しいひと  作者: やまだひなこ
7/14

しんちゃんが、グラスを指ではじく

怒ってる


しんちゃんが怒ると

ほっとする


私は、人を怒らせるのが好きだ

心の底まで、怒らせれば

その下はない


「美子は、不幸が好きなんだわ」

昔、りかちゃんが言った

そうそう

不幸は、私を裏切らない

そして

幸福は、私を不安にさせる


黙っているしんちゃんを横に

私は、窓の外を眺める

最上階のラウンジは

街のあかりが痛い


私は

どこまで行けばいいのだろう


「美子は」

しんちゃんが片手をあげて

お店の人に何かささやく


しんちゃんが自分に選ぶお酒は

どうして色が

ないのだろう


「俺が好きじゃない」


「そうなの?」

と私が答える


しんちゃんが笑う

「自分のことだろ?」


「怒ってるからよ」

「誰が」

「しんちゃん」


「怒ってないよ」

「怒ってる」

「つづきは?」

「怒るから話さない」

「もう、怒ってない」


「やっぱり、怒ってるんじゃない」

「話す気ないだろ?」

「ないわ」


しんちゃんのため息

私は、笑う

笑う度に、長い髪の先がゆらゆらする


目の前に置かれた

グラスの中のルビーの色


「しんちゃんは、赤が好きなの?」

「美子が好きだよ」

「私は、白のほうがいいわ」

しんちゃんのグラスをとりあげる


「マティーニ」


しんちゃんが煙草を消して立ち上がる

散歩でも?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ