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俺のゴミスキル、<水ひっかけ>は実は最強  作者: ガギグゲガガギ25
序章 水ひっかけスキル=ゴミスキル?
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5話 ゴミだろ

 俺が住んでいる場所は田舎の村で、大きな森の中に丸っこいスペースを空けて作られた土地らしい。

 そして、森の中には泉がある。

 俺はその泉にやって来た。


 先日のイミテモとの戦いにより、母さんと父さんは俺を積極的に1人で外出させている。

 どうやら俺は放置した方がよく育つと判断されたみたいだ、ありがたい。


 俺は、大きな泉に背を向ける。

 右手と左手にじょうろを持った状態で。


「うおおおお!!」


 水ひっかけスキル!水ひっかけスキル!水ひっかけスキル!!


 じょうろを振り回しながら、連続して水ひっかけスキルを発動していく。

 

狙いをつけたのは石ころ、そこら辺に落ちてた大きめの石ころだ。

  それに水をかけまくる。

 ただし片足立ちだったり、ジャンプしながらだったり、走りながらだったり色々な動作からの発動だ。


 ここ最近、俺が唯一持つスキルの水ひっかけを研究してる。

 その結果わかった事は、主に2つ。


 1.相手の場所がわからなくても水を引っ掛けることができる、目を閉じたりしていても問題ない。

 2.どんな体勢からでも相手に水を引っかける事が出来る。


 ちなみに性質1は、20メートルくらい相手との距離が離れていると発動しなかった。

イミテモ戦では、20メートルもイミテモそんなに離れてないからスキルを発動出来たというわけだ。


 やっぱりこのスキル、ゴミだと思えない。使い道があったらゴミじゃないだろう。

 2の性質も、毒を混ぜた水なんかを確実にぶち当てるのに使えたりするんじゃないだろうか。


「毒を混ぜた水も浸かってみたいけど、どこで毒を調達しよう?」

「効果的な程毒を混ぜると世界からそれを水認定されませんわ」

「誰だ?!」


 突然何かが俺に話しかけて来た。

 当たりを見回すが誰もいない。


 その声は足元からだった。


「わたくしですわ」

「……うわッ?!」


 何と俺が水をひっかけまくっている石ころが喋っていた。そして餅みたいに膨らんでいく。

 こ、怖い。俺は後ずさりする、涙も出て来る。汗も出て来る。


何だこれ。

石ころは粘土のごとくふくらみ女の姿になった。


「なぜ怖がるのですか?私の姿はこんなにも愛らしいのに」


 石ころは俺になぜ怖いのか問いかける。

 だが怖いものは怖い。


「ひぐっ……うぐっ……!」


 俺はボロボロ泣いた。何か怖かった。

 前世なら全然この程度平気だったのに、子どもの体とは恐怖心を倍増させるのだろうか?

それとも、最近恐ろしい目にあってないから心の強さが鈍ったか?

「泣かない泣かない、泣いたら鼻の穴に指ツっこんで脳みそ引きずりだしますわよ」

「怖い……怖いよぉ……ママ……」

「母に助けを求めるなんて情けないですね」

「じゃあ……パパ……助けて……」

「こんなところにいませんよ?現実を見なさい」


俺とお前が結婚すれば俺はパパになってお前がママになるぜ、みたいな返答を思いついたけど気持ち悪いので黙っといた。


 ――――――――――


 なんかノリで泣いてしまったが冷静に考えると石ころが女になったからといって怖く無かった。

 この前戦ったイミテモの方が怖い。

 危害を加えてくる様子もなかったので警戒を解く。 

 よくみると石ころ女は穏やかそうなスレンダー美人だ。石でできた服も派手すぎない。

何をしても慈愛の心で包んでくれそうな姿……俺が石像に神秘的なイメージを持っているからそう思えるのだろうか?


わりと俺のタイプに近い、微妙に何か違うからドストライクとは言えない。

外角低めの、球審次第でボール判定されるくらいだ。


 しかしこの女はなんなんだろう?

石ころが人の姿になるというのは、まぁスキルがある世界だから別にいいとして……

 俺の目の前にわざわざ現れるような不審者が何の目的か想像もつかない。

……そうか、神か?

俺をこの世界に転生させたあいつ、俺の行く末が気になって監視をつけたのだろう。


「あんた神の使いだな、何の用だ」

「違いますけど」


 女の形に変わった石ころは、神の使いじゃなかった。


「……じゃ、あんた何者なんだよ、そんで俺に何か用?」

「私の正体は答えられませんが、用事は言えます。あなたに水ひっかけスキルがゴミだろという事をお伝えしに来ました」


水ひっかけスキルに関係がある話と来たか、これはしっかり聞くべきだろう。


「俺のスキルのどこがゴミなんだ?イミテモ戦では役立った」

「他の索敵スキルならもっと楽に倒せました」

「そうなのか?」


……こいつ、俺が水ひっかけスキルを索敵に使ったことを知っている?

見張っていたのか?……それはなぜだ?

素直に聞いてみても答えてはくれないだろう、今は質問したい欲を抑えるとするか。


「例えば<索敵>スキルを持っていれば、水をひっかける手間無くて敵位置がわかりましたよ」

「もっと便利なスキルがあるっていいたいのか?」

「はい。水ひっかけスキルは他の全ての下位互換です」

「べつに俺は下位互換でも強いと思うぞ。無いよりはあった方がいいだろ」


将棋でもそうだ、香車は移動出来る方向的に飛車の下位互換だが、だからといって使い道がないわけじゃない。

ちゃんと使えば戦力になるだろう。


「確かに水ひっかけスキルは完全に使えないわけではないですね。しかしその程度の強さなのに後天的スキル習得を阻害してしまう。そういう点含めてゴミなのです」


そういえば水ひっかけスキルにはそういうデメリットがあったな。

スキル習得がそれ以上不可能になる……か、確かに大きいデバフなんだろう。

けど最近俺わかってきたが、スキルなんてもの無しに前世は生きてきたわけだし別にあんまり気にならない程度の話だった。



「あんたそういう事言いにきただけか?」

「ハイそうです、あなたのスキルはゴミです。大して強くもないスキルなのにデメリットがあるのです。スキルを使った生き方は諦めなさい」

「バカにしに来たってわけか?」

「はいそうです、それではまた会いましょう」


 それだけ言って、女は元の石ころに戻っていった。

 それっきりうんともすんとも言わなくなった。

 ためしに泉に沈めたり蹴り飛ばしたりして見たが、やはり何も無かった。


 なんだろう、さっきの女。

 あいつがわざわざ水ひっかけスキルをゴミだって伝えに来たせいで、余計に俺はこのスキルが特別に思えてならない。

 あんなに必死にゴミだと言ってくるのは、まるで俺から水ひっかけスキルへの興味を奪おうとしているみたいじゃないか。


「まぁいいや、変なヤツに絡まれたと思って気にしないでおこう」


俺は呟いた。


「【水ひっかけ】は呪われている、お忘れなく」

「うわ」


すると、先程の女の声がどこかからした。

まだいたらしい。


「呪われてる??」


 あの女は今どこか探したが、もうわからなかった。


……水ひっかけスキルが呪われている?何のことだ。

 わからない。


「……帰るか」


 俺は帰る事にした、ここで考えて手も埒が明かない。

それにもうすぐ夜だから母さんが料理を作ってくれる、待たせちゃ悪い。

ちゃっちゃと帰ろう。


なんとなくだが、今日出会ったあいつの事を俺は誰にも言わなかった。


なんというか、言ってはならない気がしたのだ。

呪いというその言葉が、やけに引っかかって。




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