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21話 決断は、あまりにもすんなり出来た

 この俺がなぜか指名手配されてる事には驚いた。

 だが、流石に数十秒立って落ち着いてきた。


 とりあえず新聞をしっかり読む、俺が指名手配された理由を知るために。


 ………どうやら村を襲撃した事が原因みたいだ、父さんを助けるためとはいえ人を殺しちゃったからな。

 それでも俺の懸賞金が異様な桁になるとは思えない。

 すぐ傍に掲載されてる、国家反逆罪や殺人などの罪に問われてるオッサンの懸賞金と比べて桁数は30くらい多い。


 あ………よく見たら隅っこの方に俺が〈水ひっかけ〉の持ち主があることも書いてある。


 あぁそうか、<水ひっかけ>の持ち主が事件を起こしたがゆえにこんな懸賞金なのか。

<水ひっかけ>は実は世界を滅ぼせる、その持ち主が法を犯すくらい過激なら、始末しておきたい人は大勢いるだろうだろう。

<水ひっかけ>の本当の力が一般には隠されているせいか、新聞にそこら辺の事情は乗ってないけど。


 あ、ついでって感じにリンとサキも指名手配されてる。

 俺に指示されて村の襲撃をしたことになったようだ。

 ちょっと申し訳ないが、俺より懸賞金少ないので狙われにくそうだ。


 突如、ドアがあいた。


「大変だスパイク!」

「スパイクさん!」


 父さんとサキが部屋に駆け込んで来る。

 俺が指名手配されているのを知り急いで伝えに来たのだろう。

 サキは人間形態だ。


 出る時に持ってなかった袋を二人とも持ってるあたり、慌てながらも飯は買って来てる。流石だ。


「パパ?」

「うぉ!?!ママ?!帰って来てたのか?!」


 そして父さんは、母さんとの再会に驚く。

 母さんの居場所に心当たりがあるとは言ってたが、この場所・時間に母さんがいるとの予想は流石に出来なかったか。


 ………空気が荒れてる、騒がしい。

 色々話したい事があるのに、冷静に話し合いが出来ない空気だ。


 一旦みんな落ち着くべきだ、だから俺はこういう提案をした

「父さん、みんな、飯とか食いながら話そうぜ」

 ………反対は無かった。



 父さんの持ってた袋を取り、中を見る。

 弁当箱っぽいのがあった、異世界にも弁当はあるんだな。

 蓋を開けると、べちょっとした米っぽいものに、色んな種類の野菜と肉が細切れにされたモノを入れられてる。

 美味しくはなさそうだが、消化はよさそうだ。


「リン、飯だ。起きろ」

 とりあえず寝てるリンに声をかける。


「申し訳ありませんがワタシは今寝ています。直ぐ側にご飯を置いてください」


 なんか機械的に返答したなコイツと思ったが、とりあえず言われた通りにしてみよう。

 枕元へ弁当を置いてみる。

 するとリンは寝返りを打ち、顔を弁当に突っ込んで食い始めた。

 顔以外ベットに預けたままのそのスタイルは、犬食いというよりは蛇食いだろうか。


 驚くべきことにリンは寝たままでそんな行為に出ているらしく、一切目が開いていない。

 きっとこれは、脳を休めながら栄養を取るための高等技術だ。


 これがこの世界で普通じゃないのは、父さんの不気味なものを見る目からして間違いない。


「……飯の食い方は自由でいいだろ。こんな時なんだし」

 とりあえず父さんに向かって俺は言ってみた。

「スパイク、その子行儀悪すぎないか?お前がそんなんしたら俺は流石に殴るぞ」

「でもこの食い方で全然汚れてないぜ、綺麗に食べてる。見習おう」


 リンの食事について適当こいてる時、ふと気づいた。


 母さんがなんか床にうつぶせになってる、なにしてるのかよくわかんなくて、よく見たらリンと同じ食い方してる。


「……何やってんだよ母さん!!!」

「試してるだけよ、コレが本当に良い食べ方か」

「急に奇行に出るなよ芸人でも無いのに!怖いんだよ!」


 若干頭がおかしい部分があるリンが変なことをしても慣れてるだが、母さんがやり始めるとなんか嫌だった。

 心臓が速くなるし、頭もズキズキ痛む。

 母親の変な姿はあまり見たくなかった。


「スパイクさんに聞きたい事があります」

「なんだよサキ」

「今後の話は?」

「あ」


 サキの一言が、今後について真面目に話そうという心理状態にしてくれた。

 これでちゃんと、真面目な話が出来そうだ。


 サキはやはり頼りになる。

 ずっと一緒にいられる類の関係じゃないのが惜しい、本当は今後も仲間でいてほしいのだがそのうち別れる事になるのだろう。

 こいつは自分の仕事で俺達と付き合ってるだけだし。



 そして、俺達は各々勝手な位置で飯を食い出した。

 ただしお互いの会話が聞き取れる程度に近くで。


 さて、リンはまだ寝ているが今後の方針を話しておこう。

 リンが起きるのを待つと相当時間がかかりそうだしな。

 結論はちゃんとリンが起きたら話そう。


 で、今後の方針について会議するわけだがどんな順番で切り出していこうか?

 ………状況の整理からか。


「まず今の状況だけど、俺とリンとサキが指名手配されててこのままだと殺される可能性がある。俺の懸賞金をからして本気で殺りに来る人多いはずだから、逃げ続けるのは難しい」


 皆、俺の話を黙って聞いていた。


「だが俺には解決の心当たりがある」


 明らかに皆の表情や呼吸に乱れがあった、俺の発言が衝撃だったのだろう。


「俺は魂の欠片を探したいと思う」


「なにそれ?」


 質問したのは母さんだった。

 答えない意味はない、答えよう。

 ただ、ちょっと勇気がいる。


「俺が死にかけてる時に神様と出会った。そして神は魂の欠片を探せと言った」


 前世で神と話したなんて言えば妄言とされるだろう、だからこういう表現を使うのは怖い。

 だけど、そうなってしまう事はないはずだ。


 リンはスキルが神から与えられるという話を”定説”とだけ言った。

 この世界では”神に干渉される”という定説が生まれるのである。

 つまり、神という存在はこの世界の人間にとって信憑性があるはずなのだ。


「おいスパイク、お前神に会ったのか?」

 今度は父さんから質問が来る、この様子だと………たぶん神様の存在自体は疑ってないだろう。

 どちらかというと、神と”出会った事”の方が信じられない様子だ。


「その通りだし、サキとリンなら納得できるはずだ。俺の<水ひっかけ>が、神の力添えでもないと出せないレベルの出力になってたの見てたから」

「確かにスパイクさんのスキルは物凄いものでした」


 サキが俺の言葉を裏付けしてくれる、助かる。


「お前の言う事は信じる。”魂の欠片"の心当たりはあるのか?」

「無い。だがそうすれば俺の助けになると神は言った。神の言葉である以上は検討する価値がある」


 父さんは俺の話を真剣に聞いていた、苦虫を嚙み潰したような顔で。


「他の解決策が欲しいな」

「他?」

「魂の欠片を見つければどうにかなるのは確かだろう。だがわざわざ神がしてくるレベルの頼み事なんて難しいはずだぞ?つまり失敗する可能性は高い、他の案も用意しておこう」


 父さんのいう事はあまりにも尤もだった。


「たしかに他の解決策は必要だな、例えば?」

「そうだな、どれもリスクはあるんだがまずは………」

「別の解決策、ありますよ」


 父さんが答えようとするのを遮ったのはサキだった。


「私"ゾイガルド"の方から来ました」


 そしてサキが意味不明な事を言う。

 ゾイガルド?なんだそれ。

 この世界の地理に関してはあんまり勉強してないのだ。


「ゾイガルドって、カラドムと国交無いだろ?どうやって来た?」


 俺が困っているのを見極めたのか、父さんがサキと話しだした。


「石ころになって、海流に乗ってカラドムに密入国です」


 えっと、なんかとんでもない事言ってる気がする。

 とにかく会話から情報を整理しよう。

 サキはゾイガルドとかいう国から、この場所……カラドムに来た。


 つまりサキは外国人というワケだが、国交が無いとこにわざわざ密入国してる。

 そんなサキはどういう立場なんだ?難民ってワケではなさそうだけど。


「スパイか」

「はい」


 父さんは俺が疑問に思った事について、答えまですぐにたどり着いたらしい。


 一方で母さんはとてつもなく驚いた表情してる、俺も多分似た顔だ

 だけど、サキがスパイというのはなんとなく納得できる。

 だってサキ、明らかに平和な世界の人間じゃなかったし。

 サキ、妙に荒事に慣れてたから。



「元々は、リンさんの父親の監視が役目でした」

「ゾイガルドにも奴は警戒されていたのか。国内の戦争で国外に轟く戦果をあげてたからな」

「元々の仕事は、偶然発見した<水ひっかけ>の対応で中断しましたけどね」

「なるほどな」


 さて、一旦父さんとの会話を切り上げるようでサキは俺の方に向き直った。


「スパイクさん」

「………」

 サキの表情は真剣なものだった。

 体が石だというのに、生身の人間以上に人間らしいその表情がどこか美しかった。

 なんだか圧倒される。


「簡潔に言います、他の解決策を」

「………」

「私が手引きしますから、ゾイガルドに亡命しましょう」

「頼む」


 サキの誘いに、俺は迷わず乗った。

 どうせこのカラドムにいても殺されるなり、コソコソ生きるなりするしかない、じゃあ逃げるだけだ。

 この国とやらに愛着も無いしな。


 前世では、ニュースだの法律の影響だのでうすく繋がりを感じてたからこそ『自分はこの国の人間』って自覚が持てた。

 でも、今世は違う。

 村という狭い世界で過ごしてただけの俺には、この国の一員という実感は一切ない。


 つまり国というくくりのアイデンティティを俺は持ってない。


 だから、俺はゾイガルドに行く。

 カラドムとかいう国から逃げ出す決断は、あまりにもすんなり出来た。


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